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豊穣の女神と飢餓の魔女  作者: 水沢 流
フクと愉快な仲間達
26/35

最終形態はたまねぎもどき

 本堂、にて。


「芋が、タマネギになったわねえ…」

「種類は変わっていませんよ? キョウ」


 にこにこと、笑顔で何やら綴っているナギの前。

 そこに、どどどん、と三つほど並んだタマネギもどきを、キョウが嬉しそうに指でつついておりました。

 ナギの力を使って育てたと思われるタマネギ…というか泥球根。

 そこからニョッキリ生えた葉っぱには、とてもとても、見覚えがございました。


「コンニャクやね」

「ですね」


 こちらは、私とシキの声。


 ジャガイモのように見えた芋は、育てて行くうちにどうやらスライムにクラスチェンジする模様。


「とりあえず、茹でんべ。後は干して、一個は次のために私が食べるって事で」

「それじゃあ、お湯沸かしてまいりますね」


 そう言っててくてくと歩み去るシキを見送って、ふう、と一息。

 そろりとナギが書いているものを覗き込むと、何やら難しい文字が流暢に並んでおりました。


 あれです、平安貴族の雅文字みたいな。


「何て書いてあるん?」

「ああ、これ…」


 細い指先に持った筆をそっと硯に置いて、とろけるような笑みを見せるナギ。

 上品な香がふわりとそこから漂い、思わず楽園が見える心地がいたしました。

 ナギの唇が、文章を意訳して行きます――


 いわく、


『もふもふしているものは全て可愛い。とにかく可愛い。異論は認めん。あれをなでる時が幸せだ。あれに埋まる時が幸せだ。いっそ全てがもふもふした宮殿はないだろうか。そこでは極上の…以下略』


 優美な字で、何を書いていらっしゃるのかと思ったら、思い切り趣味話ですか。

 そんな事を考えていると、背中がなんだかわさわさしました。ナギではありません。ナギは目の前にいます。


「ふおりゃっ!」


 翼を跳ね上げるようにして、ごろんと床に一回転。

 そんな感じでローリングした私の動きに釣られて、ぽーんと何かが天井に向けて打ち上げられました。


「…どんだけ軽いねん。」


 打ち上げられたのは、ヨミでした。風を操るから軽いのでしょうか。

 そんな事を思っていると、ふわりと空中で体勢を整えたヨミが、何食わぬ顔で着地しました。


 見事な鉄面皮です。

 ブレない美人は格が違いますね、恥ずかしがりもしないなんて。

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