今日はのんびり縁側で
とんてんかん、と軽やかな音が響いています。
作っているのは、私専用の蔵。
どーんと仁王立ちしているような形の、台形シルエットのあの蔵です。
木を一本まるまる使った豪勢な木材で枠を組み、壁を張り漆喰を盛って作る予定。
まずは作業で切り倒した時の木屑を集めて、本堂の前で天日干しする事にいたしました。
陽光を浴びた薄茶の木屑から、真新しい木の匂いが漂っています。
「やっぱ桐欲しいわねぇ」
「キョウが食ったんやないか」
いくら祠で暇だったからって、桐柱を食べなくてもいいじゃない。
シロアリかよ! とツッコんだら、シロアリも一緒に食べたそうです。
どーりでシロアリ被害が皆無なわけですよ、この郷。
「そろそろ昼餉ねぇ」
「そうやねえ」
横倒しの世界を眺めながら返事する私。
本日、ぽかぽかのいい陽気でして、縁側でうつらうつらとしておりましたら、気がついたらキョウに膝枕されておりました。
厨房の方では、シキが昼餉の支度をしているらしく、米炊きの香りも豊かな湯気がたなびいています。
その下で、もふもふとじゃれ合うのは三匹の犬。
「…おいしそ、」
「却下」
犬見て舌なめずりとかしないで! 冗談に見えないから! 本気だろうけど!
「…ダメ?」
「可愛く聞かれてもアカンで。却下や」
ひらひら、と片手を振って犬食を阻止。
その矢先、ひょいと手首がキョウの手に浚われました。
細い指先が、私の手を捉えています。
何じゃい、と思っていると、ちゅ、とその甲に口付けされました。
ぎゃーっ!?
「目減りするーっ!」
「目方減らないから安心しなさいってばぁ」
「いやそんなダイエットみたいな!?」
と、あわてる私の手を床に下ろすキョウ。
ぶわああ何が起きた、と急いで手を引っ込めると、くすくすとキョウが笑っておりました。
何するねん、心臓に悪いっちゅん。
「可愛いわねぇ、食べちゃいたいわぁ」
「…肉食系オトメンとか呼んどらん」
オトメンどころか、胸がない事を除けば女にしか見えませんけどね。
どうも聞くところによると、キョウは先代フクに「ぞっこんラブ」だったようで、先代が「郷を繁栄させたいから引きこもっててね♪」とお願いしたせいで、本気で100年以上引きこもっていたそう。
で、祠から郷の繁栄を眺めては、フクの活躍をそこに感じてキャッキャウフフしていたらしく、まさか自分が天敵扱いされてるとは思いもよらなかったのだとか。
なんつー健気な!
「カビもおいしいのよねぇ…」
前言撤回。
「フク様ー、キョウ様ー、支度できましたよー」
「あらぁ?」
「…行こか」
のそのそと体を起こして、二人揃って本堂の方へ。
え、シキとキョウが仲直りしたのかって?
私とキョウで同じものを食べればプラスマイナスゼロじゃない、と私が言ったら、あっさり納得してくれたのですよ。
いわく、
「フク様が二人前食べれば問題ないですね!」
…と。