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豊穣の女神と飢餓の魔女  作者: 水沢 流
フクと愉快な仲間達
18/35

今日はのんびり縁側で

 とんてんかん、と軽やかな音が響いています。


 作っているのは、私専用の蔵。

 どーんと仁王立ちしているような形の、台形シルエットのあの蔵です。

 木を一本まるまる使った豪勢な木材で枠を組み、壁を張り漆喰を盛って作る予定。

 まずは作業で切り倒した時の木屑を集めて、本堂の前で天日干しする事にいたしました。

 陽光を浴びた薄茶の木屑から、真新しい木の匂いが漂っています。


「やっぱ桐欲しいわねぇ」

「キョウが食ったんやないか」


 いくら祠で暇だったからって、桐柱を食べなくてもいいじゃない。

 シロアリかよ! とツッコんだら、シロアリも一緒に食べたそうです。


 どーりでシロアリ被害が皆無なわけですよ、この郷。


「そろそろ昼餉ねぇ」

「そうやねえ」


 横倒しの世界を眺めながら返事する私。

 本日、ぽかぽかのいい陽気でして、縁側でうつらうつらとしておりましたら、気がついたらキョウに膝枕されておりました。


 厨房の方では、シキが昼餉の支度をしているらしく、米炊きの香りも豊かな湯気がたなびいています。

 その下で、もふもふとじゃれ合うのは三匹の犬。


「…おいしそ、」

「却下」


 犬見て舌なめずりとかしないで! 冗談に見えないから! 本気だろうけど!

 

「…ダメ?」

「可愛く聞かれてもアカンで。却下や」


 ひらひら、と片手を振って犬食を阻止。

 その矢先、ひょいと手首がキョウの手に浚われました。

 細い指先が、私の手を捉えています。

 何じゃい、と思っていると、ちゅ、とその甲に口付けされました。


 ぎゃーっ!?


「目減りするーっ!」

「目方減らないから安心しなさいってばぁ」

「いやそんなダイエットみたいな!?」


 と、あわてる私の手を床に下ろすキョウ。

 ぶわああ何が起きた、と急いで手を引っ込めると、くすくすとキョウが笑っておりました。

 何するねん、心臓に悪いっちゅん。


「可愛いわねぇ、食べちゃいたいわぁ」

「…肉食系オトメンとか呼んどらん」


 オトメンどころか、胸がない事を除けば女にしか見えませんけどね。

 どうも聞くところによると、キョウは先代フクに「ぞっこんラブ」だったようで、先代が「郷を繁栄させたいから引きこもっててね♪」とお願いしたせいで、本気で100年以上引きこもっていたそう。


 で、祠から郷の繁栄を眺めては、フクの活躍をそこに感じてキャッキャウフフしていたらしく、まさか自分が天敵扱いされてるとは思いもよらなかったのだとか。


 なんつー健気な!


「カビもおいしいのよねぇ…」


 前言撤回。


「フク様ー、キョウ様ー、支度できましたよー」

「あらぁ?」

「…行こか」


 のそのそと体を起こして、二人揃って本堂の方へ。


 え、シキとキョウが仲直りしたのかって?

 私とキョウで同じものを食べればプラスマイナスゼロじゃない、と私が言ったら、あっさり納得してくれたのですよ。


 いわく、


「フク様が二人前食べれば問題ないですね!」


 …と。

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