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豊穣の女神と飢餓の魔女  作者: 水沢 流
フクと愉快な仲間達
11/35

ご神託は、「私に芋を」

 郷に戻ると、宴はまだ続いていました。

 酒が入って盛り上がる人もいれば、すっかり眠ってしまった子供達もいます。

 どれもこれもが微笑ましい光景でした。


 私も心配の種――いや、芋虫がなくなって心も手も軽い軽い。

 気楽です幸せです、お仲間ひゃほーい!


 え、芋虫の来年を約束しなくても良いのかって?

 大丈夫です、虫は強いから、食べる物があればきっと困りません!


「ふっふっふ…」


 るんるん気分で鍋に駆けより、にょき、と中をのぞきこみます。

 具はだいぶ少なくなっていましたが、まだ少しだけ汁が残っておりました。


 よしっ、


「フク様」

「へいっ!」


 江戸前な返事になりました。


 だって、私を呼んだのはシキです。

 聞き間違えようもなく、シキの声です。


 ぎぎぎ…と振り返ってみると、笑顔のシキがそこにおりました。


「フク様、どちらへ?」

「その、ちょっと……」


 シキが怖いです。笑顔で怒ってます。

 めっさ疑われております、私。神様なのに。


「こっ……」

「こ?」

「……こ、」


 これを誰かに食べてもらいに、なんて言える雰囲気じゃありません!


「こ、って何ですか? フク様」

「こ、こここここここ…」


 働け、働くんだ私の神ブレイン!


「こんにゃくを、探しにっ!」


 ――しまった、勢いの方向を間違った。




 そして本堂。


「むー…」


 念じます。ひたすら念じます。

 火皿の明かりに囲まれた部屋で、私は一人、ひたすら集中しておりました。


 とどけ私の神の声、誰かこれを聞き届けたまえ!


「覇っ!」


 かけ声は気分です。


 一応、神様である以上、気合を入れれば誰かに心ぐらい届くはず!

 そんな適当な理由で、集中したいからとシキを部屋から追い出しました。ごめんなさい。

 謎の気合を飛ばす事数分、「うーい」なんて言う間抜けな返事が。


 通じた! 通じたよ! さっすが神様、やればできる!


 ん? 今の声…。


「…源五郎?」


 あ、祖父の名前です。


「ういうい。なんでしょーか」

「じーちゃん!」


 間違いありません、祖父です。

 私の声に気付いたのでしょう、祖父の方も問い返して来ました。念で。


「フク?」

「そうや! 何かしらんがこっちに来てもうて、もうどうしたらええのか……」

「ほほー」


 心配してないですね、その対応。


「そっち、どーなってる? 騒ぎになっとらん?」

「ならんならん。まだフクが出かけてから5分しか経っとらんしな」

「そうなん?」


 逆うらしまですか。

 まあ、こっちじゃ年を取らないようだし、こうやって連絡取れるなら、別に困りはしませんけど。


「あんな、じーちゃん。色々聞きたいんやけど…」

「三分以内で」

「ラーメンか」


 念話の時間制限とか、そんなの初めて聞きました。

 だけど文句言ってもどうにもなりませんから、用件だけまとめるとします。


「過去にもこんな事あったん? あと、コンニャク送っとくれよ。それから農産物の育て方マニュアルと加工本!」


 それに対して、祖父の答えは、


「神隠しから、一年ぐらいで戻って来たご先祖も多いって言うなあ。それと送れるのは食物だけだ、近々芋送るから待っとき」


 ぷつん。


「…芋、か」


 まあ、戻れる望みがあるのはいい事です。

 とりあえず今は、こんにゃくを作れるようにするとしましょう。


「さ、寝よ寝よ」


 明日には芋が届くでしょう。

 がんばれ源五郎農速便。

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