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豊穣の女神と飢餓の魔女  作者: 水沢 流
フクと愉快な仲間達
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はじまりの大根

 大根、の認識をあらためるべきだと思いました。


 私の目の前、すっきりときれいになった皿には、さっきまで大根が乗っておりました。

 それはもう、みずみずしく美味しい大根でして、野菜ってこんなに美味しかったのかと、十年ちょっとの人生経験を疑いまくってしまったほどでございます。


 学校の給食でも、近所の定食屋でも、こんなに美味しい大根はなかったよ!


 これはぜひとも先輩に伝えなければ、と一人内心で拳を握り固めるぐらいには、ベストオブ野菜な大根でした。


 当然ながら、がっつり食べましたよ食べました!

 気が済むまでそれを食べつくして、心も体も満足ってものです。


 バイキングを逃した怒りも、これだけ食べりゃあ収まります。

 できれば肉も欲しかったのですが、この際です、文句は言いません。


 で、食べれば当然、生理的な欲求が起きるわけでして。

 美味しく頂いた大根は私の体を上から下に行き、大地にかえるのが道理でして。

 ようするに、入った分を出す行為として――


 大根を産もうかなと。


「…ん?」


 今、何考えましたか私。


「大根を…」


 産もう、かなと。


「いやいやいや、ちょっと待ちいな!」


 カラにした皿を前に、自分の思考にツッコミを一つ。

 違いますよ、アレは「産む」って言いませんよ。(かわや)は産所じゃないですよ。

 だいたい大根だろうが人参だろうが肉だろうが魚だろうが、食べたら最終的に産むもんです。


「……」


 何が何でも産む気らしいです、私。

 どうなってんのか教えて神様っていうか、むしろ神様ですね、私が。


「…ええと」


 おそるおそる、腹のあたりをさすってみます。

 あれだけ食べたにも関わらず、満腹のぽっこり感が……


「ないっちゃね」


 例えば今また追加を出されても、ペロリといけてしまう気がします。

 ですが、ですが――


「初産が大根とか…」


 処女懐妊もいいところですよ、なんで大根産まにゃあならんのですか。

 そもそも産み方なんて知りませんよ、こう、ちょっと息を吐けば産めるような気がしますけど!


 なんて思った瞬間、ふわっと何かが体から抜けました。

 むしろ、オーラ的に開放されました。


 あ、今大根産みましたね私。


 そんな認識を追うように、外から農民の声が飛び込んで来ます。

 それは歓喜の声。


 いわく――


「芽が、出たどーぅ!」

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