4.望まれぬ婚約者
※未修正につき、話が繋がっていません※
扉を開け、靴を脱ぐ。
「ただいま」
答えが返ってくるはずのない言葉を、投げた。
自分が馬鹿に惨めに思えて、少しいらだった。
「氷牙! おかえり」
「え」
思わず顔を上げる。
彼女は満面の笑みで、玄関に立っていた。
「婚約者を置いていくなんて、ひどいよ?」
彼女。そう、水音が。
「なんでお前がここに…」
そう、彼女は確かに婚約者だが、親が勝手に決めた許嫁だ。その親は無責任にも、半年前に死んで「無」に還った。
「フィアンセなんだから、当然でしょう?」
水音はなんの疑いもなく、笑顔で小首をかしげる。
そんなもの通用しない。
「出てけ」
「いや」
「ここは俺の家だ。お前に拒否権などない」
「私、氷牙の許嫁だもん」
「理由になってない」
「私のものは私のもの。あなたのものも私のものだよ!」
「なんだよその自己中心的心理」
「とにかく今日からここに住むの! 長の命令が出たのよ」
「なにっ…」
"長の命令"…。それに逆らうわけにはいかない。
水音は[水幻]の長――波禄の一人娘。ゆえに水幻で地位のある一流剣士の家系である氷牙と婚約したのだ。
「迷惑はかけない…お願い」
水音は目を閉じ、祈るように頭を下げた。
しばらくの沈黙…、そして
「……わかった」
水音が飛び跳ねて喜んだ。




