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3.水幻皇国の弓矢使い

 我が血を、神に捧ぐ。

 我が力を、神に捧ぐ。

 我らは、神のために戦う。

 我が命を()して。


 彼女は黒と赤の空間に立っていた。

 地面に伏す仲間達は、もう目覚めない。もう話さない。もう笑わない。意味のない戦いの中に、彼らは消えていった。[水幻皇国]を守るためと信じて。


「みんな……」


 別働隊として遠くから弓矢で援護していた淡音(あわね)は、全てが終わったいまになって駆けつけ、呆然と立ちすくむことしかできなかった。よく見知った顔を次々に見つけ、涙も出ないほど心臓が早鐘を打った。唇が震え、言葉を紡ぐことすらできなくなる。うめくような嗚咽が、喉の奥から這い上がった。


「あ、ああぁあぁあ――……っ」


 頭を抱え、その場にしゃがみ込む。何も守れなかった。何も。敵の多くが軽傷で撤退していった。またいつかこの国を狙う戦力として復帰するのだろう。何のために死んだ。何のために。


 仲間達の血を見たくなくて目をつぶる。遠くから数多の足音が近付いてきた。味方の援軍だった。


「淡音、大丈夫!?」


 真っ先に淡音に駆け寄ったのは、親友の魅白(みしろ)だった。淡音が傷一つ負っていないのを見て取り、彼女を力一杯抱きしめた。


「あんたが無事で、良かった……!」


 淡音はまだ泣いていた。自分だけが生き残ってしまった不甲斐なさを悔いて。そんな彼女を強く抱きしめながら、魅白の目にも、涙が光った。


 風のない戦場は、まるで時が止まっているかのようだった。

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