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ヨリヤミ①

〜〜〜


月を天に仰ぐ夜の街。それを一望できる、高層ビルの屋上。

煌びやかな景色が視界を埋め尽くすそこに、ふたつの声が響く。


「近頃、ヨリヤミが活発になってきている。ヨリヤミが好むのは混沌。世界が混沌に染まれば染まるほどヨリヤミもまたその強さをます」


「混沌、か。うーん難しい言葉だね」


「混沌っていうのは……ようは、めちゃくちゃってことだよ」


「めちゃくちゃってことだね。ははは。とてもわかりやすい」


目を細め、笑顔になる少女。


周囲を浮遊する、小さきモノ。

その言葉に、魔法少女が一人ーー【白河 優里】は頬を緩めている。

透き通った雪のような白い肌。そして、肌と同じ白銀の髪の毛。服装はどこかの学校の、可愛いらしい制服。


顔立ちは幼い。

しかし、その瞳に瞬く光は強い。


「さて、と。今日もパトロールがんばろっと」


ぐっと関節を伸ばす、優里。


「他の魔法少女みんなも、がんばってるはずだし……わたしも頑張らないと」


優里は意気込みを呟く。

その呟きに、小さきモノも同意。


「わたしも頑張るよ、優里。優里一人に負担を強いる。そんなことさせないから」


「ありがと」


微笑む、優里。

その一人と一匹の姿。

それは、本来の魔法少女とパートナーのあるべき姿そのもの。

夕日が出会っていれば、また違った未来があったかもしれない。そんな魔法少女の姿だった。


〜〜〜


道を進む、夕日。


赤澤 茜。

その赤の魔法少女を侵食し、力を吸収した如月 夕日。

そしてその深淵を増した夕日の元には、有象無象の歪なカタチをしたヨリヤミたちが光に引き寄せられる虫のように集まってきていていた。


「憎い」「殺したい」「お腹が減った」「いたい。痛いよ」「どうしてあいつが」「わたしじゃなくて…どうしてあの女なの?」「くそっ。くそっ。くそッ」


数多の負の感情。

それが夕日の闇に共鳴する。


魔法少女ーー如月 夕日。

その時には、聞くことも触れることもできなかったヨリヤミたちの声。

だが今は、夕日ははっきりとそれらを感じることができていた。


ーーーッ

ーーッ

ーっ


終わることのないヨリヤミたちの声の反響。


そしてそれに終止符を打ったのは、内に響く声だった。


「夕日」


「ヨリヤミたちは夕日に助けを求め続ける」


「だけどヨリヤミたちを浄化できるのは魔法少女だけ」


「今の夕日にできること。それはヨリヤミたちの負の感情を増幅し、更にその深淵を増してあげることだけ」


ダークの柔らかな声音。


「だけど。できることはある」


「ヨリヤミの根本。その発生原因を抹消することができれば」


「これはあちら側の魔法少女にはできないこと。命ある全ての存在。それらを全てーー」


ダークの言わんとすること。

それを夕日は悟る。

そして、無機質に呟いた。


「けす」


ゆらめく瞳の闇。

だがその揺らめきはどこか迷いがあった。


そして、夕日は足を止める。


夕日が足を止めた場所。

それは、如月 夕日の自宅の前。


そしてーー


"「夕日!!」"


"「気持ち悪ぃガキだ!!」"


いつも殴られ、足蹴にされた、両親の代わりである遠縁の親戚の自宅でもあった。


なぜ、ここに来たのか。

なぜ。ここに足が向いたのか。


夕日にはわからない。


「夕日」


「闇はいつでも夕日の味方だよ」


内に響く声。


「だから、夕日」


「やりたいことがあればいつでも意思を」


そして、その声の余韻は遮られる。


開かれる扉。

現れる坊主頭のガラの悪そうな男。

その男は、佇む夕日を睨み声を張り上げた。


「なんだッ、クソガキ!! ん? てめぇ、夕日か? なんだぁ……その格好?」


吐き捨て、夕日に近づいてくる男。

そして夕日の前に立ち、その手を伸ばそうした瞬間。


【癒す】


【如月 夕日を殴った手。それが存在するという苦しみから】


表明される、夕日の意思。


呼応し、男の手は闇に包まれーー


「!?」


血を吹き出し、消滅する男の両手。

その返り血を浴び、しかし夕日の表情は全く変わらない。

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