漆黒の魔法少女③
夕日の中。そこに流れ込む、赤澤 茜の力。
赤々とした魔法少女の神秘。それが、【侵食】により夕日の闇を更に強大なモノへとする。
膨れ上がる、夕日の闇。
その腹を満たす獣のような闇の姿。
それに、茜は叫ぶ。
「舐めるなッ、舐めるなッ、なめるな!!」
まとわりつく闇。
それを払うように声を張り上げる、茜。
「闇の餌になるつもりなんてねぇッ、こんなところでぇ!! この赤澤 茜が終わるぅ!? そんなのッ、ありえねぇだろ!!」
血走り、焦点の定まらない瞳。
その顔。それは、額に銃口を突きつけられた罪人そのもの。
だが、茜の意思など闇には無関係。
【侵食】という名の本能。
それを剥き出しにし、闇は赤澤 茜という存在そのものを喰らおうとする。
もがく、茜。
だが【立つ】という行為ができない為、逃げることすら茜にはできない。
歯軋りをし、三度、茜は声を張り上げる。
「ゆッ、夕日ぃ!!」
「てめぇはッ、こんなやり方で満足すんのかよ!! わたしに恨みがあんだろ!?」
「ならッ、闇になんて頼るなって!! 闇じゃなくッ、その拳で語り合おうぜ!?」
「そっちのほうがすっきりすんだろ!! 夕日ッ、だからこの闇をーーッ」
【癒す】
【赤澤 茜の声。それを聞くという苦しみから】
夕日の耳を包む癒しの闇。
それが意味することは、茜の声が夕日の耳には全く聞こえないことを意味していた。
だがそれを知らぬ茜。
無意味に声を張り上げ続け、夕日を自分の土俵に持ち込もうとする。
「ーーッ」
その茜の姿。
それに、夕日は意思を表明した。
【癒す】
【闇が赤澤 茜を侵食する遅さを】
刹那。
赤澤 茜は、闇に完全に飲み込まれる。
その間際。茜は、全ての力を解き放とうとしたのだろう。一瞬、真紅の光が膨れ上がろうとしたーーのだが、勢いをました闇に瞬時に覆い隠され、完全にその存在を侵食されてしまったのであった。
後に残ったのは、子犬の亡骸を抱いた如月 夕日と深淵を増した闇の広がりのみ。
どくんっ
夕日の内。
そこで胎動する一人目の魔法少女の力。
己の身体に【力】を付与し、身体能力を大幅に上昇させる赤の神秘。
夕日の瞳。その中に瞬く、微かな真紅。
それは闇とまじり合い、小さく渦を巻く。
そして、再び静寂に包まれる空間。
月の光。それは、何事もなかったかのように如月 夕日を照らし続ける。
吹き抜ける風。
それに漆黒のドレスを揺らし、夕日は踵を返す。
その姿。それは、漆黒の闇に彩られた存在そのもの。
そして、光に牙向く闇の存在そのものだった。
どくんっ
小さく脈打つ鼓動。
しかしそれに夕日は気づかない。
自身の胸元に抱かれた子犬の亡骸。
その亡骸から小さく小さく闇が鼓動を打っていることにーー夕日は、気づかなかったのであった。




