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居場所②

橋の下。

その薄暗い場所で、二人は隣り合う。

冷たい土の感触。それが日影に伝わる。


早朝の冷たい空気。それを吸い込む、日影。


「なにがあったの?」


日影はその問いかけを冷たい空気とともに飲み込んだ。

抱えられた子犬の亡骸。それが日影の目にうつったから。


如月 夕日。

クラスの中であまり目立たず、いつも一人で本を読んでいた大人しい生徒。

授業中も騒ぐこともなく、黙々と授業に取り組み、成績も悪くはなかった。


夕日の家庭環境。

それに問題があったこと。それを、日影も理解はしていた。

しかし日影は深入りを避けるという選択を選んだ。


〜〜〜


ある日。


"「あら、先生」"


"「夕日は家ではとてもいい子ですよ。ほら、夕日。先生にご挨拶して」"


"「せ、先生。こんばんは」"


そんな風にして電話越しから響いた明るい声。

それを免罪符にして。


〜〜〜


夕日の為。

そう自分の心の中で言い聞かせながら。


小さく息をつく、日影。

そして口を開いた。


「如月さん」


「その格好ってなにかのーー」


だがその言葉を夕日の声が遮る。


「せんせい」


「せんせいは、夕日のみかた」


淡々とした声音。

感情のこもらない声。まるで、虚空に語りかけているかのようなそんな無機質な言葉。


「せんせい。だからね。もう夕日のことはわすれてほしいの」


「でも、夕日はわすれない。せんせいがいつも夕日のことをしんぱいしてくれたこと」


「せんせいが、夕日の夕日の夕日の」


響き続ける夕日の声。

呼応し、夕日の瞳に蠢く闇。


【癒す】


【日影真那が如月 夕日のことを】


覚えているということを。


闇は夕日の意思に応えようとする。

だが、それを日影の声が遮った。


「先生はなにがあっても如月さんのことを忘れません」


「だって如月夕日さんは」


「私の大切な生徒なんだもん」


同時に夕日の身体は日影に抱きしめられる。

まるで母が子を抱きしめるかのように優しく、そして温かな感情を発露させて。


〜〜〜


「如月さん」


「先生はいつだって如月さんの味方です」


「だから、その。家や学校でなにかあったら先生を頼ってください。如月さんのことは先生が守ります」


放課後。夕焼けに染まった教室。

そこで夕日は日影に声をかけられた。

教壇に立ち、微笑む日影の笑顔。

その顔を、夕日はーー決して忘れない。


〜〜〜


だが、夕日の内に蠢く闇に終わりはない。

夕日の瞳。そこに宿るは冷たい感情。


「せんせい」


「ありがとう」


無機質に呟く、夕日。


「でも、もうだめなの」


「夕日は、夕日は。あいつらをゆるさない」


染み渡った夕日の声。

それに日影もまた呟こうとした。


「あいつら? あいつらって」


刹那。


【癒す】


【日影真那が如月夕日を覚えているということを】


表明される夕日の意思。

倣い、日影は意識を失いその場に横たわる。

ゆっくりと。まるで糸が切れた人形のように。


その日影の姿。

それに夕日は更に意思を表明した。


【癒す】


【日影真那が雨に濡れるということから】


日影を包む夕日の闇。

その闇はどこか優しく。どこか夕日の思いを表しているかのようだった。


立ち上がる、夕日。


吹き抜ける風。

それは夕日の漆黒のローブを揺らす。

そしてその小さな心に宿るは混じり気のない思い。


宿るのはーー


【虎森 大河】


【佐伯 恵】


その二人の魔法少女に対する消えることのない憎悪だった。

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