居場所①
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「赤澤 茜。大和 撫子」
「二人の神秘反応が消えた」
響く小さきモノの声。
「これは異常事態だ。半日で二人。【今まで】とは比べものにならない程に」
誰もいない殺風景な室内。
その中で、二人は重苦しい空気の中で沈黙を保っていた。
血だらけになった室内。
転がるモノいわぬ亡骸。
その亡骸に足をのせるは、二人の少女。
曰くーー虎森 大河と佐伯 恵。
茶髪と金髪の二人の魔法少女。
しかし、その二人の顔に滲むのは焦燥ではない。
あるのは、敵意と殺意。
「誰がやったの?」
染み渡る虎森の声。
「ただのヨリヤミじゃないでしょ? 茜と撫子が侵食されるなんて普通のヨリヤミじゃない」
声にこもる、確信に似た思い。
それに佐伯も頷き、声を響かせる。
「誰。その言葉が正しいわね。ただのヨリヤミならモノ。でもあの二人が侵食されたということ。それを考えれば……人のカタチをしたヨリヤミが現れたと考えるのが自然だし、当然だもの」
佐伯の瞳。
そこに宿る金色の灯火。
そして更に佐伯は続けた。
「他の魔法少女じゃなく、茜ちゃんと撫子さん。しかもこんな短期間に。だとすれば」
「わたしたちに負の感情を持つ存在」
佐伯の言わんとすること。
虎森はそれを声に出す。
顔を見合わせる、二人。
「如月 夕日、か」
二人の側。
そこに浮遊し、小さきモノは呟く。
その呟きに込められているのは、無機質で淡々とした冷たい感情。
「なら、この闇みたいに浄化しないとね」
「だね」
「ヨリヤミはひとかけらも存在してはいけないーーだって、世界のゴミなんだもの」
小さきモノの言葉。
二人はそれに応えるように、足元の亡骸を更に強く踏みつける。冷酷な眼差しをもって。まるで、そこに転がるのはただのゴミだと言わんばかりの表情をもって。
〜〜〜
日が昇った早朝。
そこに訪れた警察官は、現場の惨状に口元を抑えた。
顔が潰れ、首があらぬほうに曲がった少女の遺体。
そして玄関口から見える血だらけになった家の中。
【如月】
とかかれた白の表札。
その表札に付着しているのは、鮮血。
そんな表札を見つめ、その場に居た者たちは皆一様にその顔に言い知れぬ感情を宿す。
「中に、入るぞ」
「は、はい」
家の中に踏み込んでいく者たち。
その時。
ぴくりと。
動く少女の遺体。
しかし、それに気づいた者。
それは誰一人として存在しなかった。
〜〜〜
朝の光。
それの届かない橋の下。
そこに、如月 夕日は膝を抱え座っている。
漆黒のドレス。ではなく、黒のローブ。それ纏った姿で。
その側には、子犬の亡骸。
「ごめん、ね」
呟かれる夕日の声。
大和 撫子との戦い。
その時に手放してしまったこと。
優しく。子犬を撫でる、夕日。
夕日の顔に宿るのは、ただの一人の少女の悲しげな表情。大和 撫子や赤澤 茜に見せていたあの殺意に満ちた顔でなく、ただの少女の顔。
そんな夕日の思い。
闇はそれに呼応し、夕日と子犬を柔らかく包み込む。
だが、そこに。
「如月さん? 如月 夕日さん?」
聞き覚えのある声。
それが響く。
顔をあげる、夕日。
果たしてその視線の先にはーー
「ど、どうしたの、その格好。それに」
夕日の頬。
そこに付着した血。
それに息を飲む、女性。
曰くーー如月 夕日のクラスの担任である日影真那が、レディーススーツに身を包みそこに佇んでいる。
朝日を逆光に受け、その顔にどこか儚げな笑みをたたえながら。そこに立っていた。
震える、夕日。
そんな夕日の姿。
そこからなにかを悟り、日影は微笑む。
そして。
「如月さん」
「そんなところに居たら、風邪ひいちゃうよ」
そう優しく声を響かせ、夕日に手のひらを伸ばしたのであった。
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