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女子一人、お湯を沸かすだけの夜  作者: バッシー0822


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曇天の先へ

夏の終わり。施設の一角、昼下がりの静かな廊下で、夢野あかりの笑顔は少し薄れていた。


「昨日の夜勤…つらかったなぁ」


ぽつりと漏れた言葉に、雪野梢はそっと目を向けた。あかりの指先は、まだ排泄介助の記録をまとめる手帳の上で止まっている。実地研修が進むにつれて、机上の知識が現場の“重み”に変わっていくのを、梢も肌で感じていた。


「…でもさ、昨日の利用者さん、名前を呼んだら笑ってくれたの。びっくりしちゃった。嬉しくてさ」


その表情には確かに曇りがあった。でも同時に、何かを乗り越えたあかりの“にじみ出る温度”がそこにあった。


梢は思いきって言った。


「あなたの介助、やさしいんだね。みんなに伝わってるよ」


あかりがほんの少しだけ眉を下げた。涙にはならない小さな沈黙が流れ、やがて笑い声になった。


──そして資格取得の朝。ふたりの胸元には、やわらかな達成感とともに、研修センターで習ったこと以上の“時間の蓄積”が詰まっていた。


試験会場を出た瞬間、あかりがぽんと梢の背中をたたいた。


「雪野さん、ありがと。隣にいてくれて助かった」


その言葉に、梢はただ「こちらこそ」と答えた。


空は少し曇っていた。でも、確かに進んでいた。


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