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女子一人、お湯を沸かすだけの夜  作者: バッシー0822


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母の所在

「三日に一度は、母さん来てくれるんだよ。替えの着替えもちゃんと持ってきてくれるしね。ありがたいよ」


父の声は、どこか懐かしさを宿していた。病室の窓から差し込む午後の光が、かすかに白く彼の横顔を照らしている。


梢は、うなずきながらも視線を落とす。


「……あまり長くはいてくれないんでしょう?」


「うん、ちょっと顔出して、すぐに帰るよ。家のことが忙しいんだろうな。昔から、あんまりじっとしてる人じゃなかったし」


父の言葉に合わせて、「家事があるから」と言葉を添えた梢。しかし、その胸の奥には、小さな疑念が湧き上がっていた。


──本当に、家事のためだけなのか?


母は何を見て、何に触れ、何を残して去っているのだろう。かつてあれほど情に厚かったはずの人が、なぜ今は距離を置いているように感じるのか。


父の病室に置かれた着替えの袋が、妙に整然としていることが、その「整えすぎた思いやり」のようにも見えてくる。


ふと、梢は思う。「母は、過去と向き合うことを避けているのではないか」と。


自分は“見舞う”ためにここに来た。けれど母は、“届ける”だけで帰っていく。その差が、父よりも母との間に新しい深い谷を生んでいるようだった。

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