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女子一人、お湯を沸かすだけの夜  作者: バッシー0822


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一人でできるもん

鏡の前で、髪をかき上げる。指先の隙間から見えた頭皮が、以前よりも広く感じられる。湿気のせいじゃない。明らかに、量が減っている。


化粧をしようとして手が止まる。そういえば──生理が、もう何ヶ月も来ていない。


「……閉経」


その文字が、ふと頭の隅に現れた。大げさな驚きはなかった。ただ、自分の体が「何かの終わり」を告げた気がした。


部屋には誰もいない。老いた両親と、この静かな家だけが日々のすべて。昔、家事を“女の義務”のように思い込み、その価値を否定していた若き頃の自分がよぎる。


──あんなもの、誰でもできる。縛りだ。自由を奪うもの。


でも今、ゴミを片付け、米を炊き、味噌汁を作って気づく。


“この程度”のことができれば、選ばれる可能性は十分にあったかもしれない。誰かに見つけてもらえたかもしれない。けれどもう、それは過ぎてしまった。


雪野は思う。


──私にもう、そんな出会いはないだろう。


炊きたての米の匂いが、部屋に微かに立ち上っている。掃除の終わった床は光を反射し、冷蔵庫にはれとるとのパスタソースが控えている。


何も起きない日々。でも、それでも生きている。


「……一人でできるもん」


そう呟いた声は、鏡の中の誰かに届いた。


挿絵(By みてみん)

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