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女子一人、お湯を沸かすだけの夜  作者: バッシー0822


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選ばれなかったものに染まる

「男は選びなさいよ」


その夜、玄関の鍵を回した瞬間、澄子の低い声が雪野に刺さった。


部屋は暗く、台所の照明だけがぼんやりと光っていた。テーブルには夕飯が一人分、冷めたままラップをかけられていた。その横に座っていた母は、もう湯を沸かすこともしなくなっていた。


「選びなさいって、どういうこと」


靴を脱ぎながら、雪野は反射的に返した。語気が強かった。それでも母は視線を外さずに言う。


「自分が下がるような相手といたらね、自分まで見下されるのよ」


沈黙。ラップが、冷蔵庫の風になびいて微かに鳴った。


雪野は、笑おうとした。嘲るように返そうとした。でも何も言えなかった。部長のスマホ、ホテルのシーツ、やり取りされたスタンプの数。それらが、すべて母に見透かされていたような気がした。


「昔はそんなこと、言えない人だったくせに」


呟いた声は、誰にも届かなかった。澄子は、静かにお茶を口に運んだ。指が震えていた。


雪野は、自室にこもった。スマホを見た。部長からのメッセージ。遅い時間の「今日、どうする?」という一行。既に絵文字すら使われなくなっていた。


──ここに欲しかったものは、何もなかった。


それでも、布団をかぶって返信を打ちかけて、指を止めた。


母の言葉が、妙に重たかった。

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