表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/38

無感覚な昼の時間

午前九時二分。すでに会社に着いている。


派遣社員の制服はない。だから雪野は、無難なベージュのニットと膝丈のスカートを選んでいる。何度も洗濯されたそれは、形こそ崩れていないが、どこか色が沈んでいる。


席に着き、パソコンを立ち上げ、朝のタスクに取り掛かる。Excelの表に請求金額を入力し、部内共有フォルダに資料を格納する。誰かに挨拶されれば、口角を少しだけ上げる。社内チャットにスタンプが届けば、「笑」の文字を返す。


誰とも深く関わらない。誰にも迷惑をかけない。完璧に“そつなく過ごす”一日。


斜め前の席では、若い正社員が新しいリップを見せ合って笑っている。その隣では婚約指輪の話に花が咲いている。雪野は視線をパソコンの画面に固定したまま、右手のスクロールを止めない。


昼休みになった。


給湯室で紙コップにインスタントの緑茶を注ぎながら、雪野はふと思う。


──今日も、誰とも話していない気がする。


それは嫌ではない。でも、少しだけ重たかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ