崩れる光
夜のテレビから、突然聞き覚えのある名前が飛び出した。
画面の中で、アナウンサーが淡々と告げる。人気アイドルグループのメンバーが、未成年との飲酒や女性問題で炎上しているという。画面には過去のライブ映像が流れていた。雪野が何度も見た、あのステージ。あの笑顔。
指先が震えた。
「なんで、こんな…」
声は小さかった。誰にも聞こえない部屋の空気に、ただ沈んだだけ。
そのアイドルは、雪野にとって“生活の外にある、唯一の輝き”だった。現実に疲れた夜に、彼が歌う映像を見ることで、少しだけ気持ちが救われた。信じていたわけではない。でも“光のように扱っていた”のは確かだった。
今、その光が崩れている。
毛布の中に潜り込みながら、雪野は目を閉じた。テレビの音は続いている。世間の騒ぎに乗って、誰かが怒り、誰かが笑っている。
雪野はただ、静かに胸がざわつくのを感じていた。
──あの光は、最初から幻だったのかもしれない。
それでも、DVDはまだ棚の奥にある。彼の笑顔も、きらめきも、そこに残っている。それを見ないようにすればいいのか、見て受け入れるべきなのか。雪野はまだ、答えを持っていなかった。




