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企画参加作品(ホラー抜き)

初雪の朝

作者: keikato

 年の暮れの日曜日の朝。

 朝食のあと、縁側のサッシ戸から庭をのぞくと、そこには夜のうちに降った雪が薄く積もっていた。そして今も粉雪が風にチラチラと舞っている。

 今年の初雪だった。

――うん?

 降る雪のなか、白い霧の塊のようなものが私のいるサッシ戸の外へとやってきた。形はおぼろげではっきり見て取れないが、その白い塊は私の前で跳ねるように動く。

――まさかシロでは?

 私は窓ガラス越しに、その白い塊に向かって声をかけた。

「シロ、シロ!」

 白い塊が喜ぶようにいっそう跳ねた。

――やっぱりシロなんだわ。

 私はそれがシロの魂だと確信した。

 シロは子犬のときから我が家で飼われ、この秋に死んだばかりの老犬で、頭からシッポまで全身真っ白だった。

 そのシロは雪と戯れるのが何よりも好きだった。

 雪を見て嬉しさのあまり、私と遊びたくてこの世に戻ってきたのだろう。

 魂となって……。


 私は急いで玄関から庭へと出た。

 だが、そこにもうシロの姿はなかった。

 白い塊もなかった。

 雪だけが舞っていた。

 あれは風に舞う雪だったのだろうか。

 ただ積もった雪には、見覚えのある小さな足跡が庭の奥に向かって続いていた。

 そして……。

 そこはシロの亡骸が眠っている場所だった。


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― 新着の感想 ―
子供の頃にハスキー犬を飼っていたのですが、今でもふと思い出すことがあります。シロもまた、不意に遊びに来てくれるのではないかな(^ ^) まだ暖かい日もありますが、冬はもうすぐそこですね。とてもきれ…
たった500文字の中に込められた、この抒情……。さすがkeikato様です。 雪だけど、シロのあたたかな体温まで感じました。 素敵な作品をありがとうございました。
私もたまーにそんな風が足に触れるのを感じることがあります(*´ω`*) やっぱり戻ってきてくれたの?
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