初雪の朝
年の暮れの日曜日の朝。
朝食のあと、縁側のサッシ戸から庭をのぞくと、そこには夜のうちに降った雪が薄く積もっていた。そして今も粉雪が風にチラチラと舞っている。
今年の初雪だった。
――うん?
降る雪のなか、白い霧の塊のようなものが私のいるサッシ戸の外へとやってきた。形はおぼろげではっきり見て取れないが、その白い塊は私の前で跳ねるように動く。
――まさかシロでは?
私は窓ガラス越しに、その白い塊に向かって声をかけた。
「シロ、シロ!」
白い塊が喜ぶようにいっそう跳ねた。
――やっぱりシロなんだわ。
私はそれがシロの魂だと確信した。
シロは子犬のときから我が家で飼われ、この秋に死んだばかりの老犬で、頭からシッポまで全身真っ白だった。
そのシロは雪と戯れるのが何よりも好きだった。
雪を見て嬉しさのあまり、私と遊びたくてこの世に戻ってきたのだろう。
魂となって……。
私は急いで玄関から庭へと出た。
だが、そこにもうシロの姿はなかった。
白い塊もなかった。
雪だけが舞っていた。
あれは風に舞う雪だったのだろうか。
ただ積もった雪には、見覚えのある小さな足跡が庭の奥に向かって続いていた。
そして……。
そこはシロの亡骸が眠っている場所だった。