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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
昔話1 ロビンの話
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Good fellows' Robin 7

妖精の取り替え子(チェンジリング)の話を出してくれたのは、シンシアだったね。まあ、僕は実際そうした事が行われた場合、妖精(fairy)がどれだけ人として取り(つくろ)えるかなんて知らないけど」


()えて()み言葉を使ってロビンの様子を見てみるが、火掻(ひか)(ぼう)の衝撃から、ハムスターのようにスープの野菜を頬張(ほおば)って、もぐもぐする作業に戻っただけである。

シンシアが目だけで(うった)えてくるが、無視無視。

時として、治療に痛みはつきものだ。古代ローマの偉い人も言っている。


「でもまあ、流石(さすが)に僕も知ってるんだよね。火掻(ひか)(ぼう)妖精の取り替え子(チェンジリング)の関係性」

()()!」


シンシアが流石(さすが)に声を(あら)げ、ロビンはそれに(おび)えたように手も口も止めた。


妖精(fairy)は火を(いと)う、鉄を(いと)う。ならば、真っ赤に焼けた鉄なんて言語道断(ごんごどうだん)だ。キミの火傷(やけど)、そういうことだろう、ロビン」


固まっているロビンは、視線を揺らしている。

そちらを向いて、そっとその背中を()でた。


「飲み込んでからでいいよ。大丈夫、待つから。シンシアも怒らないでよ、ロビンが(おび)えてるぞ」

「…………あんたは、もう、あーもう、変人だとは思ってたけど、だから、詐欺師(さぎし)だの胡散臭(うさんくさ)いだの散々(さんざん)に言われるのよ」


ぱくぱくとシンシアは何度か口を閉じたり開いたりして、そしてやっとそう言った。

しかし、残念ながら、そういった内容は日本語で言われ慣れすぎて、英語であってもダメージはゼロなのである。


「……シンシアも、わかってたの?」

「そこの胡散臭(うさんくさ)い日本人がそう当てられるってことは、まあ、そうなるさ」


ロビンがぽつりとそう言うと、シンシアがバツが悪そうな顔で答える。


流石(さすが)にこんな情緒(じょうちょ)に配慮しないやり方で()いたりは絶対にしないけどね」

「進展すべきなら、平穏のために停滞(ていたい)するより、いっそ爆破(ばくは)すべきだと僕は思うんだけどね」


まあ、その尻拭(しりぬぐ)いを任せられる人がいればこそ、ではある。

そういう意味でシンシアは信頼している。それを面と向かって言ったら拳骨(げんこつ)ものだろうとも思っているし、今もこのクソ過激派野郎が、と言わんばかりの視線が痛い。


「さて、で、誰がキミにそんな事したんだろうか、なんて予想ぐらいは簡単についちゃうものなんだけど、ロビン、キミの口から、言える?」

「……」

「勝手な憶測(おくそく)で、キミを傷つけたくはないんだ」

()()


シンシアに(たしな)められる。

しかし、事実は事実として確認すべきだし、勝手に憶測(おくそく)を並べたところで、それはロビンにとっての事実を無碍(むげ)(あつか)うだけである。


「事実は事実だけど、そこに(ともな)う意味は個人で(こと)なる。であれば、当人の口から事実もその周囲も聞き出すべきだ。一個人の一事実を理解するためにはそのバックグラウンド全てを把握する必要があるが、それは非現実的だし、そのバックグラウンドをもとに再構築したところで、()()()()()()()()()()()。であれば、当人と問答するのが一番良い(best)だろ?」

「……あたしゃ、あんたのそういうとこが好かんね」

「僕も好かれるとは思ってない。そもそも好かれてたら、詐欺師(さぎし)なんて言われたりしないわけだし」


まったくその通りだわ、とシンシアが大きくため息をついた。


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