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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
昔話1 ロビンの話
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Good fellows' Robin 3


結局、呆気(あっけ)ないほど簡単にロビンを()(つか)まえることはできた。


そりゃ、普段から何くれとなく気にかけ、無理矢理(むりやり)にでも世話を焼いてくれる圧の強いおばちゃん――たぶんシンシアには拳骨(げんこつ)と共に「おねえさん」に訂正される――と、前日に邂逅(かいこう)したどう足掻(あが)いても不審者が(そろ)って突然現れれば、脳がキャパオーバーするのは想像に(かた)くない。


普段より簡単だ、と(ひと)()ちるシンシアに右腕を()(つか)まれて、そのまま、ぽかんとした表情で連行されるロビンの後ろを歩きながら、じっとその様子を観察する。

どう見ても、人間である。ところで妖精って人間にどこまで擬態(ぎたい)できるのか、僕はまるきり分からないんだよね。


そうしてロビンを連行したシンシアは、家に着くと、まず僕の方を向いて言い(はな)った。


()()、あんたロビンにシャワー浴びさせといて」

「え、僕が?」

「その間にあたしが(めし)を作る。片棒(かつ)ぐなんていったのはあんただ。いい効率化だろう?」


そうして、シンシアは台所に引っ込んでしまう。

まあ、そうだね、そうね、そう言ったのは自分だ。と、言質(げんち)をとられた自分を呪って、ロビンに向き合う。


「ええっと、ロビンでいいんだよね。僕はキミ・カツラギ。日本人で、今はシンシアのとこにイソーロー……英語でなんて言うんだこれ」

「……」

「まあ、その、昨日は驚かせちゃってごめんね」


じっと見つめてくるだけのロビンに、これは強引に事を起こさないといけないやつなのか、それこそヤバイ不審者じゃねーか、でも子供の(あつか)いよくわかんないな、ノリでいけるかな、などと思っていると、ロビンが小さく口を開いた。


「……アナタ(What)( are)何?( you?)


(who)ですらなく、(what)と来た、か細い声であっても、そのインパクトの(すさ)まじさたるやである。

いや、不審者でしかないのはわかってるよ、わかってるけど、これはないだろ、人だぞ、僕は。

そう思って、その髪の奥を(のぞ)き込んで、そして、()()()()()()()()


「……ロビン、キミ、まさか」


そう言えば、すうっと青い色と光が(にじ)み出したような目と、()()()目が合って、ロビン少年は(おび)えたように、でも昨日のように逃げ出すことはなく、少し首を(ちぢ)こめた。

一瞬()ぎった考えを、そのまま深掘りしたくなる欲をぐっと(こら)える。そんなことしたら、後でシンシアの拳骨(げんこつ)を食らいかねない。

(わず)かな時間を()しんで身を犠牲にできようか。考える時間は後でいくらでもあるのである。


「……ロビン、とりあえずシンシアの言う通り、バスルーム、行こうか」


そう言うと、彼は少し(しぶ)るように、それでもそっと背中を押せばついて来た。

バスルームまで行けばなんとかなるなとホッとしていたのだが。


「ほら、シャツ、脱いで」

「……」


ところがどっこい。(こと)此処(ここ)(いた)って(しぶ)る、(しぶ)る、(しぶ)る。


「うー、シンシアに怒られるの僕だからさー、僕を助けると思ってここは一つ!」

「……」


ダメ元での泣き落としもきかない。

子供の無言の抵抗ほど、強いものもない。

ああ、これは仕方ない。不審者と思われてるのだもの、そりゃ当然の反応だ。(むし)ろ、ここまで来たら、その徹底(てってい)した危機管理能力を()(たた)えるべきである。

そう腹を(くく)って、バスルームから台所に向けて(さけ)んだ。


「シンシアー! 手伝ってー!(Help me!)


少しばかり待てば、眉を(いか)らせたシンシアがバスルームにやって来た。


「なんだい、まだシャワー浴びせてないのか」

「それが、どうにも脱いでくれなくて……丸のままは流石(さすが)にないだろ?」

流石(さすが)にあんたに(まか)せるには、あんたが胡散臭(うさんくさ)すぎたか」


そこは否定できない箇所(かしょ)なので、黙る他ないが、抗議の意味を込めて頬を(ふく)らませておく。


「ほら、ロビン、いつもみたいにうちのバスルーム使っていいんだよ?」


ところが、シンシアにそう言われても、ロビンは首を横に振るだけだった。

シンシアと僕は顔を見合わせた。


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