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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
昔話1 ロビンの話
92/209

Good fellows' Robin 2

善き(good )隣人達(fellows)が、()み言葉である妖精(fairy)()けるための一つであることぐらい、流石(さすが)に知っている。


「ってことは、あの子、妖精(fairy)と関わりがあるのかい?」


そう問うと、シンシアは思いっきり顔を(しか)めた。


「あんたねえ、()()()()()()()()余計(よけい)洒落(しゃれ)にならんのよ」

「ああ、ごめん。でも確認したくてさ。僕はこっちの文脈は勉強中なんだから、勘弁(かんべん)してよ」


言いながら、ふと古代ローマの詩人、プロペルティウスは自身が詩に想いの(たけ)を書き(つづ)った才色兼備の佳人(かじん)キュンティア(Cynthia)と同語源だろう名を持つ目の前のシンシア(Cynthia)のこの言動を見たら、血管がブチ切れるんじゃないかな、それとも解釈違いだと慟哭(どうこく)して天地に(うった)えるのだろうか、とふと思った。

思っただけである。


「なんか失礼なこと考えられてる気がするけど、でもまあ、そういうこったね。あの子、気に入られてしまったのよ。あの子の目、見た?」

「いや、あの髪の伸び方じゃ見ようにも見れないよ」


シンシアが肩を(すく)め、(くわ)えた煙草(たばこ)を手にして、煙を吐き出す。


「あの子ね、本当は緑の目だったんだよ。でも、二年前、一回、行方不明(ゆくえふめい)になって……それでも、半日かそこいら。でも、そこから戻ってきた時には、目が青くなってた」

「……それが善き(good )隣人達(fellows)仕業(しわざ)だって?」

「他に考えられるかい? 日本にだってカミカクシってのがあるんだろ?」


それを言われると弱い。

何せ、僕自身が神隠(かみかく)し経験者なのだから。


「それからだよ。あの子がやたらと(おび)えるようになって、あんな浮浪児(ふろうじ)(まが)いの薄汚(うすぎたな)い格好になったの。目の色のことがあるから、みんな妖精の取り替え子(チェンジリング)だっていうけど、あたしにゃそうは見えない」

「僕にもそうは見えなかったよ。まあ、僕の認識能力も、たかが知れてるんだけど」

「けっ、やだやだ、あんたらは最初から()()()()()()背負(しょ)ってんだから、後天的なあたしなんかよりずっと見えるし、聞こえるでしょうよ。ましてあんたの理論に乗っかればね」


とはいえ、そんな僕の下宿先なんかをかって出てくれたシンシアだ。

言動が多少(あら)くとも、面倒見(めんどうみ)の良さは()(がみ)()きである。

そんな彼女がここまで言うのであれば。


「……ねえ、その子、たまにここに来たりする?」

「というか、見かねて()(つか)まえてる」


そろそろ(つか)まえ時、なんてシンシアはにやりと笑った。

だから、僕も同じように笑って返した。


「じゃあ、僕にもその片棒、(かつ)がせてよ」


そうして、ここに平均せずともいい年こいた大人二人の大人気(おとなげ)ない悪巧(わるだく)みがスタートしたのである。


プロペルティウス:作品が現存するエレギア詩人の代表。Cynthia prima fuit, Cynthia finis erit.(キュンティアが最初の女だった。そして最後の女ともなろう)と言ったぐらいにはキュンティアにゾッコン。

キュンティア:一応本名ではないとされる。高級娼婦だったのではという説が一般的。彼女自身も詩を作るとか、詩人の子孫だったとかなんとかがプロペルティウスの詩からわかるとか。

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