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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
昔話1 ロビンの話
91/209

Good fellows' Robin 1

21話の伏線というほど伏されてもいない伏線の回収

妖精の取り替え子(チェンジリング)


それ自体はヨーロッパで広く語られる伝承だ。

グリム(Kinder-und)(Haus)(märchen)39話目の「ヴィ(Die )ヒテル(Wichtel)マン(männer)」。

小人にまつわる三つの短い話で構成された内の一つは今日(こんにち)日本に広まっている「小人と靴屋」であるが、そうではない話の一方は、その妖精の取り替え子(チェンジリング)によって取られた我が子を、妖精を笑わせることで取り返すという平和(きわ)まりない話である。


けれど、取られた我が子を取り返す方法の多くは、そう平和ではない。

妖精達の(いと)う鉄を、火を、時には両を合わせた真っ赤に焼けた鉄を、使うのだ。



ロビンと出会ったのは二十年近く前のこと。


当時、祖母が亡くなり、後ろ盾のない僕をこれ幸いとばかりに蹴落(けおと)そうとするやつは沢山(たくさん)いた。

それに嫌気が差して、そして、数少ない僕の言うことを理解してくれた人の(すす)めもあって、ふらりと旅に出ていたその時だ。


――そうだ、妖精と幽霊と鵞鳥(Mother )婆さん(Goose)の本場、行こう。


と、思ったんだか、なんだったか。とりあえず紅茶と紳士の国に滞在した時の話だ。

ちょっとばかり伝手(つて)辿(たど)って、その道の人にお世話になったりしながら、個人的に魔女宗(ウイッカ)は微妙に肌に合わんかもな、と思っていた頃合(ころあい)だった。


ただ、当時の下宿先での頼まれ事を終えて帰り道を歩いていた途中、その次の瞬間には、ぞわりと鳥肌が立って、反射的に振り返っていた。

その先に、背の低い()せぎすの、麦藁(むぎわら)のような髪で目を隠すようにした十足らずの小柄な少年――当時のロビンが(おび)えたように立っていた。

その服装はけっして綺麗とは言えず、うっすらと(すす)けてすらいた。


当時から、あんな理論を(かか)げ、しかも自分の能力が能力な上に()()()()()()()()()()()()()()()なので、広範にそうした知識を(たくわ)えていた僕の脳裏(のうり)には一つの単語が()ぎった。


――邪視(じゃし)


その瞬間、興味が()いた。

だから、(おび)えと驚きで固まっている少年の方に、ひょこひょこと警戒心を()いてもらえるように(おど)けたつもりで寄っていく。


「ねえ、キミ」

「ひっ……ごめんなさい!」


けれど、彼はそう言って、脱兎(だっと)(ごと)く、稲妻(with )の素(lightning)早さ(speed)で逃げていってしまったのだった。

一人取り残された僕は、不審者に対する対応としては最上ではないまでも、上々の対応であると感心したものである。

残念ながら、自分が不審者である自覚ぐらいはある。いい大人として、それぐらいは(そな)えている。


そうして、まだ名も知らなかったロビン少年の背を見送って、下宿先に帰った僕は、近所の子ならば見当がつくだろうかと、家主(やぬし)のシンシアに(たず)ねた。


邪視(evil eye)まがいの視線に、金髪? ああ、そりゃあ、この(へん)だと一人しかいないね」


――善き隣人達に(Good )気に入られた(fellows')ロビン( Robin)だろね。


紫煙(しえん)(くゆ)らせて、シンシアはやるせないように目を細めた。


「Die Wichtelmänner」:KHM39。日本でいう小人の靴屋、妖精の取り替え子(チェンジリング)、妖精の名付け親にされたことで浦島太郎じみたことになる話の三本立て。


英語ルビの字数制限がきっつきつですがこだわります、がんばります。

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