13 不審者こと先生の事情
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「センセイ、何してたの?」
気が立っているのがよくわかるロビンの声が紀美の鼓膜に突き刺さる。
「ん~、ボランティア?」
「ふーん? 肝心のクライアントはボクに任せて?」
こういう時、凶眼ほど感情を強く表現できるものもない、と紀美は思う
というかロビンの場合は、それだけじゃないものが乗ってる時があるのだが。
「小学生相手だから」
「……」
「それにあの子、スケープゴートにされるところだったし……」
そう紀美が言えば、ロビンは仕方ないと言わんばかりの、大きな大きなため息をついた。
そこはもう、勝手知ったる仲だ。
「で、そこの自販機と関係あるの?」
「あ、なんか見える?」
ロビンはこっくりと頷いた。
そして、じっとそのどこかネオンっぽさもある青い目で、自販機の中を見透かすつもりのように見つめる。
「なんか、こう、もやっぽいのある。明日には自然消滅すると思うけど」
「なるほど、そう見えるのか」
「そして、それの名残がセンセイの手から見える」
「うっ」
ちくりと釘を刺すようにロビンが言う。完全にバレている。
バレないこともない、とは紀美は予想していたが。
「……コックリさんのね、十円玉。なんにも知らされずに使って欲しいってだけ頼まれたらしくてね」
「そんなの受ける方がおかしいでしょ」
「……スクールカーストって怖いよね。しかも女子グループの非難とか怖いでしょ」
あー、と言いながら、ロビンは面倒くさそうな表情を浮かべた。
「それで、その十円玉、センセイが使ったのね、納得」
「ついでに多少、本来代償を払うべき人間が払うように印象操作を……」
「……」
ロビンが眉間にしわを寄せて、額を手のひらでおさえた。
どこまでやってんだ、こいつは、というのがひしひし紀美にも伝わってくる。
「いや、だってさあ」
「……大丈夫、わかってる、センセイがそういうお人好しだってことは、身をもって十二分にボクはわかってるから」
ロビンはそう言って、諦めと呆れを含んだ表情で紀美を見た。
「だからこそ、あんまり軽々しく身を削ってほしくはないんだけどね」
「今回は特に何も削ってないからさあ」
言いながら、紀美はペットボトルの蓋を閉めた。
それを見ながら、ロビンは少しだけ目を細める。
「……結果的にでしょ、それ。言っとくけど、前みたいに勝手に目を犠牲にするぐらいなら、巻き込んでよね」
「うーん、しっかりした弟子がいて僕は幸せだよ」
紀美がそう言えば、ロビンは少し照れたように、はいはい、と適当にあしらって、ふいっと元来た方に顔を向けた。
「まあ、全部終わったし、帰ろう、センセイ」
耳を真っ赤にしてそう言った一番弟子の言葉に、紀美はそうだね、と返事をして、お茶のペットボトルを提げて歩き出した。
即防犯ブザーはされない程度に良い人オーラは出てるけど、それはそれとして胡散臭さが漂うタイプ。それが先生。




