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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
閑話1 コックリさん(事後処理)
88/209

11 不審者が言うことにゃ9

「というわけで、コックリさんにおいてはそこに当てられた漢字の中で、何よりもキツネというイメージが先行する。これはコックリさんをやるに当たって、油揚(あぶらあ)げをその場に置いてはいけないというルールにも見られる。それに加えて、今まで説明した通り、コックリさんはルールを守れば安全であるとされる以上、人を化かした挙句(あげく)に殺すタヌキとは相いれず、犬はそもそも怪異であるというイメージ自体が希薄である」


――本当はなくもないんだけど。

そんな(つぶや)きをするのが脱線の元だな、と晴人(はると)はとうに理解していた。


「そして、人に近すぎる犬や、人を殺す化物であるタヌキより、お稲荷(いなり)さんという神様の使いであるキツネは神託(しんたく)(くだ)すに相応(ふさわ)しい動物だ。キミもそう思うだろ?」

「……そう言われると、そうかも」


なんとなく、コックリさんがキツネ、犬、タヌキであると聞いた時点から、実際にはキツネが動かしていた方が、()()()とは思っていた晴人(はると)である。

ここまで論理的に説明されると、自然と納得してしまった。


「で、さっき話した通り、お稲荷(いなり)さんは今や(あきな)いの神としての側面が強い、ということは、だ」


きゅっとおにーさんは目を細める。

ちらちらと西日に緑の光が揺らいで(またた)く。


「お金を消費するという行為は経済の活発化に繋がる。つまり、お金を使うということは、お稲荷(いなり)さんにとって自身の加護する分野に良い影響を与えることになる。コックリさんの問答を神託とするなら、向こうは代償、対価として自身の加護範囲内への小さな献身(けんしん)を求めると考えられる」

「……コックリさんに聞きたいことを聞く代わりに、お稲荷(いなり)さんへの手助けとして十円を使えっていう、取引ってこと?」


ここまでの長い話が、そんなところに行き着くのかと、晴人(はると)は少しぞっとした。

おにーさんは一つ(うなず)いて、晴人(はると)の目をまっすぐ見つめた。


「そう。そういう風に解釈できるよねって話。だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()が他人が支払うべき対価を払う必要は()()()()

「……でも、最初、おにーさん、それは僕と、あの子の取引って」

「そうだね。でも、()()()()の間ではそうかもしれないけれど、その子とコックリさんの間の取引はまったくの別物だし、対象の分類が違うだろ? だから、コックリさんが取り立てを行うのであれば、対象はその問題の子であるべきだし、それがその子のためでも、キミのためでもある」


わかった? とおにーさんは晴人(はると)に向けて首を(かし)げる。


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