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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-2 肝試しと大掃除 side B
73/209

10 媒

「中間は英語でmiddleとかmidway、どちらもmedia(メディア)と根っこが同じなのが分かりやすいです。けれど、(あいだ)、英語で表現されるbetweenもまたmedium(メディウム)の範囲内です。結果として、橋渡しするものもまた、中間のもの、medium(メディウム)であって、だから媒体(ばいたい)媒介(ばいかい)(なかだち)という意味になるんです」

「なるほどね、オジサン、見えてきたわ」


直人(なおと)が納得の声を上げているが、織歌(おりか)は黙って(ひろ)の言葉の続きを待つ。


「一般的にメディアと言ったら、現代ではmass media(マス・メディア)かメディア機器ですね。mass media(マス・メディア)のmassは質量とか、群衆とかいう名詞ですが、この場合、名詞の形容詞的用法でmass(大衆のための)media(媒体)になります。メディア機器はデータにアクセスするためのmedia(媒体)ですね」

「なるほど、mass(大衆のための)media(媒体)……原義として、取材源をmass(大衆)に至らせるためのmedia(媒体)ということになると」

「実際にそれがちゃんとできてるかというのはまた別の話ね。オジサン、肩身がちょっと狭いし、耳も痛いわ」


直人(なおと)が苦みを(ふく)みながらも、少しおちゃらけたように言葉を(こぼ)す。


「ですが、我々の界隈(かいわい)(なかだち)なんて言ったら、一つだけなんです。霊媒(れいばい)はわたし達の理解からすれば層の()け橋。そうでなくとも、霊という異域の存在と、生ける人というこの世の存在を(なかだち)する者ですから」

「……でも、それは日本語において、では?」

「いえ、ラテン語medium (メディウム)の派生した先、英語のmedium (ミーディアム)の意味の一つとして霊媒(れいばい)があるんです。とはいえ」


(ひろ)が一拍置いて、口を(とが)らせる。


「複数形が単純に-s付けるだけとされてるのと、向こうの文化的に、西洋のスピリチュアリズム最盛期……十九世紀(なか)ば頃から、(はく)付けのために使用されたという可能性が(いな)めません」

(はく)付け」

「簡単な話だよ、織歌(おりか)ちゃん。語彙(ごい)として存在するけど普段使わない言葉って、()()()()()()でしょ」


思わず繰り返した織歌(おりか)に、直人(なおと)があっさりとそう言った。


「よくさ、小説とかアニメとかの呪文の詠唱の言葉で(なんじ)って二人称使われるでしょ。でもあれ、古語として考えると、御前(おまえ)よりも敬意がこもってないわけ。でも、現代の日常会話で御前(おまえ)は使われても(なんじ)は使われない。だから、(なんじ)の方が()()()()()()()()()()()()()()()()わけ」

「その(なんじ)も、もとは汝貴(なむち)ということで、敬意がないわけではないですけど、意外と敬語に込められた敬意って時限性があるというか、()り切れていくというか、手垢(てあか)がつくというか……頻繁(ひんぱん)に使うと特別感と共になくなるっぽいんですよね。しかし、(なんじ)の場合、(なれ)()はまだあるけど、(まし)系はどこに行ってしまったのか……」

「それ、どっちかというと、(なんじ)役割語(やくわりご)的に現代の語彙(ごい)に取り込まれたからじゃない? 役割語(やくわりご)的には(なんじ)って古めかしい、仰々(ぎょうぎょう)しい、儀式めいてる二人称の呼びかけってところでしょ」


(ひろ)直人(なおと)も人の事は言えない。

そう思いながら、織歌(おりか)は思いっきり脱線した二人の会話を聞いていた。


なかだち

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