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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-2 肝試しと大掃除 side B
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4 日向の橘の小戸の阿波岐原


「やっぱりさ、俺が見張っとくべきだった、とオジサンは思うわけよ」

「えー、でも窓口役な割に、そっち方面ダメダメじゃないですか、(なお)さん」


(むか)えの車内で(ひろ)から事の顛末(てんまつ)を聞いた運転手、正木(まさき)直人(なおと)が言うと、助手席の(ひろ)がずばりと一刀両断する。

された側の直人(なおと)は、そのやたらとうっかりその筋にも見えそうな、ガタイのいい身体(からだ)を少しばかり(ちぢ)こめて口を開いた。


「そりゃ、オジサン、単に顔が広いだけのしがない一般人ですからねえ……だからこそ、君たちみたいなうら若いお嬢さん達を夜にこうして()り出すのには申し訳なさがあるわけよ。でなきゃ、いくら紀美(きみ)くんに持ち込んだからって簡単には車出さないよ」

「と言いつつ、(なお)さんに送り(むか)えしてもらったの、両手両足で足りないぐらいに思いますけど」


正木(まさき)直人(なおと)

紀美(きみ)の数少ない一般人の友人で、なんなら同級生らしい。例に漏れず面倒見はとても良い。

紀美(きみ)が動く案件は同業者からお(はち)が回ってきたもの、最初から紀美(きみ)が巻き込まれたもの以外は大体、この直人(なおと)を経由して頼まれたものであることが(ほとん)どだ。

ロビン(いわ)く、仲介料取ったり、中抜きしたりしない善意の(かたまり)、そこは保証できる、とか。

ちなみに(なお)さん呼びは、紀美(きみ)直人(なおと)(なお)くん呼びしているせいである。


まあ、そういう馴染(なじ)みの人なので(ひろ)容赦(ようしゃ)がない。

織歌(おりか)としては、まだ距離感を(はか)りかねているところがあるので、とりあえず大人しく後部座席で揺られている。

()()()は満足したらしく、あの後、自分が起点にしている()に引っ込んでしまい、姿を見せていない。


「まだ今回はマシな(やから)ってだけで、次同じような事があったら、やっぱりオジサン、見張りに立つわ」

「いや、それで(なお)さんに被害がいったら、それはそれでめんどくさいんで、マジでいいです。先生も珍しく怒ると思いますし」


鋭さとしても(ことわ)りとしても遠慮の一切ない返しを(ひろ)がすると、直人(なおと)は肩を(すく)めた。


「でもさ、俺、一応前に紀美(きみ)くんからは、そうそう変な事にはならないよって言われてんだけど」

「えー、それって根拠はなんなんです?」


それを聞いて、あ、と織歌(おりか)は思い当たる。


「いや、紀美(きみ)くん、そこまでは言ってくれなくてさ」

「名前、特に使われてる音や漢字、じゃないですか、(ひろ)ちゃん」


先程(さきほど)会った四人組の内、先行した二人が(あや)うそうと織歌(おりか)が判断した基準は、その実、名前だったからだ。

その観点から言えば、直人(なおと)という名前はあの二人の真逆なのである。


「……あーなるほど、(なお)がそうってことです?」

「はい。先程(さきほど)のあの四人の内、先行した津曲(つまがり)さん、勾田(まがた)さんのお二人はどちらも名前に()()の音が(ふく)まれていたので、危険だなと私は思ったのですが」

「あのね、二人ともね」


赤信号で車が止まり、慣性の法則のままに少しばかり身体(からだ)が揺れる。


「できたら、専門家じゃないオジサンにもわかるように話して……」


少しばかりわざとらしく()ねたように言う直人(なおと)に、(ひろ)が仕方ないなあ、と言うようなため息をついた。


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