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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-2 肝試しと大掃除 side B
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2 起きながらの寝目

ぶち、ぶっちん、ぐちゃり、ぐちょ。


そんな、この場では霊能力者二人にしか聞こえない、肉厚(にくあつ)さと湿(しめ)り気を感じさせる音を立てながら、()()()織歌(おりか)の腕にまとわりついた触手を食い千切(ちぎ)ってはその内腑(ないふ)に収めていく。

いや、織歌(おりか)としても、()()()五臓(ごぞう)六腑(ろっぷ)がちゃんとあるのかはよくわからないけれど。

とりあえず、()()()が減らすたびに、織歌(おりか)微睡(まどろ)むような(ゆめ)(うつつ)の感覚は、比例するように(うつつ)に寄っていく。


「うーん、視覚と聴覚が釣り合わない……もうちょっと優雅に食べません?」

織歌(おりか)が引き受けた時点で(おれ)が食らうへひ(べき)と確定してはいる。が、その分、(すみ)やかにことを運()ねば、織歌(おりか)が割を食う()けだが?〉


つっこんだ(ひろ)に対して、もちゃもちゃと(ふく)らませた白い(ほほ)を動かしつつも、()()()はそう言う。

ところどころ聞き取りにくいのはご愛嬌(あいきょう)、である。


「そういえば、皆さん、帰られました?」

「ええ。ついでに戻って来たらケツ蹴飛ばしちゃるって言っておきましたんで、大丈夫でしょう、あの一番どうしようもなさそうな津曲(つまがり)とかいう奴も」


(ひろ)は普段から割と(くず)れ気味の敬語だが、その実、中身はかなり(たくま)しく切れ味も(するど)い、と織歌(おりか)は思っている。良く()いだ(なた)みたいな感じだ。

というか、意外と(とが)っているので、ケツを蹴飛ばすという発言にも驚きはしなかった。

兄がいるからか、年上の男性に(おく)すことのない(ひろ)なら言うし、実際やる。


「そういえば、私、津曲(つまがり)さんとは一切会話してませんね」

「しなくていいですよ、あんなミーハー軽薄男。あわよくばナンパしてきますから」


げえっと言わんばかりの表情を浮かべるのは、そういう事なんだろう。

自分が(はかな)げな往年の少女漫画チック((ひろ)談)なタイプなら、(ひろ)はきりっとしたカッコイイできる女風の(りん)とした美人である、と織歌(おりか)は思うので、ナンパされるのもさもありなん。


勾田(まがた)さんは大丈夫でした?」

「ピンピンしてましたよ、懐疑心から()みつく程度に。そもそも無理にひっぺがしたっても、織歌(おりか)がひっぺがすなら綺麗にはがれますよ。単純にひっぺがすのではなく、吸引しながらひっぺがす、みたいなもんなんですから」


織歌(おりか)は本来、軽度の不幸体質である。なお、この場合の「軽度」は「体質」にかかるのではなく、「不幸」にかかる。

周囲が軽い気持ちで気の毒に、と思うような不幸ばかり、織歌(おりか)には起きるのだ。


鳥の糞害は序の口として、開けはなされた窓から飛び込んできたボールが大小さまざま何発当たったことがあるか。雨の日に決まって大きな水たまりを通過する車に何度水を浴びせられたか。


結果として、(はかな)い(他称)見た目にそぐわず、(したた)かになってしまった。

ただ、それは紀美(きみ)いわく、織歌(おりか)自身が周囲の不幸を寄せ集める上にそれを軽減して受け流す、避雷針(ひらいしん)みたいな特異点的力場になってるからとしか考えられない、らしい。


そんな、不運な事に対する吸着力はピカイチと太鼓判(たいこばん)を押されている織歌(おりか)がいれば、並大抵の害意とか敵意とか(けが)れとか全部、織歌(おりか)のもとに集まるのである。


ただし、強い意思や条件があるもの、ある種の必然の帰結はそれに限らない。


今、織歌(おりか)の左腕を陣取っていて、順調に()()()(たい)らげつつあるそいつがまさしくそうである。


寝目いめ

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