表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-2 肝試しと大掃除 side B
64/209

1 もぐむしゃタイム

読解編

織歌(おりか)はふわふわとした(ゆめ)(うつつ)のまま、壁に寄りかかってぼうっとただ目の前を見ていた。


織歌(おりか)


その(ゆめ)(うつつ)の霧のようなふわふわとした非現実感を切り()(ひろ)の声にそちらを向く。


(ひろ)ちゃん」

「……うーん、いつ見ても見ていいものじゃない感があるんですよね」


今、織歌(おりか)の左腕には、少なくとも織歌(おりか)の目には赤みを()びた黒の、みっちりとスライムのような粘性のある液体で満たされた細長い袋とか、バルーンアートの細長い風船のようなもの――あるいは触手っぽいものがぐるぐるとまとわりついていて、そしてその端をひっぺがしながら口に運ぶ()()()の姿があった。


〈こいつ、はらひ(がし)にくい〉


射干玉(ぬばたま)の、という枕詞(まくらことば)もかくやという美しく地を()う長い黒の髪に浮かび上がるような白い顔。

その小さな口で、触手っぽいそれをぶちりとその見目にそぐわず豪快(ごうかい)に食い千切(ちぎ)って、もちょもちょと咀嚼(そしゃく)しながら、()()()は眉根を寄せて(うった)える。


「たぶん、無理矢理ひっぺがしたからだと思うんですけど……」

織歌(おりか)、まだその(あた)りは慣れてないんですから、わたしに任せてくれればいいのに」

織歌(おりか)、腕上げてくれ〉


織歌(おりか)()()()に言われた通り腕を少し上げると、()()()は引っぺがすことを(あきら)めたらしく、直接その触手っぽいものにかぶりつき、またぶちりと()千切(ちぎ)る。

ちなみに感触としては、触手っぽいのは氷みたく、ぞっとするように冷たい。

逆に()()()の肌は夏場の木陰(こかげ)のせせらぎに足を突っ込んだような、(さわ)やかで清涼な冷たさがある。


「うーん、やっぱり、こう、すごい絵面(えづら)……」


ぞろりと長い黒髪に白玉の肌、白の(ひとえ)に緋色の切り(ばかま)、うっかり千早(ちはや)と見間違える人も多そうな小忌衣(おみごろも)、という如何(いか)にも清浄にして、時代がかった格好の()()()である。

にもかかわらず、本人はまったく無頓着(むとんちゃく)に、触手っぽいもの――織歌(おりか)が引き受けた(けが)れの可視化されたものを豪快(ごうかい)()千切(ちぎ)り、食い千切(ちぎ)り、もちゃもちゃと頬袋(ほおぶくろ)(ふく)らませたハムスターのように口いっぱいに頬張(ほおば)って咀嚼(そしゃく)している。


織歌(おりか)は見かけは(はかな)げな雰囲気を(まと)っている可憐なタイプであると自覚はしている。

そして、どうやら自覚している以上に(したた)かさとのギャップはすごいらしい……というのは置いといて。


そんな織歌(おりか)に(便宜上)()いている()()()はそもそも人ならざるものであって、織歌(おりか)たちが師事する紀美(きみ)いわく、分類的には分御霊(わけみたま)的な何かになるんじゃないかな(困惑)、らしい。

紀美(きみ)の言い分がそんな曖昧(あいまい)模糊(もこ)とした歯切(はぎ)れの悪いものになるのも、それはそれで理由はあるのだが、それもさて置き。


何も気にせず、見た目に反して、やや粗暴(そぼう)だったりコミカルだったりな挙動を取っていようと、織歌(おりか)のそばを離れぬこの人ならざるものは、魅力と呼ぶには(あや)しすぎる()きつける美しさを持っている。


「ん……」

〈すまん、歯が当たったな〉


なので、(ひろ)の言うところのすごい絵面(えづら)というのは、なんとなく背徳感を感じるような、その内実はともかくとして、美しくて(あや)しくて(はかな)げでありながらグロテスクを(ともな)った、一種耽美(たんび)的な様相を(てい)しているのである。


なお、織歌(おりか)にとって兄弟子(あにでし)であるロビンは最初目撃した時に、何をのぼせ上がったのか鼻血を出していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ