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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-1 肝試しと大掃除 side A
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13 完全など世にはない

「でもさ、唐国(からくに)ちゃん、学部・学科が問題なら卒業したらいいわけ?」

「いや、それだってわたし肯定してないですし、それだけに限らないんですけど……」


げんなり、と(ひろ)の顔に書いてあるのが悠輔(ゆうすけ)には見えた。


恭弥(きょうや)、大人しく言うこと聞いとけよ。学部・学科は履歴書書く以上ついて回るから、事実上一生ついて回るもんだろ」


見かねて、そう助け舟を出すと、恭弥(きょうや)は、あー、と納得の声らしきものをあげた。

もう少し考えてほしいものである。


「ありがとうございます。そういうことですし、それ以外にもありますが、これについては口が裂けても言いません」

「じゃあ何、一生気を付けろっていうの? こっちには霊感なんてないのに」


深雪(みゆき)(くちびる)(とが)らせて言った。

(ひろ)の顔に浮かんだ、げんなりの文字が、よく文字色を虹色にされがちなポップな字体と思えるほど強烈になる。

これは、ああ言えばこう言う、と思われてても仕方がない。


「だから、自分から首を突っ込むなとだけ言ってます。言っときますけど、わたしは別に暗に仕事増やすなっつってんじゃないんですよ。むしろ、基本収支でいえば赤字寄りですから、増やされるなら、(もう)けとしては、それはそれなんですよ」


聞いてて、なんかこう、世知辛(せちがら)い。

とても、世知辛(せちがら)い。身につまされる。


()けられる命の危機ぐらい自分で避けろと言ってるんです。君子(あや)うきに近寄らず。それぐらい大学に入る程度の頭があれば、ご存知(ぞんじ)でしょう。その時に運良くわたし達のような者がいるとは限らないわけですし」


きっぱりと(ひろ)はそう言った。

悠輔(ゆうすけ)としては納得しかないし、反論をする余地もない。


「そう言われりゃそうだけど……そっちの二人には言わねえの?」


恭弥(きょうや)の言葉に(ひろ)は盛大なため息をついた。


「それこそ言うに(およ)ばずなんですよね。あなた方二人がいなければ、藤代(ふじしろ)さんも島田(しまだ)さんもここには来なかったわけですし、あなた方のようなクリティカルな属性も持っていないので」


これは流石(さすが)に二人とも旗色(はたいろ)が悪いと思ったらしく、気不味(きまず)そうにしている。


「ああ、そうだ」


やや不機嫌が(ふく)まれた声を(ひろ)が出す。


勿論(もちろん)、今回の件を吹き込んだという先輩ですが……安全性という点をクリアするなら、縁切るのが一番手っ取り早いでしょうねえ」


どうやら、(ひろ)恭弥(きょうや)を詰めた結果、あの先輩達の内、誰かから吹き込まれたということを聞き出したらしい。

しかし、まあ簡単に言ってくれるものである。


「まあ、交友関係とリスクを天秤に掛けた上で、己のリスク管理方針に(のっと)っていいようにしてください。そこまでわたしは面倒は見ません」

「あ、そこ絶対ではないんですね……」


都子(みやこ)がそう言うと、(ひろ)は軽く肩を(すく)めてみせた。


「だって、どっちにしろ(わずら)わしいには変わりありませんし、それによって不利益を(こうむ)るのも確か。であれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。簡単なYES/NO(する/しない)の二項対立でわたしが結論を出せるものではない以上、ご自身の中でのリスクの許容度他諸々(もろもろ)を天秤にかけてもらうのが一番です」


――完全な正解も、完全な安全も、この世に存在しないのですから。


その言葉には何故だか、いやに実感が乗っていた。


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