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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-1 肝試しと大掃除 side A
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10 四階の幽霊

「まあ、人類という種がここまで繁栄できた一端にはおそらくあなた方のような、自身の好奇心に任せて突き進むタイプの人間によって取れたデータの積み重ねがあったんでしょう。だとしても、今この時に必要なものではないんですよ」

「うっ……」


(ひろ)の強烈な皮肉を含んだ言葉の刺々(とげとげ)しさに、(はた)で聞いている悠輔(ゆうすけ)もちょっと胃がきりきりしてきた。

都子(みやこ)も何の覚悟もなしに梅干しを食べた時みたいな表情をしている。


「な、なんでそこまで言われなきゃならないわけ?」


何も覚えていないらしい深雪(みゆき)だけが()みつくが、(ひろ)が盛大なため息をつく。


「わたし、さっきも言いましたよね? 織歌(おりか)が大丈夫でなかったら、あなたのせいだって。憑依(ひょうい)されて意識飛ばしてた人間がまず文句言うことじゃないんですよ」

「そもそもあんたたちが霊能力者って証拠もないじゃない! 詐欺師とかさ」

勾田(まがた)さん、俺と島田(しまだ)さんがそこは保証するよ」

深雪(みゆき)、さっき明らかに様子がおかしかったもん。賢木(さかき)さんが対処してくれたから元に戻ったとしか思えない」


見かねて悠輔(ゆうすけ)はそう言えば、都子(みやこ)(うなず)いて口を出す。

さっきの深雪(みゆき)は明らかにおかしかったし、深雪(みゆき)自身がそれを覚えていないこともおかしい。

そう言われれば当の本人も記憶の()けがあるせいか、不服そうにではあるが口を閉ざす。


「援護射撃、ありがとうございます。で、そこのすっとこどっこいは何を隠そう、三階女子トイレまで逃げてきて、残滓(ざんし)しかないのに腰抜かしてるところをわたしが対応しましたので」

「あー、言わないでくれって言ったのに!」


恭弥(きょうや)の叫びを(ひろ)(あき)れたように黙殺している。

都子(みやこ)深雪(みゆき)も、引いた視線を向けている。悠輔(ゆうすけ)もちょっと引いた。

何度目かのため息をつきつつ、(ひろ)は非難の眼差しを(ゆる)めることなく口を開く。


「まあ、聞いた話を総合しますと、一番やっちゃダメな属性をお持ちのお二人が、しっかり話を知るというブースターを持った上で()()()()()のが原因としか言いようがないんですよ。なので、お二人とも自業自得。今回は()()()()わたし達がいたから、助かったものと思ってください」


たまたま、に相当強いアクセントをつけながら、(ひろ)ははっきりと言い切った。


「……あの」


悠輔(ゆうすけ)が少し気になって声を上げると、(ひろ)恭弥(きょうや)達に向ける視線よりも柔らかい視線を向けて続きを(うなが)してくる。


「ちょっと気になったんですけど」

「はい、知って問題なさそうな範囲であれば答えますよ」


今まで逐一(ちくいち)指示に従っていたからだろうか。

(ひろ)のその声は優等生に対する先生のものにも似ていた。


「四階の幽霊の噂ってなんですか?」

「よくある怪談ですよ。この廃墟の四階に幽霊が出るっていう。わたしからはそれ以上の説明はしません。それ以上の認識をされても困りますんで……まあ、噂らしくバリエーションは多岐(たき)に渡るとだけ言っておきましょう」


少しばかり歯切(はぎ)れの悪い言葉で(にご)される。

悠輔(ゆうすけ)が次の質問を口にする前に、都子(みやこ)が口を開いた。


深雪(みゆき)が、その、唐国(からくに)さんの言うところの憑依(ひょうい)されてたのは、どうしてですか?」

「んー、それは知っていた噂が憑依(ひょうい)されるパターンだったからですね」


ここまでの話を聞いて、悠輔(ゆうすけ)の中の違和感が言語化に辿(たど)り着いた。



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