表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-1 肝試しと大掃除 side A
58/209

9 竹屋の火事

「ああ、はい、もう入っても大丈夫です」


その顔色が先程よりも白く見えるのは気のせいじゃない、と少なくとも悠輔(ゆうすけ)は思った。

そっと部屋に入れば、ぽかんとした深雪(みゆき)がこちらを見てくる。


「……藤代(ふじしろ)? 都子(みやこ)? え、何? ちょっと何が起きたの? というかこの子、誰?」


きょときょととそう言う深雪(みゆき)の仕草を見ていて、これは説教を喰らった方がいいやつだ、と悠輔(ゆうすけ)は思った。

まるで反省の色がない。

ちらりと都子(みやこ)の方を(うかが)えば、都子(みやこ)は冷めた目で深雪(みゆき)を見て、ため息をついた。


「……深雪(みゆき)、その子、賢木(さかき)さんにあなた助けてもらったのよ」

「助けて? なんで?」


都子(みやこ)の目が完全に冷えきった。

織歌(おりか)は顔色が悪いまま、どこかぼうっとしている。


賢木(さかき)さん、大丈夫?」

「……あ、はい。大丈夫です」


いくら織歌(おりか)がおっとりしているとはいえ、一拍遅れて答えが帰って来たところを見ると、あまり大丈夫ではなさそうだ。

早く階下の(ひろ)と合流させてあげた方が良いだろう。

そう考えていると、廊下の方から声が聞こえてきた。


「ほーら、きびきび歩く! 尻尾(しっぽ)巻いて逃げ出したツケぐらい払いなさい!」


どこの鬼教官かというような(いきお)いで、(ひろ)にせっつかれた恭弥(きょうや)が転がるように部屋に入って来てへたりこむ。

ひえっと少し情けない声を出していたのは、相当(しぼ)られたからだろうか。

大学デビューを機に染めた金髪とその軽薄さで、よくあるチャラい男にしか見えないのだが、こうしているのを見るとホラー映画の最初の方の犠牲者みたいだな、という感想が悠輔ゆうすけの頭に浮かぶ。


「か、唐国(からくに)さん……」

「どうも。事が終わったようなので、ちょっとばかり無理矢理に来ました」


恭弥(きょうや)の後ろから入って来た(ひろ)が、じっとりとした目つきでそう言い切った。

そして、織歌(おりか)の方を見ると、片眉だけで眉間にしわを作るという少し器用な、でも良くはないが最悪ではない状況であると一目でわかる表情をする。


「……あー、まあ、そうなるか。そうなるのか、うん。そこのすっとこどっこいに聞いた内容合わせると、うん」


すっとこどっこい。

そう言われた恭弥(きょうや)は不服そうな顔をしつつも、気まずそうな顔をしている。

やっぱり相当(しぼ)られたようだ。

何かを納得したらしい(ひろ)はすたすたと織歌(おりか)の元へ歩み寄る。


織歌(おりか)、大丈夫です?」

「……ええ、はい」

「あ、うん、わかりました、わかりました。こっから先はわたしに任せて大丈夫です」


すみません、と(うめ)くように口にしながら、ふらふらと織歌(おりか)は廊下へと出て、どこかへ向かって行った。

それを止める事なく、見送った(ひろ)は、さて、と言って主に恭弥(きょうや)深雪(みゆき)に向き直った。


藤代(ふじしろ)さんと島田(しまだ)さんについては言いたいことは言わせていただきましたし、情状酌量じょうじょうしゃくりょうの余地がないとは言えませんから、いいです」

「はあ? さっき俺、散々詰められたじゃねえか!」


恭弥(きょうや)の反論に(ひろ)が絶対零度の眼差(まなざ)しを向ける。


「まず、津曲(つまがり)さんについては言い切ってません。それからそちらの勾田(まがた)さんには何も言えておりませんので」

「え、何なの。というかさっきの子は大丈夫なの……?」


悠輔(ゆうすけ)はぎりっと(ひろ)が歯を食いしばった音が聞こえた気がした。


「ここの持ち主に依頼された所謂(いわゆる)ところの霊能力者です。あと、彼女が大丈夫じゃないとするなら、あなたのせいですからね?」


まあ、大丈夫ですけど、と付け加えるあたりに、(ひろ)織歌(おりか)の間の信頼関係が()けて見える。


「取り急ぎ、名前は教えますよ、勾田(まがた)さん。本日三度目ですけど。わたしは唐国(からくに)(ひろ)、さっき出てったのが賢木(さかき)織歌(おりか)


腰に手を当てた(ひろ)はじっとりと釣り上げた絶対零度の視線で、恭弥(きょうや)深雪(みゆき)(にら)みつけた。


「まず、そもそもとして、勝手に廃墟に入るのは不法侵入ですが、それ以上に、あなた方お二人は()()()()()()()()()()上で独断専行しましたね?」


そう(ひろ)が言うと、恭弥(きょうや)深雪(みゆき)(ひろ)から視線を()らした。


津曲(つまがり)さん? さっき認めましたよね?」

「ひっ、はいっ、知ってました!」


(ひろ)にそう言われて恭弥(きょうや)がびくりと震える。

さっきまでどんなお説教をされていたのか、ちょっと怖いもの見たさで知りたくなる。


竹屋の火事:怒ってぽんぽん言う様

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ