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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-1 肝試しと大掃除 side A
56/209

7 vacuum


風が吹き止むと同時に、脇の部屋に飛び込んだ(ひろ)がひょっこりと姿を現す。


「はー、気持ち悪かった……お二人は大丈夫です?」

「あ、はい」

「う、うん、大丈夫、です」


――気持ち悪かったって、それだけで済むんだ。

最初、(ひろ)織歌(おりか)にマイペースすぎると言っていたが、(ひろ)も比較的マイペースなんだな、と悠輔(ゆうすけ)は感じ始めていた。


同時に、あの不安感に納得する。

ド天然マイペースの織歌(おりか)と、高性能マイペースだろう(ひろ)に大丈夫と言われたところで、説得力が感じられなかっただけの話だ。


織歌(おりか)、このまま四階に行ってもらっていいですか? こっちで保護できたのは一人なので、おそらくもう一人は四階に」

「わかりました。お二方もお願いします」


とはいえ、こうしてテキパキと指示をされると、この二人が専門家であることに説得感が生まれる。


「あの……」

「ああ、四階にいるのは勾田(まがた)深雪(みゆき)さんの方です。津曲(つまがり)恭弥(きょうや)さんは保護してるので、これからお説教(けん)抜かした腰を直してきますんで」


そう言って、身を(ひるがえ)した(ひろ)はとっとと向こうの端の方に行ってしまった。

一方、織歌(おりか)(すで)に、さっき来た階段の上りの方に向かっている。


賢木(さかき)さん、唐国(からくに)さんは」

(ひろ)ちゃんなら、大丈夫ですよ。三階はもう(ひろ)ちゃんだけで大丈夫なぐらいに安全ですし」


軽く振り返ってそう言いながら、織歌(おりか)は階段を上る足は止めない。

このまま置いて行かれるというのは、あまりにも怖いので、悠輔(ゆうすけ)都子(みやこ)は一度顔を見合わせてからその後ろに続く。


「……あの、賢木(さかき)さん」

「はい、なんでしょう」


沈黙を(やぶ)ったのは都子(みやこ)だった。


「さっき何か言ってたのって」

「ああ、あれですか。先生が作ってくださった()()用の呪文みたいなものです」


私達、という言葉が悠輔(ゆうすけ)には少しばかり引っかかった。

さっき一瞬だけ見えた黒い髪の人影を指すのか、(ひろ)を指すのか。

ただ、都子(みやこ)もあの人影を見たのかはわからないし、下手に言って怖がらせるのも気が引ける。


そう、所詮(しょせん)悠輔(ゆうすけ)はヘタレの意気地なしなのである。自分で思ってて悲しいけど。


(ひろ)ちゃんは最終兵器(リーサルウェポン)なんて言いましたけど、どちらかというと私、掃除機なので」

「掃除機」


思わずといった様子で都子(みやこ)が繰り返す。

悠輔(ゆうすけ)としては、掃除機に霊的現象といえば、ゴーストをバスターする古い映画とか緑の弟のマンションのゲームが脳裏をチラつく。

新しい映画の方だと掃除機要素がなくなったみたいな事を聞いた気もする。


そうしている内に、三人の足は四階の廊下を踏んだ。

気のせいか、少し空気が冷たく、どろりと重くなったように感じる。

イメージはそう、小学生の時に作ったりもしたスライムである。


「ああ、そうでした」


織歌(おりか)がそう声をあげた。

完全に言い忘れていたという(てい)である。


()()()()()()()、なんにも心配しないでくださいね?」


振り返ってにっこりと笑いながらそう言う織歌(おりか)に、ああ、特に何もなしで終わるわけじゃないんだな、と悠輔(ゆうすけ)は思った。


vacuum:(英名詞)空、真空または(羅形容詞)空の中性形単数

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