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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-1 肝試しと大掃除 side A
51/209

2 前途、遼遠……?

とん、とん、という小さな足音を立てて、ひょい、と踊り場から懐中電灯と共に顔を出したのはセミロングの少しクセのある髪の少女だった。


(ひろ)ちゃん、どうしました?」

「招かれざる客です」

「あら~」


どこかふわふわと可愛らしい見かけに(たが)わず、少しのんびりとした印象を(いだ)かせる声で言って、ぱたぱたと小走りに階段を()け下りる。

服装は廃墟だからか、(ひろ)と同様にボトムはスキニージーンズにウエストポーチ。

だが、無造作に丸首Tシャツにパーカーを羽織(はお)っている(ひろ)と違って、ボートネックのTシャツに薄手のカーディガンを羽織(はお)り、一番上のボタンだけ()めている。


「お顔、真っ青ですけど、大丈夫ですか?」


毒気を抜かれる、とはこういう事なのだろうか。

なんというか、たぶん(ひろ)よりも、この子の方がだいぶ育ちが良くて、だいぶこう、可愛らしいというか、小動物感さえあるのに、この状況下で余りにも平然とし過ぎていて、少しも(おのの)く様子がないというのは、まるでこれが当たり前のような、変な錯覚(さっかく)を起こしそうになる。


「えっ、あ、はい」

「だ、大丈夫です」


そのやりとりを少しばかり胡乱(うろん)の乗った目で見ていた(ひろ)が、はあ、とため息をついて、彼女の肩をつついた。


織歌(おりか)、いつもながら、マイペース過ぎですよ」

「あ、はい、すみません。私、賢木(さかき)織歌(おりか)と申します」


そう言って、ぺこりと織歌(おりか)は丁寧にお辞儀する。


「あ、藤代(ふじしろ)悠輔(ゆうすけ)、です」

島田(しまだ)都子(みやこ)、です」


警戒心というものが馬鹿らしくなるような印象を(いだ)いたのは悠輔(ゆうすけ)だけではないらしく、都子(みやこ)(ひろ)の時よりは警戒が薄い。


「さっき、一応わたしから離れないように言いましたけど」


(ひろ)がきょろきょろと(あた)りを見回しながら口を開く。


織歌(おりか)から離れない方を第一にしてください。物理的にはわたしの方が強いですけど」


――霊的には織歌(おりか)ほどの最終兵器(リーサルウェポン)はそうそうありませんから。


二階から五点接地法を使って飛び降りてきた自称霊能力者の口から、なんかとんでもない言葉を聞いた気がした。


「なんて?」

織歌(おりか)ほどの最終兵器はそうそうありません」


同じことを繰り返した(ひろ)の横で、織歌(おりか)が若干どやっと得意げな顔をしている。


「さっき、わたしが飛び降りた時、おとりしてたって言いましたけど、わたしの役目、誰かを逃がすためじゃなくて、()()ですから」

「はい、お(かげ)でさっきのは、()()()といっちゃいました!」


織歌(おりか)のオノマトペがおかしい気がするが、なんかだんだんツッコんだら負けな気がしてきた。

ちらりと都子(みやこ)を見ると、都子(みやこ)悠輔(ゆうすけ)と似たような感情を乗せた視線を返してきた。


――霊能力者というのは信じてもいいけど、この二人、どうにも不安だ。


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