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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
3-1 肝試しと大掃除 side A
50/209

1 1/4信3/4疑


――いやあ、なんとも。


「間が悪い」


降ってきた人影はきっぱりとそう言い切った。

悠輔(ゆうすけ)が恐る恐る向けた懐中電灯は、よくあるスニーカーと黒いスキニージーンズに包まれてウエストポーチを背側に回した下半身を浮かび上がらせる。

そのまま、懐中電灯を持ち上げて行けば――


「あっ、ちょ、(まぶ)し、(まぶ)しいです、やめて!」


めちゃくちゃ(まぶ)しそうに手で顔を(かば)う、同年代だろう黒髪のウルフヘアの女性の顔があった。

こんな廃墟で五点接地法をしたぐらいなので、多少(ほこり)(まみ)れてはいるが、整った顔立ちをしてる方だろう。

そのスレンダーな胸元で、銀のスティックタイプのホイッスルが懐中電灯を反射して揺れている。


(まぶ)しいっつってんでしょう! 不法侵入で(うった)えんぞ!」

「す、すんません」


(ほう)けてしまっていた悠輔(ゆうすけ)はそう言われて、はっとして懐中電灯を下ろす。

巻き込まれて一緒にへたり込んでいた都子(みやこ)は当惑の表情を悠輔(ゆうすけ)に向けた。


「あ、一応、()()は持ち主から依頼を受けてるので、不法侵入ではありません。悪しからず……大方(おおかた)肝試(きもだめ)しですかね?」


困るなあ、と彼女は大仰(おおぎょう)にため息をついた。


「で、ですよねー」

「わかってるなら何故来るんです?」


持ち主からしたら肝試(きもだめ)しにくる(やから)はやっぱり迷惑なんだなと思って口をついた言葉を聞いて、月明かりに照らされた彼女は目を細めてぶっとい(くぎ)を打ち込んでくる。


「あの、えと、もう、一組、先に入った人達がいて……ええっと、私達、大学の同じサークル仲間で……」

「……なるほど、(すで)にそのもう一組が入ってしまったので、なまじ置いても帰れず、かといって最初から全く付き合わないのも、その後が怖いってやつですか。はは、田舎(いなか)のご近所付き合いみたい」


どもりながら都子(みやこ)が説明すれば、その裏まで十二分に読み取った彼女はうんざりした顔で皮肉った。


「まあ、いいです。いるならいるで仕方ない。先生だってきっとそう言うはず……うんきっとたぶん」


そう言って一つ(うなず)いた彼女を前に、悠輔(ゆうすけ)はなんとか立ち上がって、都子(みやこ)に手を貸して立たせる。


「まあ、ここがどういう場所かご存知で、()()は持ち主から依頼を受けた者と言いましたから、ある程度はお察しでしょうが……わたしは唐国(からくに)(ひろ)。まあ所謂(いわゆる)霊能力者ってやつです。で、あなた方は?」

「ええっと、藤代(ふじしろ)悠輔(ゆうすけ)です」

「……島田(しまだ)都子(みやこ)


ふむふむ、と(ひろ)は頷く。


「ま、とりあえず、わたしから離れないようにしてください」

「あの、唐国(からくに)さん……さっきみたいなこと、しないっすよね?」


流石にいきなり二階から五点接地法なんて、常人にできるはずはない。

まして、ここは廃墟で割れたガラスとかもあるのに。

さっき、というキーワードがそれに紐付かなかったらしく、きょときょとと(しば)(まばた)きをした(ひろ)は、凛々(りり)しい顔をへにゃりと笑みに(くず)した。


「ああ、しないです、しないです。()()()()()()()()()()()()()()


その言葉は完全に、何かが()()事を示していた。

ちらりと都子(みやこ)を見れば、彼女の顔色も真っ青だ。

いや、というか、そもそもの趣味で廃墟でいきなり五点接地法をする自称霊能力者に出会うなんて、(あま)りにも確率的に有り得ない。

つまり、さっきの五点接地法も――


「あの、さっき、なんで、二階から……」

「あー、ちょっとおとりしてまして……」


でも、大丈夫です。

そんな風にけろりとして言う(ひろ)に、何がだよと悠輔(ゆうすけ)はツッコミたいし、たぶん都子(みやこ)も真っ青になりながら同じことを考えている。


そうとも知らず、当の(ひろ)はふいっと階上に視線を上げた。


なんなんだ今度は、と悠輔(ゆうすけ)都子(みやこ)が息を潜めると、とん、と階段を降りる足音が聞こえた。


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