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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
2-2 山と神隠し side B
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3 首輪のついた

(ひろ)の問いかけに、踏んだのが爆発物でないと確証を得られたからか、(かす)かにほっとした気配を(ともな)ってロビンは(うなず)いた。


ロビンは文字通り見透(みす)かしてくるが、(ひろ)は気配だけで察している。そこはお互いに能力の差だ。


だからこそ、今回は紀美(きみ)の監視を依頼してきた妹弟子(いもうとでし)である織歌(おりか)に対しては、その裏表のなさに、二人とも甘い対応になっている自覚はある。

なお、紀美(きみ)は裏表がないというより、そもそもとして三次元における二次元でないので裏と表以上に多面的すぎてよくわからん、最早(もはや)正十二面体なのでは? というのが、二人の共通認識となっている。


「まあ、図星をつかれたと言いますか、『まがいもの』と……向こうも向こうで、直接じゃなくて、(たける)くんに対して言い放つとか、負け惜しみっぽかったですけどね」

「なあるほど、向こう的には(ひろ)ちゃんの力は養殖のクセにっちゅうことになるんか」


向こうは自然発生やもんなあ、と(よもぎ)はほうほうと(うなず)いている。

この関西弁を(あやつ)る理解者は、師事こそしないものの、それはそれでアリという柔軟な思考の持ち主なのだ。


「いや、そこは向こうにも矜持(pride)ってもんがあると考えられるから、そうなるでしょ。まして、今回、『古事記』に()するなら伊邪那岐(いざなぎ)黄泉(よみ)の国からの逃走か、大国主(おおくにぬし)の根の国からの逃走でしょ?」


さらっとそう投げ込んだのはロビンである。

一番師事してるのが長いだけあって、反応速度がそもそも速い。そしてイギリス人のクセにその手の知識をしっかり以上に把握しているものだから、こればっかりは頭の出来か、とひろは感じるのだ。

こっちにくる条件として、向こうの義務教育最終学年首席を出されて達成した男なのだから。


「ええ……アレをそう取りますか」

「間違いではなくない? それを呪いと取るか祝福と取るかはヒロ次第でしょ」


困惑する(ひろ)に向けて、ロビンはそう言い切った。

(よもぎ)も、考え考えで口を開く。


「せやねえ、まがいもんっちゅうことは、人であるが(ゆえ)っちゅうことやもんね」

「なる、ほど。そうなりますか」


天然ではないまがいもの、すなわち間違いなく人であるのだから、つまりそのままお前は所詮(しょせん)人であれかし。

理屈としては、納得はいく。

だが、それはそれとして、(ひろ)自身の事情的には死活問題レベルなところがある。


「わたしとしては、別の意味で刺激されそうで……」

「だから、それはヒロの受け取り方次第。何、そんなに呪われたいの?」


そう言われれば、そうではない。

こうして、考えてしまうだけで呪いになりかねないのは重々承知なのだが。

こういう時程、師やロビンの割り切りや頭の回転の速さ、そして軽薄とも言い()えられる適度な不真面目さが(うらや)ましいこともない。

ああ、いやダメだ。ダメなのだ。

鼻先で獣の(にお)いがする。

()()()()()()()()()()()()


「ヒロ」


(ひろ)の耳の奥で、獣の声がしそうになった瞬間、ロビンに肩を(つか)まれた。


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