表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
2-1 山と神隠し side A
35/209

13 もう山へは行かない

「……いやなあ、アイツはもう単純に、頭の作りがおかしいだけやさかい」

「へ?」

「そも、本人が周囲に言われて()()()()自分が変なこと言うとるって気付く時点で、アイツの頭はネジが数本抜け落ちてるんやて」


難しい顔をして(よもぎ)はそう言い(はな)った。


「ロビンくんも(ひろ)ちゃんも、そうするしか手がなかった言うても、アイツのせいで規格外やさかい、弟子にするんはアイツの当然の責任やし。今回も最初はアイツが出張(でば)ろうとして、責任を取れるんかってロビンくんと(ひろ)ちゃんがお説教食らわしはったし……頼んだのうちやさかい、そこはちょっと申し訳なくはあるけんども」

「えええ……」

「アイツ、自分のことには無頓着(むとんちゃく)やし、着眼点とか収集力とか、それを元に組み立てるのがすごいだけで、家系のこと考えればその能力も、まあ妥当(だとう)の範囲やし、それ以外は言うほどすごかないんよね、アイツ、うん」


(よもぎ)(たける)が期待で(ふく)らませた風船に、容赦(ようしゃ)なく言葉の針を()して、割っていく。

いや、太さを考えるとこれは(くぎ)を打ち込まれてるかもしれない。


「というか、いきなり過程すっ飛ばして起点と終点だけで語りだす上に、本人が思っとる起点が他人には山の(ふもと)やのうて中腹やから、あかん。(たける)くんも、あんな男になったら()()()あかんよ?」


なんだか私怨(しえん)がだいぶ混じってそうなその言葉の(いきおい)いに、(たける)(うなず)かざるを得なかった。


「何がムカつくて、何につけても、まずはわかって当たり前やろって(すず)しい顔しとるとこが……いや、これ以上は言わんとこ。流石(さすが)に、これ以上愚痴(ぐち)ったらあかんわ」


鬼気(きき)(せま)ると言うべきにまで(いた)った表情を、(よもぎ)はふっと(ゆる)めた。


「まあ、何にせよ、ロビンくんも(ひろ)ちゃんも無事やし、二人とも(たける)くんが無事に帰れたことに、ほっとしとったよ。特に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って、(ひろ)ちゃんからの伝言や」

「え……?」


何故、(ひろ)がそれを知ってるんだろう。

そう思って(たける)はきょときょとと目を(しばたた)かせる。

その様子を見た(よもぎ)はすぐに口を開く。


「ああ、(ひろ)ちゃんね、さっき言うた通り、まあ、あの子もアイツに規格外にはされてまったんやけど、まあわかりやすく言うなら、使(つか)()とか式神(しきがみ)とかそういうタイプやさかいね、(たける)くんを先に行かせた後の事はそれで知っとるんよ」

「もしかして、あの犬?」


(たける)の脳裏に、あの背後の気配との間に割り込み、駐車場まで走り抜けた時に背中を押すように鳴いた犬の気配がよみがえる。

(よもぎ)がそれを聞いて(うなず)いた。


「なんや、気付いとるんやん」

「ってことは、もしかして、オレ、霊感ってやつが」


ちょっとわくわくしながら(たける)が言うと、(よもぎ)はけらけらと笑いながら手を振って否定した。


「ないない。そうなっとったら、今頃はたぶん(たける)くん、追加検査受けとるはずやわ。人並みに霊感があれば、場所に影響されてそないなることはおかしかないよ。(あこが)れる年頃なんはわかるけどな」


心底面白そうにそう言った(よもぎ)(たける)の肩に手をおいて、にっこりと笑う。


「せやから、こういうんはうちらに任せといて、しっかり地に足付けて安心しいね」


それが(たける)にとってのこの一連の出来事を締めくくろうとする一言であるということに、(たける)はすぐに気づいたけれど、その一言を()()けるだけの材料を何一つ持っていなかった。

それから、(よもぎ)はなんかあったらここに連絡しろ、とメモ用紙を渡すと、病室を出て、ドアの脇で待機していた両親とまた何か会話をしているようだった。


(たける)は病室の窓の外を(なが)める。

例の山の最寄りのこの病院からは当然、(くだん)の山が見える。


「……」


少なくとも、(たける)は、あの山にはもう二度と行かないことを心の中で(ちか)った。


Side Aはここで終わりです。

何割の人が「もう森へなんか行かない」のもじりだとわかると思ってるんだ自分は。

side Bは9/16から予約投稿済みです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ