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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
2-1 山と神隠し side A
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12 人心地ついて


(たける)が次にはっきりと意識を取り戻したのは、病院でのことだった。

気が付いた瞬間に、母親は悲鳴とも歓声とも取れる声を上げて(たける)に抱き着き、父親は涙を(こら)えた表情でただ、それを見て(うなず)くだけだった。

そして、更にそれを見守ったり、(あわただ)しく働く看護師や医者といったギャラリーの中には、(たける)を助けてくれたロビンと(ひろ)の二人は見当たらなかった。


ぼんやりと、アレは夢だったのだろうか、と思いながらいくつか簡単な検査をさせられてからまた病室に戻ると、明らかに看護師でも医者でもない見知らぬ女性が、部屋の前で待っていた。

彼女を認めた瞬間、両親は彼女にしきりに感謝の言葉を述べ、ぺこぺこと頭を下げ始める。


「本当に、ありがとうございます、高里(たかさと)さん」

「いやあ、東野(ひがしの)さんはそう言わはるけど、うちは結局のところ()()()だけやさかい……せやけど、実働隊には伝えときます」


実働隊という言葉に、(たける)は顔を上げて、高里(たかさと)と呼ばれている関西(なま)りの女性を見た。

うっすらグレーがかかったような茶に染めた髪を一つの()()みに(たば)ねた彼女はその視線にすぐに気付いて、微笑(ほほえ)むと口を開く。


「そうそう、(たける)くんが気付いたいうん聞いたんで、ちょい様子見に来たんです。中でええんで、少し、二人きりで話させてもろても?」


その言葉に、両親が顔を見合わせ、それから(たける)の方を見た。


「あのね、(たける)、こちらの高里(たかさと)さん、あなたを助けるために力を貸してくれた人なの」

「だが、その、(たける)、嫌というなら」

「いいよ。話すよ」


父親が続きを言う前に(さえぎ)って、(たける)高里(たかさと)という女性の要求を承諾した。

両親は再度顔を見合わせてから、ドアを開いて(たける)がベッドに上がるまでしっかり見届けると、何かあったらナースコールを押すように念を押しながら言ってから、待っていた高里(たかさと)(まね)き入れて、頭を下げてドアを閉めた。


「はは、(たける)くん、しばらくご両親、過保護やろから、心配かけたらあかんよ」


高里(たかさと)(たける)と二人になると、最初に幾分(いくぶん)(くだ)けた調子でそう言った。


(あらた)めて、(たける)くん、うちは高里(たかさと)(よもぎ)。君のお父さんの伝手(つて)で今回、手ぇ貸したもんや」


よろしゅう、と(よもぎ)がにぱっと笑って手を差し出してきたので、(たける)も手を出して握手する。

その手を(ほど)いてすぐに、(よもぎ)悪戯(いたずら)っ子のようなにやりとした笑顔を浮かべて口を開く。


「さて、(たける)くん、きっと君が気になっとうは、ロビンくんと(ひろ)ちゃんよな?」

「うん、ロビンにーちゃんと(ひろ)ねーちゃんは?」

「おや、随分(ずいぶん)(なつ)かれはったんやなあ、あの二人……まあ、(ひろ)ちゃんはわかりやすく好かれやすいけども」


ロビンくんもいい人やねんけどこう、ガワの目つきがあれやからなあ、と(よもぎ)は両手の人差し指で自分の目の端を()り上げて見せる。

確かにあの目つきの悪さは損をしていると(たける)も思う。


「二人とも、(たける)くんが戻って来て、少ししてから、戻って来はったよ。(ひろ)ちゃんは丁度、(たける)くんが搬送されてったタイミングやったね。せやから、もうだいじょぶって判断して、今は恐らく二人とも車上の人やね、電車やけど」

「そう、なんだ」

「まあ、折角(せっかく)頼ってもろたけど、うちはそもそも得手(えて)は失せ物探しぐらいでな。もともと、二人には無理言うて助っ人してもろてん。特にロビンくんの目ぇは、この界隈(かいわい)でも(かな)うっちゅうんはそうそうおらへんし……いやもともとそうだったのを面白がって、同じ傾向の(やから)がいろんなもんを教えた結果、全部吸収してもうたっちゅう、伝説もあるんやけど」


――完全にあの師にして、この弟子ありな伝説やけどな。

遠い目をして(よもぎ)はそう(つぶや)いた。

(たける)の中でさらに地味にロビンの評価が上がった瞬間だった。


「ということは、ロビンにーちゃんと(ひろ)ねーちゃんの言う先生って本当にすごい人なんだ……」


二人の言っていた感じと、今の(よもぎ)の発言からすると、なんだかすごい人なんだろう。

しかし、(よもぎ)はそれを聞いて、んー、と考えるように、悩むように複雑な表情で腕を組んだ。


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