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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
1-1 逆さまの幽霊 side A
13/209

12 平穏で当然な帰結

「終わりました!」


織歌(おりか)の勢いのよい言葉に、真由(まゆ)は、はっと我に返る。

途端(とたん)、頭の中の(きり)が晴れたような気がした。


「うん、大丈夫」


踊り場に腰掛(こしか)けたまま、身体(からだ)をひねって窓を見やったロビンがそう言う。


「これで、収まるべきようにすべてが収まった」


その声につられて、真由(まゆ)もそちらを見上げた。

窓の外にあった見事な夕焼けは、もう(なか)ばが藍色(あいいろ)(うず)められている。


「終わった、んですか」

「終わったよ」

「はい、完璧(かんぺき)にできました!」


踊り場で窓の前に立った織歌(おりか)が、力強く(うなず)く。

立ち上がったロビンが、真由(まゆ)に手を差し出した。


「遅くまで付き合わせて、悪かったね」

「いえ、お役に立てたのであれば……」


真由はその手を取って、立たせてもらう。

それから、はたと気付いてロビンと織歌(おりか)、それぞれに交互に視線を送った。


「ええっと、こういうのって、やっぱり、言わない方がいい、んですか?」

「……ん、誰彼(かま)わず吹聴(ふいちょう)されるのはイヤだけど」

「そうですねえ、まあ、人の口に戸は建てられませんし、王様の耳はロバの耳なんてこともありますので、まあ、そう(きび)しくどうのというわけでもないのですけど」


ロビンは眉間にしわを寄せ、織歌(おりか)小首(こくび)(かし)げて、それぞれが、あまり言われたくはないが、強制はしないという(むね)を告げてくる。

真由(まゆ)にとっては意外だったが、でも、あんな話を普通信じるかと言われると、信じるはずもないのだから、まあそんなものかと一人納得(なっとく)する。


「わかりました。とりあえずは話さないつもりでいます」

「うん、まあ、それでいいよ」

「ですね」


真由(まゆ)にとってはこの短時間で往復することになった、(のぼ)りより相当暗くなった階段を降りて、恙無(つつがな)く昇降口へ。


「えっとお二人は」


下駄箱の建てつけがうっすら悪い扉を(ひら)きながら問えば、二人は互いに目を合わせてから織歌(おりか)が口を開いた。


「依頼人への報告がありますので、また職員室に向かいます」

「事はキレイに収まったんだから、ケチをつけないよう、しっかり気を付けて帰ってね」


この短時間で、真由(まゆ)にはロビンのそれが表面上よりも面倒見(めんどうみ)の良さが表れた言葉だと理解できる程度にはなっていた。


「ありがとうございます。それでは、お先に失礼します」

「はい、ごきげんよう。もし、(えん)がありましたら、また会いましょう」

「……ない方がいいけどね」


ぺこりとお辞儀(じぎ)をすれば、織歌(おりか)はにこにこと(ほが)らかに言い、ロビンはぽつりとそれに(あき)れたように(こぼ)す。

真由(まゆ)はそのまま昇降口を出て、校門に向かった。

その途中で、ふと校舎の四階を()(あお)ぐ。


藍色(あいいろ)に浮かび上がる背の高い黒く角ばった影。

その空の(あい)が燃えるような夕映(ゆうば)えの赤に染まっていた時間。

そこから飛び降りた、かつての誰か。

それを見た、かつての誰か。


――でも、それは、もう詮方(せんかた)ない、今を生きる真由(まゆ)が思いを()せては()()()()、過去のことなのだ。


そのまま、校舎から視線を(はず)し、真由(まゆ)は校門から帰途(きと)についた。


Side Aはここで終わり。

続きは8/14に投稿されるよう予約済みです(余韻を大事にしたいタイプ)

いや、なろうって英字ルビやっぱ難しいな……(それでも続けるんだけど)

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