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009

 休み時間ももう終わりか。次は国語の時間か。教科書とノートを取り出さないとなぁ。あ、あれ?教科書がないぞ。ノートはあるのに。家に忘れたか?やっちまったなぁ。


「はぁ~、教科書忘れた。どうしよう。」

「ん?小牧君。教科書忘れたんだぁ。見せてあげるねぇ。」

「あ、ありがとう。」


 トュンク。やだ、姫路さんイケメン過ぎ。惚れちゃうわっ。こちらから見せてって言う前に先んじて異変を見つけて、教科書を見せてくれるなんて。


「先生。小牧君が教科書忘れたみたいなんで、教科書見せてあげてもいいですかぁ?」

「小牧が?まぁ、いいぞ。小牧―。今度は忘れるなよー。」

「ごめんなさい。次は持ってきます。姫路さんも、ありがとう。」


 まさかの公開処刑が行われるとは。こっそり教科書を見せてくれるとかじゃなくて、先生に申告するのね。それならそうと先に言って欲しかったよ。心の準備がいるんだよ。頼むよ本当に。




「じゃあ、机くっつけようかぁ。」

「う、うん。そうだね。」

「なぁに?恥ずかしがってるのぉ?」


 あら?姫路さんも分かってるみたいね。姫路さんと机をくっつけるなんて、この高校の生徒ならだれでも恥ずかしがるんじゃないかなぁ?甘い花のようないい香りがするし、何より美少女だからなぁ。健全な男なら意識するでしょ。


「えっ、まぁ。」

「そうだよねぇ。」

「うん。本人に言われるとさらに恥ずかしいけど。」

「?そうなのぉ?」


 そうなのぉ?って、姫路さんよ。それはそうでしょうよ。だって、姫路さんに好意がばれてるのと同義じゃないか。それなのに恥ずかしくないわけがないじゃないか。好意にも種類があるけど、殊更にそこに言及されるのもなぁ。って感じだよ。


「えっ、そうでしょ。本人にばれてるんだよ。」

「それはそうでしょぉ?」

「えっ?そんなに分かりやすいかなぁ?」

「分かりやすいと言うか、自分から言ってたでしょぉ?」


 ?言ってないけど?まさか、無自覚に告白でも?って、んなわけないでしょ。告白した事実を忘れるとは思えないし。そもそも、告白をする勇気なんてないんだし。それにしても、自分から言った、か。何のことだろうか。


「えっ?」

「どういうことぉ?」

「?」

「?」

「まさか。さっきから、姫路さんは何について話してたの?」

「私が大きな声で先生に言っちゃったから、皆に教科書忘れたことばれて恥ずかしい。って言う話だけどぉ?」


 うおぉおおお。恥ずかしい。まさか、話が食い違っているとは。でも、確かに一番最初に教科書忘れたって呟いてるけどね。教科書忘れたってことを公開されるのも、恥ずかしかったけどね。それにしても、恥ずかしい。


「道理で。話が食い違ってたみたいだね。」

「そうなの?小牧君は何について……?」

「あっ。」

「へぇ、そう言うことぉ。ふふふ。」

「あー、無駄なこと言った。」


 あー、これは完全に墓穴掘りましたわ。そりゃあ、話が食い違っているって言ったら、相手から何の話してたのって言われるよな。それを自分から言うのも恥ずかしいが、相手にばれる方が恥ずかしいんだなぁ。一つ学んだよ。


「ふふふ。なんだか熱いねぇ。」

「意外だね。」

「何がぁ?」

「姫路さんも照れるとかあるんだって。」


 そう。意外だ。姫路さんが顔を真っ赤にして照れる姿何て、想像することもできなかった。想像しようなんて思ったこともないくらいに、あり得なさそうなことだった。でも、確かに姫路さんも照れることもあるよなぁ。

 しかし、レアな姿を見た。姫路さんを照れさせるなんて、そうそうできないのは確かなんだろう。見たことないし、聞いたことないから。衝撃だ。いまだに照れて顔を真っ赤にした姫路さんの表情が頭から離れない。


「私をなんだと思ってるのぉ?人間なんだし、照れもするよぉ。それにいい男っていうのは、女の子にそういうところで言及しないものだよぉ。」

「あはは。かもね。」

「反省して。」


 拗ねたように唇を尖らせる姫路さんである。こちらもこちらで珍しいな。でも、杏里と話しているときなんかは、偶に見たりもするから。珍しいだけで、意外ではないなぁ。

それにしても、照れた表情はヤバかった。今でも心臓の音が大きく鳴って周りに聞こえないんじゃないかって思うくらいだ。そのくらいびっくりしたんだろうなぁ。ただのぼっちにはきつい衝撃だ。


「ごめんなさい。」




 授業中、突然姫路さんから腰のあたりを指でツンツンと突かれた。なんだなんだ?その可愛い仕草は?


「何?」

「しぃー。」

「?」

「……。」


 姫路さんが机の上に置いてあるノートを指でトントンと叩いた。教科書には、文字でお話しよ。と書かれていた。

正直意外だ。姫路さんはそういうことしないタイプだと思っていたんだけど。最近は何だかんだちょっかいをかけては来るから、前よりも姫路さんのことを色々分かったけど、それでも根は真面目だと思っていたから。

 こうして、教科書に落書きしたり、授業中に遊ぶなんて発想になるとは思わなかった。さっきのこともあるし、ちゃんと、人間の高校生の女の子をしているんだな。

 とりあえず、頷いておくか。

「(コクコク)。」

 



 以下からノートでの会話のみ。小牧君と姫路さんの交代で言葉を交わしてます。最初は小牧君から。


「何か用でもあるの?」

「別にないよ。ただ暇だから。」

「暇って。授業ちゃんと聞かなきゃ。」

「別に大丈夫だよ。先生にばれなければね。」

「姫路さんも意外と悪だね。」

「そう?このくらい普通だよ。皆やってることだしね。」

「やってないでしょ。」

「やってるよー。」

「本当に?そんなの見たことないけど。」

「嘘だー。」

「嘘だー。」

「マネしないでよ。」

「ごめんごめん。」




「いいけど。それより、何かない?」

「何かって?」

「ひ・ま。」

「分かったよ。じゃあ、質問してくから答えてって。」

「いいよー。」

「好きな食べ物は?」

「甘いもの全般好き。」

「杏里と同じなんだな。」

「それで仲良くなったから。一緒にお店にいったりして。」

「なるほどね。」

「うん。次は?」

「好きな教科は?」

「理科?実験楽しいし。」

「なぜ疑問形?」

「あまり教科で好き嫌いないから。」




「そーゆーこと。休日何してる?」

「秘密。」

「秘密?どうしても?」

「おしえなーい。」

「好きな人とかいるの?」

「杏里。一番仲良しで親友だから。」

「そういう好きじゃなくて、恋愛感情で、的な。」

「秘密。君は?」

「秘密。」

「でしょ?」

「うん。その通りだ。」

「そろそろ授業も終わるねー。最後の質問どーぞ。」




「神崎春馬と仲いいの?」

「悪くはないけど?友達だもん。どうして?」

「神崎春馬と友達にどうやったらなれるかなーって。」

「今日のお昼、神崎君も呼ぼうか?」

「いいの?」

「うん。いいよー。来てくれるかは分からないけどね。」

「十分だよ。ありがと。」

「どういたしまして。」




 その後、チャイムが鳴り授業は終了した。いやー、ラッキーだ。これで一つ任務が完了した。あとは神崎春馬が来ることを祈るだけだな。


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