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005

 時間は飛んで昼休み。昼食の時間である。席替えの後は特に何もなく、ただ授業が続いただけであった。こちらからしたら、嵐の前の静けさのようで嫌な時間だった。このまま、何もないまま続くのが一番いいが、そうも言ってられないだろう。

 ぼっちの悲しい妄想ならいいんだが、万が一でも姫路さんに昼食を誘われることなどあれば、学園生活が一瞬で終わる。ついでに家に帰ってから、杏里におこられるだろう。理不尽だけど。

 ということで、一時退散と行こう。さらばだ。


「あっ、小牧君。一緒に食べない?」


 はい。さようなら。俺の学園生活。フラグ回収にしても、早過ぎじゃないですかねー姫路さん。もう少し、こう溜めみたいなのが欲しかったよ。


「えっと、学食だから。」

「なら、一緒に食堂で食べよっかぁ。」


 そうじゃないんです。そうじゃないんですよ姫路さん。くー、分かっていてやっているのか、天然なのかどっちなんだ。どちらにせよ困るよ。杏里が、ほら睨んできてる。幼馴染ってことそんなにばれたくないかなぁ。少し凹む。


「どうしたのぉ。」

「いえ、何でも。」

「愛理。小牧も用事があるんじゃない。ねぇ?」


 困った顔してるの分かっちゃった?なら、やめてほしいんですが。そして、杏里さん?その、圧力が凄くて怖いですけど。けど、ナイス。流石、幼馴染だ。助かる。流石に全校生徒に見られる場所では、一緒にいたくないから。生命の危機的な意味で。


「そうなんですよー。ちょっと都合が悪いというかぁ。」

「そうなのぉ。残念。いつなら大丈夫なのぉ?」

「え、っと。未来のことは分からないですねー。」

「へぇー。」


 ひぃ、姫路さんそんな声も出せるのか。そこまで感情のこもっていない声は初めて聴きましたよ。逆に怒声の方がまだよかった気がするんですが。感情がないってのはここまで怖いものなのか。


「い、いえ。今度、一緒に食べましょう。弁当持ってくるので。教室でね。」

「いいのっ?やったー。嬉しいよぉ。」

「え、ええ。僕も嬉しいです。やったー、あはは、はは。」


 杏里さん。これが俺の限界なんで、勘弁してください。だから、もう睨むのはやめてください。何がそう杏里を掻き立てるのか知らないけど、もうクラスにはばれてるんだし、一緒でしょ。




 学食に向かう途中、いつもより視線を向けられているような気がした。気のせいかもしれないけど、姫路さんのこととなると皆テンションが違うからなぁ。特にファンクラブの会員NO、000から009までのやつらはガチ度が違うからなぁ。現にもう呼び出しくらってるし。

 さっきから携帯の通知が止まらなかったりする。一時限目の休みからもう同じ内容の連絡が何通も届いてる。こっちから返信しても一向に途絶えないのが理解不能。流石に授業中は止まってることから、真面目に授業を受けてるんだろうなとは分かるんだけど。


「ようこそ。NO.341よ。」

「あっ、あなたは。」


 そこに座っていたのは、この学園の生徒会長であった。生徒会長って、ファンクラブの一桁台なのか。でも、3年だよな。姫路さんと交流でもあったか?しかも、この感じ創設者の一人なんだろうなぁ。

 そして、生徒会長の横に座っている二人の人物も創設者の一人であるんだろう。片方は知らない人だが、もう一人は昨日、取り巻き君Aの行動を牽制していた人じゃないか。まさか、創設者だったとは。


「まぁまぁ、座りなさい。」

「あっ、はい。」

「いつも君はこれだったね。どうぞ。」


 こわっ。昼食を何頼んでるとか見てるのかよ。この男。変態すぎる。ストーカーかよ。しかも、全校生徒分やってそうだよな、これ。能力の無駄遣いが凄いな。姫路さん抜きにしたら相当に優秀な人なんだろうなぁ。




「さて、用件は分かっているね?」

「姫路さんのことですよね。」

「うんうん。その通りだ。それ以外ないよねぇ?」

 

 生徒会長はホラー的な世界の住人だったのか?目が見開きすぎて、恐ろしいにもほどがある。これは返答を間違えると即死案件だな。ふふっ、何でだろう。最近怖い目に遭ってばかりだな。姫路さん関連で。

 実は天使じゃなくて、悪魔だったとか?いや、それを言うなら小悪魔か。小悪魔な姫路さんか。それもまたいいな。って、そんなこと考えてる場合じゃないやい。


「あっ、はい。」

「それで?」

「えっと?」

「姫路さんとの仲は?」

「クラスメイトです?」

「なぜ、疑問形なんだい?どこに詰まるところがあった?何か違うところでもあったのかい?」


 質問攻めはやめてくれませんかねー。普通に怖いっす。しかも、普通の釣り眼に戻ったかと思えば、また目が見開いてるし。何なら、さっきよりも目が開いてるんじゃないか?目の見開きチャンピョンなんてあったら出られそうだな。はっ、またふざけたことを考えてしまった。真面目に、真面目に。


「いえ、そんなことは。クラスメイトにも満たない関係なんじゃないかなぁみたいな?」

「あははは。謙遜はよくないよ。クラスメイトでもない奴が何をほざいてるんだと、君は言いたいんかな?ん?」

「そんな、滅相もない。」

「そうかい。ふぅ。僕も少し興奮してしまったみたいで悪いね。」


 少し?あれで少しなのか。ちょっと生徒会長の限界を見たくなってくるな。最高にハイな状況になったらどうなるんだろうか。あれ?でも、すぐに光景が脳裏に思い浮かぶぞ。姫路さんの像の前で、一心不乱にお祈りする姿が。お、恐ろしい。本当にやりそうだ。


「い、いえ。」

「でもね。気を付けなよ。姫路さんを狙うなら、それ相応の覚悟を負うことだ。良いね?」

「あっ、はい。」

「気を悪くしたなら申し訳ない。振られて悲しい思いをするのは辛いだろうから。ああ、もちろん絶対振られるなんてことは、言わないけどね。それに姫路さんが選んだ相手なら僕らはきちんと祝福するよ。これは絶対だ。ねっ?」

「うんうん。そうだね~。」

「……そいつがクズでもない限りな。」


 あっ。そこら辺の良識はあるんですね。普通にいい人たちそうな雰囲気が漂っているなぁ。生徒会長ならそれもそうか。性格が破綻しているやつが成れるほど甘くはないんだろうなぁ。


「そ、そうなんですか。」

「もちろんさ。姫路さんも一人の人間だ。天使のようだけどね。それでも人間だ。限りなく神に近い人間だ。僕らが縛れるものでもないさ。」

「そうですねー。」

「だけど、くれぐれも不埒な真似はしないようね。さて、僕らは食事も終わったことだし、解散と行こう。それじゃあね。」

「うんうん、またねー。」

「……ふんっ。」

「あっ、はーい。」


 何だか拍子抜けだな。もっとひどい展開を思い浮かべていたんだが。なんか、案外言葉が通じそうな人たちだったな。うん。さて、食事を再開しよう。それにしても、かん黙だったあの人は何処の誰だったんだ。


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