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 いよいよ明日は謎の男との作戦会議である。いや、本当に何なんだよ。名も知らない上級生と二人きりで作戦会議とか頭が悪いのかと思ってしまうよ。しかし、ここまで来たら作戦会議よりも謎の男の方が気になるよ。

 それはそれとして憂鬱なのは変わらないんだけど。


「はぁ~。」

「どうしたんだい?」

「春馬か。別にどうもしてないさ。」

「そうかい?それにしては重たいため息だった気がするけど。」


 春馬と教室の外で話すのは珍しいから新鮮な感じがする。それに春馬に心配されるとなんだか変な気分だな。クラスのトップカーストが下々のものを気にかけているなんていまだに信じられん。春馬はいい奴だから全員に気を配っているのかもしれないけど。


「うっ、それは。」

「無理には聞かないよ。けど、皆心配してるんだよ。」

「……すまんな。」

「あはは。別に謝って欲しいわけじゃないさ。何かあれば僕じゃなくても、だれでもいいから相談するんだよ。」


 いい奴やな。良い奴過ぎて泣きたくなってくるよ。そこまで心配されるほどじゃないというか、悩みがちっぽけでね。まぁ、俺にとっては一大事といってもいいことなんだけど。


「ああ。ありがとう。」

「あはは。僕は部活があるからもう行くよ。」

「ああ。頑張ってな。」

「ありがと。」


 爽やかな笑みだ。爽やかすぎて眩しいくらいだ。ぜひとも春馬には頑張って欲しいものだ。お前は何様だって感じだけど。




「あれだけ爽やかなら、俺もこんなうじうじしなくてもいいのかもしれないな。」

「ふんっ。うじうじしていないあんたなんて想像できないけどね。」

「ははは。違いない。素直な杏里を想像できないくらいに同意できるよ。」


 今日は来客が多いなぁ。って、二人目で来客が多いと言っている時点でお察しだよなぁ。でも、交流関係があるのは4,5人だからな。その半分が来ているんだから多いんだよ。うん。


「何ですってぇ?」

「素直じゃなくて、しかも耳まで遠いらしい。」

「ったく。心配したあたしがバカだったわ。」

「杏里に心配されるほど落ちぶれてやしないよ。」


 杏里はこれでも心配していたらしい。でも、それが人を心配する態度なのかしら?全く杏里ちゃんは困った子なんだからぁ。なんてね。こういう時の杏里は色々と嬉しいものだよ。これでこそ幼馴染ってね。


「全く。それだけ減らず口を叩けるのなら大丈夫そうね。」

「ははは。……心配かけて悪いな。」

「そんなの今更よ。水臭いわね。まぁ、でも許してあげるわ。」

「ああ、ありがとな。」


 ホント、杏里が素直だと調子が狂っちゃうよな。こっちまで普段にない態度になっちゃうし、照れくさくなっちゃうよ。


「今度パフェを奢ってもらうからね。」

「あらら、選択をミスったか。」

「あたしに奢れるのよ光栄に思いなさい。」

「どこの女王様だよ。」


 いつも通りの杏里になっちまったな。素直な杏里もたまにはいいけど、いつも通りの杏里の方がそれっぽくていいと思うよ。そんな事絶対に本人には言わないけどね。だって、恥ずかしいやん。


「さて、そろそろ帰りましょうか。」

「そうだな。帰ろ帰ろ。」




「で、あんたは何をうじうじしているのよ。」

「別になんでもないけど?」

「嘘つくのはやめなさいよ。ほら、いいなさい。」

「嫌だね。」


 杏里と流れで下校中に突然に杏里がそんなことを言う。その話はもう終わったものだと思っていたけど、杏里の中では終わっていなかったらしい。もう忘れてくれればいいものをそう上手くいかないのが人生というものか。

 って、若造が何言うてるねん。言うてるのは自分なんやけど。わはは。うん。


「へぇ、このあたしに逆らうって言うの。」

「はん。杏里なんて怖くないさ。」

「ほほーう。学校中にあることないこと吹き込もうかしら。特に幼少期の時の話なんて面白そうじゃないかしら?」

「やれるもんならやってみな。」


 はんっ。ぼっちをなめるなよ?それっぽっちの風評被害が増えようとも実害はないに等しんだよ。元々いないのと変わらないからな。誰そいつって言われるだけだ。自分で言っておきながら悲しいな。


「愛理にも伝わるけどいいのかしら。」

「お、脅しには屈しないからな。」

「愛理のことね。」

「えっ?」


 いや、えっ?訳わからん。何故そこで愛理さんの名前が出てくるのかも分からないし、それが愛理さんのことだと断言できるのかはもっと分からん。これが女の勘ってやつか?全くもって訳わからん。


「うじうじしている理由。」

「いや、どうして。」

「それもどうせ愛理を好きになって、どうしたらいいか分からないってとこでしょ。」

「は……?」


 え?どういうことや。もう、本当に分からん。正解ってことがより恐ろしさを演出しているよ。そんなに分かりやすいものだったかなぁ?とりあえず否定して、誤魔化さなくては。おもちゃにされてしまう。


「隠そうとしても無駄よ。さっきの反応で完全にそうだと分かったからね。これで楽しみが増えたわね。」

「最悪。」

「これでも応援してるのよ。あなたにはちょっぴり、いえ、だいぶ高嶺の花だと思うけどね。」

「……だよねぇ。」

「ま、頑張んなさい。」


 ついにバレてしまった。って言うか、春馬も気づいてるってこと?それであんな風に?うわっ、めっちゃ恥ずかしいわ。穴があったら入りたい気分だよ。


「……はいはい。」

「じゃあね。」

「ああ。また来週な。」


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