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004

 今日4月24日木曜日、衝撃の事実が判明しました。なんと、高校生活の一大イベントの一つである席替えが行われるらしいです。はい。ということで席替えをするみたいです。実況は2年4組6番小牧悠馬がお送りします。

 一限目から酷なイベントが発生したなぁ、とテンションだだ下がりの私ですが、対照的に周りは盛り上がりに盛り上がっています。席替えの後は近くの席になれるといいね。とか、狙いのあの子の隣になりたい。とか、いやー青春ですねー。

 そして、実況の私ですが、そんな会話をできる友達はいません。くっそー、こんなテンションじゃなけりゃ、やってらんねーぜ。酒持ってこーい。あっ、一応言っておきますが、未成年の飲酒はダメですよ。




 妙な熱気に包まれた教室であったが、少しずつ落ち着いてきた。担任の妙な雰囲気に気づいたのかもしれない。自分の腕時計を見たまま微動だにしないのだ。何をしているんだと担任に注目が行き、シーンと静まり返った。


「……はい。皆さんが静かになるまで、5分もかかりました。」


 で、出たー!!教師の伝家の宝刀。皆さんが静かになるまで○○分もかかりました。これ言うときの教師の感情って何なんだろうな。静かになるまで待たずに注意しろよ。そっちの方が早いだろ。


「これ、言ってみたかったんですよねー。」

「先公がそんなんでいいのかよ。」


 あっ、昨日の取り巻き君Aじゃないか。同じクラスだったんだね。知らなかったよ。それと君は姫路さんの取り巻きではなかったみたいだね。カーストの準トップクラスでしかないじゃないか。

 他のクラスならトップに君臨できたかもしれないのに。オラオラ系なんて、もう流行らないよ。なーんて、俺が言えた義理じゃないけど。


「あははは。そうですねー。とりあえず、席替えしましょう。」

「先生―。どうやって席決めるんですかー?」

「そこは適当に?くじ引きとかでいいと思いますよー。」


 担任と生徒どちらにも流されてる。な、なんとも言えないな。同情するよ。マジで。人からスルーされるのと、流されるのってつらいよな。うんうん。分かるよ。常に俺ってそうだもん。なんだか、今なら友達になれそう。




「他に意見ある人はいますかー。」

「……。」

「はい。いないみたいですねー。あとは委員長さんよろしく。」

「はい?先生、くじなどの準備はしてないんですか?」

「はい。生徒の自主性に任せようかと。」


 自主性って建前でももっとましなのにしろよ。どう考えても担任がめんどくさがっただけじゃないか。それを自主性って言葉で片付けようなんて。まぁ、いいけど。俺関係ないし。委員長頑張って。


「……分かりました。では、くじは私が作るので待っていてください。」

「はーい。」

「副委員長、手伝って。」

「仕方ないなぁ。」

「文句言わず、ほらやるっ。」

「はいはーい。」


 委員長って誰にでも敬語なのに、あの副委員長にだけはため口だよな。昔からの腐れ縁とか言ってたっけ。この二人は喧嘩ップルらしいとの噂が一年の時からあったな。別のクラスにまで噂が流れるくらいだし、相当なんだろうな。

 だが、王道過ぎる道を歩んでるなぁ。まんま委員長な委員長と、ちょっぴりやんちゃで髪を茶色に染めちゃうようなイケイケな副委員長だけど根は真面目で。二人は障害を乗り越えいずれは……みたいな。うーん、いい。




「出席番号一番から引きに来てください。」

「天野からなー。」

「オッケー。」

  



 ついにこの男が来た。このクラスのカーストトップ。唯一姫路さんと並ぶ男。顔よし、成績トップ。運動能力も高く、あらゆることに高い適性を誇る。この男にできないことはないと言われ、超人とさえ評される。

 当然のようにこの男にもファンクラブがあり、その総員数は姫路さんのファンクラブを上回るという。その男の名を神崎春馬(かんざきはるま)という。この男は実に掴みどころがなく、その人間性の底まで見通すことなんて誰にもできないだろう。

 何より杏里の好きな男だ。これを狙う杏里の胆力と言ったら凄まじいと思う。まねできないなぁとね。杏里も大概美少女だからなぁ。お似合いと言ったら、お似合いかもね。


 おっ、次は杏里の番か。杏里よ。よかったな。神崎春馬はおぬしの隣だぞ。神崎春馬の隣の席が埋まったからか、女子の中から残念そうな声がのぼるが、くじの結果だ。どうしようもない。それにしてもくじ運いいなぁ。機嫌もめっちゃよさそうだし。


 はい。小牧、神引きしました。通称主人公席。あの有名な主人公席を一発で引き当てるなんて。今年はついてるぜ。これで授業中も寝放題。それに今の席からも移動しなくていいラッキーな席だ。案外移動って大変なんよ。荷物重いし。

 しかし、目の前が神崎春馬で、斜め前が杏里か。カーストトップ衆がぞろぞろといるんだが。勘弁してくれー。ぼっちにはつらいよ。杏里には今の時点で睨まれてるし。さっきの機嫌のよさはどこ行った。帰り、アイスでも買ってくか。




 飛ばしに飛ばして注目の姫路さんの番が来た。残っている席は少ないぞ。どうなるかな。まぁ、もう俺には関係ないけどね。周りは埋まっているし。もう、寝てもいいかもなぁ。万一、姫路さんの隣になることもないし。ふて寝じゃないよ。ほんとだよ。


「姫路さんどーぞ。」

「ありがとぉ。……私は一番前の席だねぇ。」

「委員長。」

「分かってるわよ。」


 周りから歓喜の声と残念そうな声のどちらもが聴こえてくる。いやー、凄まじいね。ただ一人の席が決まっただけだって言うのに、この盛り上がりよう。人気者は違うねー。寝るか―。


「くじ引きは終わりましたが、何か不都合のある人はいますか?」

「はい。私目が悪いので前の席になりたいんですけど。」


 いや、待て。名も知らぬ隣の女子生徒よ。その名乗り上げはまずいんじゃないか。俺が。ただでさえ、朝にヘイトを集めたのに、このままでは姫路さんが来てしまうではないか。


「あー、誰か変わってもいいという人はいますかー?」

「私なら大丈夫ですけどぉ。」

「姫路さん、ありがとう。」

「いいですよぉ。人と人は助け合いですよぉ。」


 予想通り来てしまったか。まぁ、姫路さんも俺に話しかけるなんてことは、もうしないだろ。前科があるから何とも言えんが、信じているぞ。




「小牧君、隣だねぇ。また、寝てるのぉ?」

「……。」

「それとも、寝たふり?悠馬君。」


 ちょっとー、姫路さん。まずいですよ。顔を近づけ過ぎだし、囁かないでほしいし、名前で呼ぶのはほんとにまずいですよ。姫路さん、スリーアウトですよ。


「ちょっ。姫路さん。まずいですよ。」

「大丈夫だよぉ。隣人への挨拶ってだけだよぉ。」


 自分の影響を分かってらっしゃる。なら、あまりそういうことはやってほしくないんだけどなー。ちらっ。

 くっ。何も知らないように首を傾げられてしまった。可愛いかよ。


「改めて、よろしくねぇ。」

「よろしく。」


 くー、クラスメイトの視線が痛いぜ。あーあ。こんなに桜は奇麗だって言うのに。どうしてだろう。心は曇ってるようだ。なーんつって。


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