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 体育祭の練習も終わり、下校の時間となった。家の方向が同じなのと近いため、例のように杏里と共に帰ることになった。下校だけはいつも通り過ぎるな。授業後の練習もなくなって、いつも通りになったらいいけど。ならんだろうなぁ。


「はぁ~、今日は疲れた。」

「だらしないわね。明日からも練習は毎日あるのよ。」

「うえぇ。最悪だ。」

「何盛り下がること言ってるのよ。」


 盛り下がる、か。意外な言葉だな。いつもの杏里ならここで同意するように思うんだが、体育祭効果か杏里も楽しみに思っているらしい。なんだかんだ言って、杏里は陽キャだからな。イベント事は好きなんだろう。


「ふーん、杏里も楽しみなんだな。」

「ふ、ふんっ。何言ってるのよ。そんな訳ないじゃない。愛理が楽しみだって言うから、ただ付き合っているだけよ。楽しみなんて……そんなことあるわけないじゃないっ。」

「へぇ~。」

「っ~。うざっ。」


 くくく。露骨にニヤニヤしてやったら、この反応だ。素直な奴をからかうのはやっぱり面白いな。それが天邪鬼ならなおいい。反応見ているだけでも楽しいからな。

 我ながら性格が悪いと思うが、顔を真っ赤にして怒っている様はいつ見てもいいものだ。いつもの鬱憤が晴れるようだ。くくく。


「ま、愛理さんが楽しみにしているというなら、俺も真面目にやらないとな。」

「そうね。愛理がいうことだもの。」

「ははは。」


 杏里もやはり楽しみらしい。楽しそうでよかったよ。杏里は普段から素直じゃないからな。周りに誤解されずに、楽しめているならよかった。俺が言えた義理じゃないんだけどね。


「何よ。」

「いや~。何でも~?」

「ふんっ。」




 少しの間、杏里との間に沈黙が続いた。気まずいわけではないけど、普段は話が途切れることはそこまでないからなんだか新鮮だ。とは言え、ずっと沈黙というのも嫌なのは嫌なのだ。なんか話題あったっけか。


「そういえば春馬の婚約者ってどんな人なんだ?」

「あんたそれはダメでしょ。他人の恋人を取ろうとするのは。」

「ち、違うし。そんな事しないって。それに春馬から俺が取れるわけないだろ。単純な好奇心だよ。」


 自分で言っておきながら悲しいよ。そもそも取る気がないのは本当なのだけど、取れないって言うのは明確に負けってことだからな。そもそものスペックが違うのだから、仕方ないけどね。あっちは完璧超人だ。人間では勝てないさ。


「ふーん。可愛いからって好きになっちゃダメだからね。」

「もちろんさ。それは大丈夫だよ。」

「どうだか。……もし、あんたに好きな人がいるって言うなら信じられるけど。そうじゃなければ、ねぇ?」

「大丈夫だって。それにそんなにチョロくないし。」


 ほんとだぞ?たとえ俺がぼっちであったとしてもだ、話を聞いただけで好きになる様なチョロい男だと思ってもらうと困るってものだ。そんな簡単に好きになるもんか。それに、まぁ大丈夫さ。万が一もないし。


「へぇ、チョロくないねぇ。ふーん。」

「なんだよ。」

「いや、童貞が何言っているんだかと思ってね。」

「は?はぁ~?ど、童貞ちゃうしっ。」


 ど、ど、童貞とか。は、はぁ?そんなんちゃいますし?決めつけちゃってさぁ、困るんだよね。風評被害みたいな?童貞とか、適当にそこらへんで捨てときましたわ。ホントよ。ホント。うん。……ホントなんだもん。ぐすっ。


「その反応がそうじゃん。」

「くっ。……そっちも処女のくせに。」

「は?それセクハラだけど?殺すよ?」

「んな理不尽な。すみませんでした。」


 マジで理不尽なとことは変わらないなぁ。今回は俺が悪かったからいいけど。でも、理不尽は理不尽やからな。あんま女だからってなめとったらあかんぞ。どつきかますぞ、われ。

 なお、心の中で思うのが限界で口に出す勇気がない小心者な小牧君でした。って、変なナレーションなんていらんわ。ノリ突っ込みもいらんわな。


「分かればいいのよ。それで、春馬君の婚約者のことを聞いてどうするの?」

「何もしないけど?」

「何もしないなら、聞かなくてもよくない?」

「それもそうだ。」


 お、おう。ホントにその通りだな。その通り過ぎて言い返す言葉がない。うん。……うん。それに聞きたければ春馬に直接聞けばいいからな。そこまで関係が続いているかは分からないが、今のまま関係が続けば話すこともあるだろう。


「うん。」

「……。」

「……。」


 嫌な沈黙だぜ。救いは家がもう目の前だってことか。この沈黙から早々に解放されるのはラッキーやで。これが下校中ずっと続くなんてこと思うと、地獄やなと思うわ。はな。さいならやで。


「……家だな。」

「そうね。また明日。」

「おう。」


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