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003

 翌朝、学園に噂が回ってないかと、心配で心配で気が気じゃなくて早く来たのはいいけど、少し早く来過ぎたな。こんなにも朝の教室というのは静かだったなんて、知らなかったな。まだ、始業までだいぶ時間があるな。寝るか。




 う、うーん。どのくらい寝たんだろうか。もうすっかり教室はいつもの調子になっているな。騒々しくて、活気にあふれている。この雰囲気も割と嫌いじゃない。自分がクラスの一員のような気がしてくる。

 ほら、周りが騒がしいと、自分も騒いでるような感じになるだろ。えっ?そんなことはないって?それこそそんなわけないでしょ。……。まさか、本当に?自分が異端なだけ?あーやめやめ。俺は何も知らない。うん。




 うーん。それにしても、いつもと変わらないな。姫路さんはきちんと約束を守ってくれたようだな。いやー、良かった良かった。もうひと眠りに行こうか。


「皆、おはよぉー。」


 このタイミングで、姫路さんの登校か。いやー、いつもながら凄まじいな。全員からきちんと挨拶が返ってきてる。人気あり過ぎて怖いくらいだ。他の女子からやっかみがあってもおかしくないと思うんだがな。不思議とないんだよなぁ。

 まぁ、それでこそ天使様なんだろうけどね。やっぱり、人類を超越してしまっているのか?そうなのか?


「小牧君。おはよぉ。」

「……。」

「あれ?寝てるのかな?」


 近い近い。横目で声の方向を見たら、すぐ横に美少女フェイスがあって心臓に悪い。って言うか、目がばっちりとあったんだが。これ、まずいか?

 それより、なぜ名指しで挨拶をする。これで他の男から目をつけられたかもしれないじゃないか。とりあえず、頷いておく。姫路さんに逆らってもいいことないし。


「また、寝たふり?」

「……(コクコク)。」


 ふおぉ。耳が孕む。囁くような声を耳のそばで出さないでほしいよ。高校生は年頃なんだからさ。やばいよ。何がヤバいかは言えないけど。とにかくやばいよ。ありがとうございます。


「ふふっ。大丈夫だよぉ。二人だけの秘密は誰にも言ってないからぁ。」


 それは安心。じゃあ、無いんだよなぁ。何故あんなモブが姫路さんに!?ってなるでしょーが。全くもうっ。仕方ないんだからっ、姫路さんは。ぷんぷん。


「また、話そうねぇ。」

「……(コクコク)。」


 やれやれ、姫路さんにも困ったもんだ。この空気をどうしてくれるんだ。こちらの様子を皆伺ってるじゃないか。これは後で尋問されるかもなぁ。




「姫路さん。どうしたの?悠馬にわざわざ挨拶するなんて。」

「悠馬?」


 幼馴染よ。幼馴染であることは学園では秘密とか自分から言ってたくせに、警戒心の欠片もなく俺の名前を呼ぶんじゃないよ。だが、ナイスだ。姫路さんから名前で呼ばれたぜ。姫路さんって基本的に苗字でしか呼ばないからなぁ。

 これはレアな体験をした。一生自慢できるかもしれない。まぁ、それと同時にクラスの、いや学園の男子からのヘイトは上がっただろうけど。とほほ。


「あっ、ちがっ。」

「えぇ?何が違うのぉ?」

「……何でもないっ。」


 姫路さんにこんな口調で話せるのは、我が幼馴染である黒崎杏里くらいだろう。何でも、姫路さんの一番の親友らしい。どこで知り合ったかは知らないが、中学の時からもう友人関係にあったみたいだ。

 だからと言ってファンクラブが黙っていないと思うのも当然だと思うが、ツンデレ美少女と天使様の絡みに一定以上の需要があり、ファンクラブも黙認せざるを得ないみたいだ。そうじゃないと、派閥同士の争いになるとか。


「ふふふ。かーわいい。」

「なんなの、もうっ。しらないっ。」

「ごめんねぇ。」


 百合の花が見えたぜ。どうしてだろう。フシギダナー。

 それにしても、高校生にもなってツインテールとは。うちの幼馴染は子供過ぎじゃないかと思わないこともないんだが、似合っているみたいで学園でもちょっとした人気があるみたいだ。まぁ、杏里は背も一般より低いし、童顔だからな。いまだに似合っていても不思議じゃない。姫路さんとは姉妹に見えてもおかしくはないぐらいだし。


「勘弁してよねっ。私そんなんじゃないのに。」

「分かってるよぉ。」

「そうすれば、許してもらえるとでも思ってるの?絶対やだからねっ。」


 まるっきり拗ねた妹を宥める姉の図で笑える。それと何故か告白もしていないのに俺が振られてるみたいになるのはやめてほしい。つい名前を呼んじゃって、照れ隠しにそういう風に言っている以外の意味はないのだから。

実際にそういう恋愛的なことはないと断言しておこう。幼馴染は幼馴染なのだ。それに杏里の好きな人の話は本人から聞いてるくらいだし。BSSとか勘弁じゃ。


「ごめんねぇ。アイス奢るからぁ。」

「っ。アイスで釣られると思ってるのっ。」


 あっ。揺らいでる。相変わらず杏里はちょろいなぁ。甘いものが大好物の杏里は特にアイスに目がない。怒っていても、アイスさえ渡せば何とかなるレベルで好きだ。毎日どこかしらで、アイスを食べてるらしい。

 そんなことをファンクラブのやつらが話してたのを聞いた。あいつらってどこから情報入手してんだろってぐらい詳しいときあるよなぁ。怖いわぁ。


「ほらぁ、駅前の新しい店に行きたいって言ってたでしょぉ。一緒にいこぉ。」

「っ。仕方ないわねぇ。そこまで言うなら、許してあげる。それにあの件もあるし。」

「それも分かってるよぉ。」


 はい。ノックアウト。うちの幼馴染は姫路さんに負けました。まぁ、ちょろっと前にした会話を覚えてもらえていて、嬉しかったんだろうなぁ。それにやはり、アイスには勝てんかったらしい。




 そんなこんなで時間もだいぶ経ったな。もうすぐ朝のHRが始まる時間だ。今起きた風に誤魔化さなきゃな。背伸びをして唸り声を、よいしょっ。


「う~、……う~ん。」


 何故でしょう。不思議なことに姫路さんと目が合ってしまった。まぁ、気のせいだろう。とりあえず何でもないようにスルーして、外に目を向けよう。あー、桜が奇麗だなー。


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