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「どうする?」

「こちらはこちらで楽しもう。」

「まぁ、そうするしかないか。いずれ連絡もあるかもしれないしな。」


 しかし、男二人で遊園地って悲しいものだ。周りを見渡せばカップルばかり。そんな中で二人でポツンといるってのは、少し気恥ずかしいぜ。だが、隣にいるのは誰もが認める超人だ。本当は羨ましがられる立場なんよな。


「そうだね。それじゃあ、行こうか。」

「ああ。」




「そう言えば、さっきは二人でどこに行っていたんだ?」

「うん?ああ、黒崎さんとの話かい?」

「そうだ。」

「そうだね。フリーウォールやジェットコースターとかかな。」


 うわぁ。そっちもそういう系か。って言うか、遊園地はほとんどがそういう系か。うん。普通に苦手なものばかりじゃん。何故ここを選んだんだ?過去の自分をぶん殴りたいぐらいだよ。

 まぁ、それでも楽しいんだけどさ。ほらトモダチみたいだろ。


「ああ。定番の。」

「定番と言ったら定番だね。黒崎さんも楽しそうだったよ。」

「ああ、そうなん?杏里のことはどうでもいいけど。春馬はどうなんだ?」

「僕は楽しかったけど。黒崎さんのことが心配だったんじゃないの?」

「はぁ~?ちっげぇーし。」


 うわぁ、こういうノリを春馬もしてくるんか。だるっ。愛理さんに、杏里に、春馬にと三人ともそういうの言ってくるな。嫌だわぁ。絶対いずれは言い返してやる。杏里に春馬よ。お前らは注意しておくんだな。ふんっ。


「あはは。素直じゃないね。」

「はぁ~、本当に違うんだけど。そういうとこ愛理さんに似てるかもね。」

「子供の頃の影響かな?」

「へぇ、そっちも幼馴染だったのな。」


 初耳だな。そんな情報なら、学校中に広まっていてもおかしくないんだけど、広まっていないということはあえて伏せてるんだろうな。なんだか、秘密の関係みたいで、ちょっと……何だろ。分かんないや。


「違うよ。ただ子供の頃に家の事情で会っただけ。誕生日パーティーとかでね。」

「ええ?つまり幼馴染なんじゃないの?」

「あはは。本当にそんなにいい関係じゃないよ。」

「そうなのか?まぁ、春馬がそういうなら、そうなんだろうな。」


 わざわざ嘘を吐く理由もないだろうし、言っていることは本当なのだろう。何かしら隠していることはあるかもしれないけど、所詮他人なのだ。そういう部分も当然あるに決まっている。

 特に俺なんてまだ関わって日数も経っていないし、トモダチでもないんだろうから。だから、それも仕方ないことなんだ。でも、いずれはそういうことも言って欲しいなんて思ったりもする。


「そういうことは姫路さんに聞いてみればいいと思うよ。」

「愛理さんに?」

「そう。聞けば答えてくれるんじゃないかな。」

「そうかなぁ?秘密とか言われそうだけどな。」

「そうかい?基本的に姫路さんはそういうことは答えてくれると思うんだけどね。」


 なんだか春馬と俺のと間では愛理さんの人物像に乖離があるなぁ。やっぱり親しい仲である方が詳しくもなるんだな。当然、春馬の方が愛理さんとは親しいんだから、本来なら愛理さんはそういう人物なのだろうな。


「う~ん?」

「……ああ。そういうことか。それなら納得かも。」

「何が?今、何を納得したの?」

「秘密。」

「うわ~。そうやって言ってくる。」


 何か勝手に納得したかと思えば、愛理さんみたく言ってきた。なんか流行っているのか?思わせぶりなことを言ってから、何でもないとか言ったり、秘密とか言ったりするのが。やめてほしいよ。言われた側はやきもきするんだから。

 言うなら言う。言わないなら最初っから言わないで欲しいよ。そうすれば気にすることなく過ごせるって言うのに。


「あはは。姫路さんはこういう気分なのかもね。」

「どういうことだよ。」

「さぁ?どういうことだろうね。」

「もういいよ。答えてはくれないんだろ?」


 ふんっ。春馬のバカ。そうやって適当に誤魔化せば、誤魔化されてくれると思って。酷い。確かに誤魔化されてあげるけど。……って、俺は春馬の彼女かい。まるっきり彼女みたいなセリフだな。うん。ここはふざける場面じゃなかったかな?


「そうだね。姫路さんなら答えてくれるかもね。」

「また、それか。まぁ、いいよ。」

「そうかい?その方が僕も助かるよ。」

「はいはい。」




 なんやかんや男二人でも遊園地というのは楽しめるようで、春馬の後を追ってきた女を振り切ったり、逆ナンしてきた女を断ったり、ガチ恋勢の告白を断ったりと大忙しであった。

 あれ?なんか、春馬しか楽しんでなくないか?俺、影薄すぎて誰?って感じだな。なんだか、視界が水分で遮られてきた。どうしてだろ。……ほんと、どうしてだろ。イケメンってずるい。


「おっ、連絡が来たな。」

「うん。こっちも来たよ。」

「じゃあ、目的地に向かうか。」

「そうだね。」


 最後は観覧車の下で集合か。粋な計らいじゃないか。たぶん、愛理さんの提案だろう。杏里と春馬を二人で乗せてやるんだろう。うんうん。当初の目的を覚えていたみたいでよかったよ。

 当初の目的を忘れてたお前が言うなとは言ってくれるな。だって、楽しかったんだもん。忘れても仕方ないでしょ。うん。そうに違いないんだ。


「というか、すっかり夜になってるな。」

「案外に時間がかかったね。」

「困ったものだよ。ま、これはこれで悪くない一日だったけど。」

「あはは。僕も楽しかったよ。」

「そう言ってくれると、誘った側としては嬉しいよ。」


 ほら、春馬も楽しかったって言ってるだろ。たとえ社交辞令でも、そう言ってくれたということはほんの少しでもそう感じてくれたと信じたい。さっきのことはこれでお相子だろう。


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