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025 ※姫路さん視点

 姫路さん視点です。

 いよいよお化け屋敷に入るときが来たみたい。小牧君はこれまでずっと喋りっぱなしだったんだけど、お化け屋敷が相当に怖いのだろうねぇ。そんなに強がらなくても、苦手なら苦てって、言ってほしんだけどなぁ。

 でも、そんなにも苦手なのに私を優先してくれるのは、正直に言ってかなり嬉しい。私だけを特別扱いしてくれるのは、誤魔化しようがないほどに嬉しいものなの。


「暗いな。」

「う、うん。そうだねぇ。」

「やっぱり姫路さんも怖いんじゃないか。」

「違うよぉ。小牧君が服を指で掴んでくるからぁ。」


 強がっていながらこれはあざと過ぎないかなぁ?無意識にでも服の袖をつかんで引っ張ってくるなんて、頼ってくれているみたいでなんかいい感じに思える。何よりも可愛い仕草だと思うのだけど、どうなのだろう?可愛くない?


「つ、掴んでないしっ。気のせいじゃない?」

「それは無理があるよぉ。」

「気のせいったら、気のせいなの。姫路さんも分かった?」

「うんうん。分かったよぉ。……なんだか、子供みたいだねぇ。」


 ふふっ。可愛い。なんだか普段の小牧君よりも、感情豊かで子供っぽく感じる。そのせいか小牧君のことが可愛く感じて困っちゃう。母性本能とでも言うのかなぁ?胸の奥がざわざわとする、みたいな。


「なんか言った?」

「ううん。何でもないよぉ。先に進もぉ。」

「お、おう。そうだな。」


 おかなびっくりした様子で先に進む小牧君。怖がりすぎでしょ。と思わないこともないけど、どうしてか可愛く感じる。普通なら、情けなく思ったりするのかなぁ?でも、私は可愛くって、可愛くって仕方なく感じる。

 うう~ん?私っておかしいのかなぁ?でも、可愛すぎる小牧君が悪いよねぇ。うん。私はおかしくない。小牧君が可愛いのが悪いんだ。




「ひっ。」

「……っ。」


 服を掴んでいた指にぐっと力が入り込み、ぎゅっと小牧君に引っ張られた。これはキュンとくる。小牧君が頼ってくれてる。ビクッと肩が震えるのも可愛いし。お化け屋敷って、最高のアトラクションかも。


「な、なんだよっ。」

「な、何がぁ?」

「肩が震えてるから。」


 つい隠せなかったみたい。でもね?小牧君が可愛すぎるのが悪いと思うの。それなのに小牧君は自分が悪くないみたいに、こっちを責めてきてぇ。ダメだよ。でも、可愛いから許しちゃう。


「怖いなぁって思っただけだよぉ。」

「そ、そうか?それは悪いな。」

「いいよぉ。次、行こうかぁ。」

「あ、ああ。」


 小牧君、緊急用の出口をちらちらと見てて可愛いなぁ。そんなにここから出たいんだぁ。でも、出させてあげないよぉ。小牧君が悪いんだから。そんなに可愛い姿を見せられると、もっと見たくなっちゃうのは仕方ないでしょ。




 おおっ。さっきから思ってたけど、ここのお化け屋敷って、クオリティー高いなぁ。私は怖いものとか好きだから、お化け屋敷とか入ったりするけど、ここまで本格的なのは中々ないよ。いい場所見つけたなぁ。また来よっ。

 その時はまた、小牧君と来たいなぁ。あっ、でも同じところじゃあ、小牧君は怖がってくれないかなぁ?それだと意味ないし、やっぱり違うところ?


「うおっ、……らぁ。」

「らぁ?」

「驚いてないよ。お化けを退治してやろうと思って。こうやって、おらおら。」


 そう言って、拳を振るう真似をする小牧君は控えめに言って、最高に可愛かった。腰の入っていない拳だし、へにょへにょパンチだし。何よりも怖がっているのが一目でわかるのが、さいっこうに可愛い。

 驚いてないよ。なんてね。そんなので驚いたの誤魔化せるわけないし。ふふふ。本当に可愛い。だから、誤魔化されたあげる。


「頼もしいねぇ。」

「そうか?照れるね。」

「ふふふ。」

「なんだよ。」

「なんでもないよ。さっ、行きましょぉ。」

「うっ、そう、だね。」


 もういきたくないんだぁ。ふふふ。何でだろう。他の人には感じないんだけど、小牧君にだけは思っちゃうんだよねぇ。こう、いじめてあげたいなぁって。流石に友達をいじめるなんてダメだからって、自重しているけど。たまに片鱗が出ちゃうんだよねぇ。




「ひぃぃぃ。」

「大丈夫ぅ。」

「も、もちろんだよ。」


 何で強がるかなぁ。まぁ、正直強がってくれる方がいっぱい可愛い姿を見れていいんだけど。私をどれだけ焦らせばいいの?小牧君の可愛さにも、まだ上があるものだねぇ。


「本当にぃ?」

「だ、大丈……ひっ。」

「わー。」


 ここで追撃かぁ。うん。文句なしに面白いねぇ。あっ、小牧君涙目だ。泣いちゃうのかなぁ?泣かないよねぇ。強がって、泣くのを嫌がるよねぇ。我慢して涙目のままいるんでしょぉ。分かってるよぉ。


「う、うう。」

「あ~。ごめんねぇ。」

「うぐっ、謝らないでくれ。」

「ふふふ。」

「……笑わないでくれ。」

「ごめんねぇ。」


 ほぉらね。泣くのを我慢した。必死にこらえてるよぉ。ふふっ、かーわいっ。ずっと愛でていたいなぁ。見ているだけで、大満足だよぉ。ぶっきらぼうに強がってる姿も、可愛いんだから。


「もうっ、いい。」

「ごめんねぇ。」

「いいから、行くよ。」

「はいはーい。」


 あーあ。拗ねちゃった。でもね。拗ねたって意味ないよぉ。可愛いって思うだけだからぁ。何なら、逆効果なくらいだしね。そんな事も気づかないんだろうなぁ。そういうところも可愛い。っていうか、存在が可愛いんだよねぇ。




 あの後から、何度か驚かしポイントがあったけど、その全てで小牧君は引っかかって、驚いていて、最高に可愛かった。今日、ビデオカメラ持ってくればよかったよぉ。また、小牧君一緒に来てくれないかなぁ?そうしたら、ビデオ回し続けるのに。

 でも、もう無いかなぁ。小牧君完全にまいっちゃったみたいだし。


「……。」

「ほら、もうすぐで出口だよぉ。」

「……ほんとぉ?」


 舌足らずな感じで言わないで?もっと聞きたくなって、いじめたくなるから。でも、我慢よ。我慢。今、我慢しないと小牧君に嫌われちゃうかもしれないし。それは嫌だなぁ。


「……っ。本当ぉ。」

「やったー。ようやく出口かー。わーい。」

「……可愛すぎるでしょぉ。」


 ついに言葉に出しちゃったよ。でも、聞かれてないみたい。それにしても幼児退行しちゃってるねぇ。もう、限界だったんだねぇ。限界になっても一緒にいることを選んでくれるなんて、……嬉しいなぁ。


「行こ、行こ。早く行こ―!!」

「はいはい。行くから、待ってぇ。」

「はーい。」

「ふふっ。」


 本当に子供みたい。こういうのも悪くないかもぉ。さっきみたいに涙目の小牧君もいいし、びくびくしながら歩く小牧君もいい。今日はいっぱいの小牧君を見れて、楽しかったなぁ。もう、満足。これで帰ってもいいかもぉ。


「……。」

「わーお。」


 絶句。とはこのことなのだろうね。完全に機能停止しているよぉ。本当に大丈夫かなぁ?反応がないと流石に心配しちゃうよぉ。キャストさんもタイミングいいなぁ。終わりも終わりのところでこうだもんねぇ。センスを感じるよぉ。


「うわーん。」

「ほら、大丈夫だよぉ。もう終わりだからねぇ。」

「ううっ。」

「あーもう。可愛すぎっ。」


 思わず抱きしめちゃった。泣き出しちゃうとは思わなかったし、小牧君が素直に私の言葉を聞いてくれるから。今日一番の感情が溢れ出しちゃった。もう、私も限界かもぉ。


「……ぐすっ。」

「泣きやめて偉いねぇ。よしよし。」

「……うん。」


 あー、素直過ぎて可愛い。もう、この子うちの子にしてもいいかなぁ?いいよねぇ?ここまで心を許してくれてるんだもの。きっと、小牧君もそう望んでるんだよぉ。そうだよねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?


「一緒に行こうねぇ」

「うん。」




「……。」

「小牧君どうしようか。これ戻るのかなぁ。」


 戻らなかったら、責任をもって私がお世話をすればいいよねぇ?うん。そうだよねぇ。そうに決まってるよぉ。なんなら、今すぐにでも責任をもっておうちに連れて帰りますけどぉ?小牧君はどうだろう?ついてきてくれるかなぁ?


「うっ。」

「どうしたのぉ?大丈夫ぅ?」

「な、なんでもない。」

「……あっ。」


 戻った。顔が赤いし、全部覚えてるみたい。うう~ん。よかったような。残念なような。でも、いっか。どっちも小牧君であることは変わらないんだからぁ。


「ちょっと、ほっといてください。」

「はい。」


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