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023

 じゃっ、じゃっじゃーのじゃーん。とうちゃーく。いよいよ、舞台に到着しました。煌びやかに光り回転する木馬。コーヒーカップに乗って回り続ける不思議な人間。空からは悲鳴の嵐が降り注ぎ、暗い闇に包まれた館はおどろおどろくそびえ立っている。

 そう、そこは夢と希望があふれる楽園。遊・園・地!!はーはっはっはっ。おいらはやって来たぞ。4人で遊園地へ!!遊園地を一人で彷徨う悪夢とは今日でお別れだ。今日こそ新しい日々の始まりなのだ。




「我は感激だ。」

「うっわ~、あんたどうしたの?」

「おい、引くな。今だけは引いてくれるな。幸福の余韻に浸ってるんだから、邪魔をしないでくれ。」


 ぼっちたるもの一人遊園地という地獄は経験済みである。あれは忘れもしない中学校の時、当時班が同じだったクラスメイトとは当然のごとく仲がいいわけもなく、好きにしていいよ。と言われ初期地点に置いて行かれた修学旅行。

 集合時間に少し遅れて、何故こいつ一人なんだと言わんばかりの視線が降り注ぐ中、班のメンバーが言った言葉は、あいつ勝手にどっか行ってたんです。であった。お前らが置いてったんだろう。まあね、確かに遅れたのは悪かったけど。


 しかし、気弱な僕ちんは泣く泣く内なる言葉を発信せず引き下がった。それから追い打ちのように、好きにするのはいいけど集合時間には間に合ってね。といういかにも優しそうな言葉を先生がいなくなってから投げ掛けてきたあいつは、一生忘れられないね。

 まぁ、そんなこんなで遊園地にはいい思い出はないが、しかし今回は最初から4人で来ることが決定しており、ハブられることはない。なんて幸福なことなんだ。……本当にハブらないよね?


「あんた、そんなに遊園地好きだったっけ?まぁ、いいわ。こいつはほっといて、先に行きましょ。」

「おいおい、待てよ。」

「嫌だ。今のあんたと一緒にいたくないし。」

「ぐはっ。」


 ひ、酷い。なんと容赦のない言葉だろう。し、しかし?逆に言うと普段の俺なら一緒にいてもいいって意味で。ははっ、何だ。杏里も可愛いところあるじゃないか。


「ふん。行きましょ。ったく、普段も一緒にいたくないのに。」

「ぐっはー。」

「神崎君は、先に行っててぇ。」

「大丈夫なのかい?」

「ああ。大丈……夫だ。ここは俺に任せて、先に行け。」


 は、はは。なんと言うことだ。普段から、一緒にいたくないらしい。普段はもっとまともなのに(気のせい)。顔か?顔何だな?だが、神崎春馬レベルの顔はそうそう居ないんだぞ?しかも言うほど俺って、顔悪くないし。

 そんな事よりも、言ってみたいセリフランキング上位には入りそうなセリフを言えたぜ(現実逃避)。ここは俺に任せて、先に行け。ふふっ。使う場面は完全に間違っているが、そんな些細なことはどうでもいい。言えた事実の方が重要なんだ。


「なんだか、案外余裕そうだね。」

「おっ?春馬は漫画とか読むのか?」

「ははは。親友がそういうの読んでたからね。」

「ふっ、神崎春馬よ。お前も案外話せそうじゃないか。」

「うん。ここは任せたよ。僕は先で待っている。」


 おおう。漫画とか読んだりするんか。意外だなぁ。参考書とかそういうの読んでそうなイメージ。まぁ、そんなもの読まなくても何とかなるのが、神崎春馬クオリティなのだろうけど。




「ふははは。」

「むぅ。」

「あっ、姫路さん。ごめんね。別に無視したってわけじゃなくてね。ほら、男同士の友情だよ。だから、ね?」


 あわわわわ。姫路さんのことすっかり忘れてた。怒ってるんか?拗ねてるのか。それはそれとして頬を膨らませてんの可愛いなぁ。そういうのって、本当に可愛い人がやらないと醜いだけだよね。あっ、今のなし。誰がやっても可愛いよねー。ねー?


「もういいよぉ。分かったからぁ。」

「ごめんって。何かお詫びするからさ。」

「じゃあ、エスコートお願いねぇ。」

「はい。もちろん、分かりました。お姫様。」


 我ながら、お姫様ってなんだよ。春馬のお姫様呼びなら需要があるだろうが、俺のお姫様呼びなんて、どこに需要があるって言うんだ?そもそも、モブ顔が突然お姫様とかなんとか言ってみろ。絶対におかしいだろ。


「ふふっ。お姫様って何ぃ?」

「いやー、自分でもわからんけど。姫路さんがお姫様っぽいから?」

「何それぇ。」


 なんでしょぉ?自分でも訳わからん。恥ずかしいよね。お姫様、キランはないわー。お姫様……、お姫様。ははは。モブがお姫様って、なんだかつぼるな。自分で行ったんだけど。はっはっはっ。


「まぁいいでしょ。それより、行こう。」

「そうだねぇ。」




「で、何に乗りたい?」

「二人に合流しなくていいのぉ?」

「いいでしょ。元々、二人のデートだし。手間が省けてよかったじゃないか。」

「確かに、そうだねぇ。連絡くらいはしておくよぉ。」

「それでいいんじゃないか。」


 えっ?ていうか、そのつもりで先行っててと言ったんじゃなかったのか?てっきりそうだと思って、ふざけたんだけど。ま、まあ、結果オーライだけど。姫路さんは今日の趣旨を忘れていたんかな?そういうこともあるよね。仕方ない、仕方ない。


「何か乗りたいものないの?せっかくの遊園地なんだから、楽しまないと。」

「ジェットコースター?」

「初めから飛ばすねぇ。大丈夫なの?」

「やっぱり最初はガツンといかないとぉ。」

「あは、はは。じゃあ、。そうしようか。」


 怖いもの系は正直、苦手なのだ。しかし、姫路さんのため。覚悟を決めるのだ。それに何に乗りたいか聞いた手前、断りにくい。もちろん、断っても大丈夫だとは分かっているよ。でもそういうことじゃないでしょ。


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