018
デートをした翌日の昼食の時間。俺は大勢の男に囲まれて、食事をとっていた。例のごとく、生徒会長の通知連打のやつだ。まぁ、あれだけの人間に囲まれた中で誘ったのだ。こうならない方がおかしいというものだろう。
「で、どうだってんだよ。」
野次馬君A。茶髪のチャラ男だ。普通にイケメンである。軽薄な見た目のせいでだいぶ損しているのではないだろうか。もしかしたら、それのおかげで得をしている可能性もあるけど。
「そうだそうだ。告白したのか?」
野次馬君B。黒髪ロングのチャラ男だ。男で黒ロングはないわぁ。と正直思うけど、色気とかあっていいんじゃないでしょうか。俺的にないけどな。
「してないですけど?」
「はぁ~?なんでだよ。そのためのデートじゃないのか?」
野次馬君C。金髪短髪のヤンキーだ。しかし、姫路さんが絡むと残念な男になるらしい。ファンメンバーの中でも有名人らしい。普通にイケメンである。校則ガン無視でよく教師に捕まってないよなぁ。もう、諦められてるのかも。
「何しに行ったんだよ。」
「デートですけど。」
「そりゃそうだけど。」
認めるんだ。なんだか、ファンクラブのメンバーっていい奴ばっかだよな。見た目がちょい悪でも、中身がだいぶまともな奴が多い気がする。一番迷惑な厄介野郎は実のところ、内の生徒会長かもしれない。
もしかして、学校で一番だからって、めんどくささも一番みたいな?……冗談だ。生徒会長は昔から、ずっとめんどくさいに違いない。
「というかあなたたち、誰なんですか?」
「俺はガチ恋勢。」
「俺は天使様勢。」
「天使様勢ぃ?言語道断だ。人間の女の子を天使様などと言って崇めたてるなど、万死に値する。人間の女の子は女の子らしく扱ってこそ、輝くというものだろう。」
「なにっ?おまえこそ、ガチ恋勢だったのか。ガチ恋とかありえないんだけど。天使様に恋をするなんてなぁ。身分が違いすぎるんだよ。さっさと身分差を思い知らされろ。」
「「それで、お前はどっちなんだよ。」」
こ、これはっ!!まさか、伝説のあの台詞を言うときじゃないか?二人の男が一人の人間を取り合って居る。シチュエーションはばっちりだ。ヒロイン枠が俺って言うのが残念なところだが。
しかーし。関係ないね。言うぞ。ほら言うぞ。ほれ、言ったれ~。
「私のために争わないでっ。」
「「お前のためじゃねーよ。」」
そう言いながら、息ぴったりの返事をしてくれる野次馬君AとB。見た目チャラくて、中身真面目。こう言う奴らの方が、実はからかいがいがあったりするんだ。楽しませてもらうぜぇ。げへへへ。
「「って、おめぇらもそんな目で見てくんな。違うに決まってんだろ。」」
「息ぴったりじゃん。」
観客たちも中々にノリのいいご様子で。じっと二人を見つめる視線に二人が同時に突っ込みを入れる。つい、思ったことが口からでちった。てへっ。
「「ちっげぇーし。こいつなんて大っ嫌いだし。」」
「そう言い合いながらも、ふと視線があった二人は。ぽっ。」
ふっ、火に油とはこのことか。ならば、どれだけ燃え上がらせれるか、試してみたくなるのが人の性。そう僕人間だから、仕方ないの。決して面白がってやってるとかでは、ないからね。うん。
「「勝手なナレーション入れんなし。」」
「ふっ、からかいがいのある奴らだ。」
「お前は何様だよ。」
「てか、こいつすげぇな。これだけの人に囲まれてんのに、こんなにふざけられるなんて。」
「褒めるなよ。照れるぜ。」
こいつらなんて、いいやつらだ。初対面で褒めてくるなんて、涙が出るぜ。全く。それにしてもおもろい奴らだ。こんなにからかいがいのある人間相違ないんじゃないか?
「褒めてねーし。ちっ、こいつの相手なんてしてられるか。」
「そうだな。それでどうする。絞めちまうか?」
「おう。そうだな。絞めちまおう。」
うん。不良っぽいのは本物なのか。言動に騙されちまったぜ。こっわぁ。絞めるとか、やばすぎでしょ。今どきの時代に絞めるとか、あったんだって感動ものだけどね。自分がやられる立場だと、嫌なものだ。
「ちょっと待ったー。事実確認もせず締めるのはこの俺が許さないぜ。そんなの許したときにゃあ、姫路さんに顔向けできねぇ。」
おお。さっきまで完全に空気だった野次馬君Cがかばってくれた。こいつこそ、真にいいやつなのかもしれない。いや、油断するのはまだ早い。さっきもそんな風に思って、不良だったんだ。
「誰だてめぇ。」
「僕は告白されたら付き合う勢だけど?」
「告白する勇気のないだけじゃねぇか。」
「お前らはヘタレなだけだっ。」
「なんだとぉ。」
なんだただのヘタレか。それにしても、またさっきのように揶揄いたくなるようなやり取りだなぁ。我慢した方がいいか?いや、する必要などどこにもない。どうなろうが、何とかなるでしょ。
「みんなっ、私のために争わないでっ。」
「「「しつけーよ。」」」
ふっ、反応がいい奴らってのは本当に面白いなぁ。まぁしかし、そろそろおちょくるのはやめよう。本気で怒りだしたら、止められないし。
「ふざけるのはここまでにしようか。」
「お前が言うなよ。」
「ホントにな。」
「図太い奴だな。」
「まぁまぁ、そう言うなって。で、何の用なんだ?」
やれやれ、こっちが話を進めようとしているって言うのに。えっ?さっきまで話の邪魔をしていたのは俺だって?えぇ~、覚えてないなぁ。誰のことをいってるんだ?
「急になれなれしい奴だ。」
「まぁ、話が早くていい。」
「そうだな。じゃあ、聞いてくぞ。」
話って言うのは大したことではなかった。姫路さんとどういう関係だ。という話から、デートはどこに行ったか。今後はどうするのか。とか、そういう話だ。なんだか、面接のようであったな。
まぁ、姫路さんのことを知りたかったんだろうなぁ。それに牽制?俺らの許可もなしに好き勝手してんじゃねぇよ。とかいう。それと、姫路さんのそばにいて悪影響がないかとかの見極め?
なんの権限があってやっているかは分からないが、厄介なファンというのはそういうものだろう。笑って流すが吉だ。




