017
チャラ男を撃退したのはいいのだが、妙に変な雰囲気が残ってしまった。理由はひめじさんの彼氏発言だろう。まぁあね、そんな事実は何処にもないし、追い払うために言ったのだろうことは分かるさ。
だけど、まさかの彼氏扱いされるなんて思いもしなかった。姫路さんなら他の方法でも追い払えただろうし。あまりその手段を取る意味がなかったはずだ。
「お目当てのものは買えたの?」
「うん。今日はありがとねぇ。」
「いやいや、ちゃんと買えたのなら本当によかったよ。」
気になるなぁ。最終的に目当てのものって、何だったのだろう。秘密って言ってたし、教えてはくれなさそうだ。もっと仲良くなれば教えてくれるのだろうか?もう、ぼっちには十分すぎるほど仲良くしてもらったけど。
「それで、お礼がしたいんだけどぉ。」
「いいよ。お礼なんて。姫路さんには助けてもらったし。」
「でもぉ。」
「本当にいいよ。それに今日は楽しめたから。」
「……。」
沈黙。どうやら、不満なようである。お礼なんていいのにね。姫路さんの時間を貰えたってだけで十分すぎるほど、貰っているさ。これ以上貰うとこっちが貰いすぎになっちゃうよ。どうしたものか。
「うーん、どうしてもと言うのなら、一緒に昼食を食べたいな。なんて。」
「そんなことでいいのぉ?」
「それがいいの。」
「うん。分かったぁ。一緒にいこぉ。」
一緒にいこうってどこに?って、昼食に決まってるよねぇ。ごめんなさい。不埒な想像をしてしまいました。そんな雰囲気でもないときにふざけるのはやめておこうか。せっかく準備してきたんだ。
そんなことで台無しにするのも馬鹿らしいだろう。まぁ、心の中でふざける分には誰にもとがめられないだろうけど、態度に出ちゃうかもしれないだろ。
「そ、そうだね。この近くに行きたい店があるから、そこにしよう。」
「うん。」
「さっきは、ごめんねぇ。」
店への道を歩いている途中、何故か姫路さんが謝ってきた。姫路さんに謝られるようなこと何かされた覚えはないけど。いや、よく考えたらあった。
学園ではみんなの前で話しかけられたし、授業中はふざけだすしで謝られてもいい案件だな。と言っても、そのことじゃないだろうなぁ。そういう影響力とかに自覚あるかは知らないけど。謝ることじゃないとか思ってそう。
「えっ?何が?」
「彼氏って勝手に言っちゃって。」
「別にいいよ。そんな事。」
それのことかぁ。正直、役得。だよなぁ。ほら、姫路さんクラスの女子に嘘とはいえ、付き合っていると認められたわけだ。本当に嫌な奴だったら、嘘でも付き合っているなんて言わないでしょ。
つまりは付き合ってもいいと思っているってこと!?言っている自分でも信じられないなぁ。
「……そんな事。嫌じゃないなら、よかったぁ。」
「もちろん嫌じゃないよ。だって、楽に追い払えたでしょ。」
「そうだねぇ。」
姫路さんよ。それはジト目だろうか。しかし何故なんだ?そんなジト目をされるようなこと言ってないと思うけど。不思議だなぁ。彼氏発言をそんな事。とかどうでもいい風に言ったから?
邪推しちゃうよ。俺に好意があるんだ的な風に。どうでもいい何て思われたくないなぁ。ちょっとは意識してくれても、みたいな。まぁ、もちろん、ぼっちの勝手な妄想ですからね。はい。
「えっ?何?」
「べつにぃ。」
「そう?ならいいけど。」
ジト目が強くなった。何故なんだ。俺にはもうどうしようもないぞ。
「ここぉ?」
「そう。なんかおしゃれそうなカフェ。」
どこに行くかは迷ったんだけど、がっつり食べるとかは望んでないかなぁ。と思って軽食を取れそうで、おしゃれそうなところを探したらここになった。選択としては間違ってないんじゃないかなぁ。そこまで高くないし。
「ふふっ。おしゃれそうなって。おしゃれなでいいじゃん。」
「別にいいでしょ。それくらい。」
「いいけど。ふふっ。」
「姫路さん。……まあいいや。こういう店は一人では中々入りずらいから、誰かと来たいと思ってたんだ。」
姫路さんに笑われた。そんなおもろいこと言ったか?別に変なこと言った覚えはないけど。姫路さんが少し変わっているんだろうなぁ。そう言うことにしておこう。ほら、自分が変だなんてなったら、ショックだろ。
「そうなんだぁ。」
「うん。だから、ありがと。」
「ううん。お詫びだからぁ。それにお詫びじゃなくても言ってくれれば付き合うよぉ。」
「その時はまたよろしく。」
まさか、またデートに誘ったら来てくれるというのか?案外フットワーク軽いんか?んな訳ないよなぁ。姫路さんならだれに誘われても、なんやかんやメンバー集めてどうにかしちゃいそう。
一対一って言うのは聞かないから、今回は特別だったんだろうなぁ。今回の件は本屋が主目的だからな。それ以外はおまけみたいなところあるし。社交辞令だろう。
「それ、誘わない奴ぅ。社交辞令じゃないのになぁ。」
「誘うって。」
「信じてるよぉ。」
「大丈夫、任せて。」
社交辞令だって思ったことばれてた。いやーしかし、姫路さんを誘う機会なんて早々来ないものだと思うけどなぁ。それに来てもらっても困ると言ったら、困るんだよ。今日の朝みたいなのに絶対なるし。視線が痛いんよ。
昼食の時間は特に何かが起こるわけでもなく、平和であった。ついにお別れの時間がやって来たのだった。というか、超疲れたんだけど。姫路さんには悪いけど、もう帰って寝たい。流石にぼっちにはきついものがある。
「今日はありがとぉ。」
「どういたしまして。また、どこかに出かけれたらいいね。」
「うん。また一緒に出掛けよぉ。」
「その時はよろしくね。それじゃあね。」
「またねぇ。」
デートも終わり、真に平和な時間が訪れた。でも、何やろう。家帰ってもやることないんだよなぁ。それに絶対、根掘り葉掘り聞かれるに決まってるから憂鬱だ。今日の残り時間は静かに暮らしたいものだ。
デート、楽しかったなぁ。あまり長い時間でもなかったけど、姫路さんとは色々なことを話せたし、また少しは仲良くなれたんじゃないかなぁ。友達になる日も近いかもしれないなぁ。




