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016

 目的地まで電車での移動となる。この時間帯っていうのは意外と混んでいるものなんだな。まさかの満員電車である。人と人とがおしくらまんじゅうになっていて、熱気が凄いことになっている。

 その中で平気そうにしている姫路さんは、やはりただものじゃない。もちろん、周りの人間の配慮などはあるんだろうが、それでも嫌がる奴は、嫌がるからな。そこらへんも含めて、やっぱり天使なんだよねぁ。


 うおっ、また人が乗ってきた。このままじゃあ、遠くないうちに姫路さんのところまで人が来るなぁ。最低でもはぐれないようにしないと。どうにかこの位置をキープしよう。

 ふぅ。何とか位置はキープできているけど、結構きついなぁ。あれからも人がどんどん入ってくるし、そのたびに歯を食いしばって耐えなければならない。へへん。だが、慣れたものだ。もう大丈夫だ。これ以上状況は悪くならないだろう。




 その時、ちょうど電車が揺れて、バランスを取るために近くの壁に手をついた。そこはちょうど姫路さんの後ろに位置する壁で、見ようによっては、かの有名な壁ドンをしたみたいになってるんだけど。


「ご、ごめん。」

「大丈夫だよぉ。ちょっと、どきりとしちゃったっ。」

「いやー、なんと言いますか。ほんとにごめん。」


 ちょーい。なんか、油断したタイミングでしか、こういうことないよなぁ。姫路さんは優しいから、許してくれるけど他の女子だったら、極刑ものだっただろうなぁ。


「大丈夫だってぇ。」

「ちょっと、ここから立ち上がるのきついから、もう少し我慢してもらえる?」

「うん。」


 なんだか、いつもとは姫路さんの雰囲気が違うような気がするなぁ?なんか、耳が赤いみたいに見えるんだけど。でも、そんなわけないよなぁ。照れて顔を赤くしているなんて、そんなわけねぇ?うつむいていて、顔は見えないけど。ま、勘違いでしょ。




「妙に人、多かったね。」

「そうだねぇ。確かにいつもより多かったかもぉ」

「あっ、やっぱり?いつもあんなのなら、毎日大変だろうなぁって思ってたんだよ。」


 なんなんだろうな今日は。どこかしらでイベントでもあるんだろうか?なんにしても人に多く会うなんて日もたまにはあるんだろう。全部、姫路さんが引き寄せてるんだろうけど。


「ホントだよぉ。毎朝大変なんだよぉ。」

「姫路さんは電車登校なんだ。」

「うん。そうだよぉ。」

「それなら、確かに大変だね。俺は歩きだから、気持ちは分からないけど。今日みたいなのだったら、毎朝やんなっちゃうよ。」


 毎朝電車登校って、やばいなぁ。毎朝満員電車に乗るなんて、俺には絶対に耐えられない。それに定期券買うのにも、バカにならない金額使ってるんだろう?まぁ、俺には関係ないか。歩いて通える距離だし。


「歩きはいいよねぇ。」

「姫路さんは歩いてこれない距離なの?」

「電車で来るよりは時間かかっちゃうかなぁ。でも、歩けない距離ではないかなぁ。」


 へぇ、しかしこの話題は危険かな?なんだか、家をどこの当たりにあるか探りを入れてるみたいじゃないか?俺にはその気はないとしても、どう思うかは分からないからなぁ。ま、普通は家の位置を探ってるかどうかなんて、考えないか。


「へぇ、そうなんだ。今度暇なときにでも、登校するとき歩いてみたら?ほら、川沿いの桜もきれいに咲いてるし、暖かな陽気のなかで景色見ながら歩くのも気持ちいいんじゃない?」

「なんだか、詩的だねぇ。でも確かに、風情があるねぇ。」

「でしょ。よかったら、試してみて。」




「そう言えば、本屋で何探してたの?」

「う~ん。秘密。」

「秘密か~。それなら、仕方ないね。」


 秘密。そう聞かされると逆に暴きたくなるのが人の性。いやぁ、しかし本当に何の本を探してるんだろう?後でもつけてみようか?いや、流石にストーカー行為はやめておくか。姫路さんに嫌われるの嫌だし。


「ごめんねぇ。」

「謝ることじゃないよ。昨日、俺も秘密にしたし。」

「確かに、そうだねぇ。」

「なんだか、こっちがごめんって感じだね。」

「どっちも謝って、終了だねぇ。」


 喧嘩両成敗みたいな?謝り合うだけなら、何も傷つかず平和でいいけどね。




「そろそろ目的地に着くよ。」

「そうなのぉ?」

「うん。あそこに看板が見えるでしょ。あれ。」


 赤と白の看板に、赤木書店と書かれていた。赤木書店というのがこの店の名前だ。ここら辺では書物の種類の数は一番多いところであるのだが、その中の多くが古い本だったりする。

 だが、管理もきっちりしており、本の劣化もないに等しい。新しい本も仕入れてはいるため、幅広いところを網羅している。とはいえ、新しい本の種類は他のところの方が多かったりする。


「あんなところに。知らなかったぁ。」

「まぁ、こんな辺境にあるとは思わないよね。普通は。でも、品ぞろえはばっちりだから、そこは安心して。」

「そうなんだぁ。期待しておくねぇ。」




「いったん解散するとして、何時合流する?」

「今が11時少し前でしょぉ。12時でいいんじゃないかなぁ。それに本が見つかったら連絡するよぉ。」


 12時かぁ。これは確実に昼食を食べる流れですね。まぁ、ちゃんと調べてきたし、大丈夫だと思うけど、不安だ。なんか、今日アクシデントばっかだからなぁ。これから何も起こらなければいいけど。


「分かった。本見つかるといいね。」

「ありがとねぇ。」

「どういたしまして。」


 後は男は黙ってクールに去るだけ。ふっ。って、ふざけるのはいいんだけど。今からどうしよう。別に欲しい本とか無いからなぁ。とりあえず、昼食でもまた調べとくか。




 ん?メールが来た。姫路さんからか。予定より20分程早いなぁ。でも、早くなることは悪いことじゃないからな。とりあえず、本屋の前に行くか。話はそれからだ。


「ああ、またか。」


 姫路さんったら。またナンパされてる。二日連続とはすごいなぁ。いや、待てよ。今日の朝はあの人数にナンパされているっていうのなら、すごい数になるんじゃない?もしかして、一日のナンパ数世界記録狙えるんじゃない?

 って、ふざけてる場合じゃないよなぁ。とりあえず、今日こそは何とかしなくちゃ。男の方も昨日みたいに怖くないし。ちゃんと話せば、分かってくれるだろう。そう願っているよ。


「ねぇ、いいじゃん。連絡先ぐらいさ~。」

「ごめんなさい、嫌です。」

「そこのお兄さん。」


 あら、中々のイケメンじゃないですか。こりゃ、確かにいきってナンパしちゃうのも分かるかも。とはいえ、姫路さんとは釣り合わないと思うよぉ。誰が言ってんだって感じだけどね。顔だけなら、確実に神崎春馬の方がいいし。うん。


「あっ?なんだよ。」

「そこの彼女は俺とデート中なんで勘弁してくれませんか?」

「この子とお前がぁ?ぷっ。あはははは。冗談は顔だけにしとけよ。俺より、イケメンでもないくせにデートとかできるわけないじゃね~か。」


 えっ?酷ない?流石にそこまで言うことないじゃん。言っていいことと悪いことがあるんだぞ。おまえ財布じゃん。程度なら許せるけど。って、どっちもどっちだわ。自分の言葉が一番傷つくわぁ。


「えっと、困るんで、やめてもらえます?」

「なんだよ。同じようなセリフしか話せねぇのか?ねぇ、君もこんなつまらん男なんてほっといて、俺と遊ぼうよ。なぁ。」

「ごめんなさい。私の彼氏の悪口を言う人とは、遊びたくありません。」

「彼氏~?あんた趣味悪いね。もういいよ。」


 おおう。それで引き返すんや。それに、姫路さん。いつ彼女になったんだろう。ああ、もちろんわかってますよ。漫画でよくあるアレだってことは。でも、メンヘラなちょっと電波かもしれないじゃん。

 ん?メンヘラ電波女な姫路さんか。顔がいいから許せるな。何なら、依存されてもいいかも。って、このくだり何回目だろう。3回目?自分でも覚えてないわ。


「え、えぇ。それで帰るんかい。何じゃそりゃ。」

「プライドが傷ついたから、逃げただけだよぉ。」

「あっ、そう言うこと。」


 うん。可愛いな。プライド傷ついて、涙目で帰ってくチャラ男。問題なく推せますねぇ。なんか、おもろい奴だったなぁ。これオラオラ系の、おまえ、面白い奴だな。とは違う意味だからね?チャラ男とはもう会わんだろうし。名前知らんし。


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