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001

 帰りのホームルームも終わり、クラスメイトが下校を始める中、俺は教室で寝たふりをしている。教室の中は今からどこへ行こうかとか、そんな希望溢れる会話で騒然としており、なんとも楽しそうである。そんな中で俺は一人。……。そう俺はぼっちだ。

 友人がなく、誘われるほどの交友関係も何もない学校生活。家に帰ったら、ソシャゲのノルマを完了して、余った時間を漫画を読むことで潰したり、録画したアニメの解消をしたりと、着々とオタクの道を突き進むのみだ。

 どうしてこうなったんだろうか。とか思わないこともないが、まぁ、それも自分の赤ちゃんの小指の先もないほどのコミュ力のせいだろう。いや、流石に赤ちゃんの小指の先よりはあるわ。流石、俺。……。こんなんだから、友達いないんだろうな。




 ま、まぁ、い、一応?俺もクラスメイトと仲良くなるために努力してるし。ほら、こうやって寝たふりをしていれば、誰かが話しかけてきてくれたり?そうして、話してみたら、趣味が合致してめっちゃ仲が良くなったり?ゆくゆくは、クラスの中心メンバーになんて。

 それに幼馴染も一応いるし?ぼっちじゃないし?今は少し疎遠なだけで、別にぼっちじゃないし!えっ?さっきと言っていることと違うって?気のせいさ。


「ねぇ、小牧君。起きて。もう帰る時間だよぉ。」


 そうそうほら、こんな風に誰かに話しかけられて……!?な、なんだ……とっ!!ほ、本当に話しかけられるなんて。やっぱ、こう、俺ってオーラが違うんだな。うん。こうぶわーと。流石、俺。そのうち、異能に目覚めたり?異世界に行ったり?ぐふふ。


「小牧君?あれ、寝てるのかなぁ?」

「小牧、だっけ?放っておけばいいんじゃね?もう、高校生だし、自分でどうにか出来るでしょ。それより、早く行こうぜ。時間なくなっちまうぞ。」

「えっ?駄目だよぉ。一人で置いてくなんて……。それに先生に鍵閉め頼まれてるよぉ。」

「ダメダメ、姫路ちゃんを困らせちゃダメだよ~。」

「あ、ああ。悪い。ほら、俺も小牧起こすの手伝うからさ。おい、小牧。起きろ。」

 

 ていうか、この人らクラスのトップカーストの人たちじゃ?やべぇ、早く起きないと、明日にでも吊るしあげられるかもしれない。だが、待てよ?この人らがトップカーストってことは、俺を起こそうとしているのはあのお方なのか?


 姫路愛理(ひめじあいり)。学園の天使様。学園で知らねものはいないと言われる学園一の美少女。それに性格もいいと来た。人を疑うことを知らず、愛と正義、平等を謳う平和主義者。人を助けることに何のためらいもなく、困っている人がいれば一番に駆け付ける。

 そんな人間の善性を寄せ集めたかのような性質は、どんな悪人であっても改心してしまうほどだ。事実、ひったくり犯が姫路に出会ったことで改心して、ボランティア活動に精を出すような人間に校正してしまったなんて話は有名だ。




 そんなお方がトップカーストの一員ではないわけがなく、当然のようにクラスのトップに君臨している。もう一人そこに肩を並べる存在がいるのだが、この話はまた今度だ。


「小牧起きねぇな。」

「うーん。二人は先に帰って。私は小牧君が起きるのを待つよぉ。」

「いや、姫路さんだけ置いていくわけにはいかない。」

「一人じゃないよぉ?小牧君いるし。」


 いや、取り巻き君Aが言ってるのはそう言うことじゃないと思うよ?姫路さん。天然なのかな?天然なんだね。そこも可愛い。あっ、ちなみに俺も姫路さんファンクラブとか言うのの一員だ。NO,341だ。つまり学園の真ん中さ。だから、何だって言うんだろうね。自分でも分からん。


「そう言うことじゃないんだが……。」

「まぁまぁ。姫路さんもそう言っているんだし。僕たちは退散しよう、ね?」

「だが。」

「ううん。いいの。二人は先に帰って?私は大丈夫だから。」

「……。分かった。またね。姫路さん。」

「姫路ちゃん、バイバーイ。」

「うん。またね。」




 ふぅ。二人は帰ったか。これで残りはボス一人。フフフ。なんだか、楽しくなってきた。このまま寝たふりを続けたら、どうなるかな。ちょっと、困ってる天使様を見て見たかったり。


「ねぇ、小牧君。本当は起きてるんでしょぉ?」


 ビクッ。ど、どうしてばれてるんだ。い、いや、ブラフに決まってる。流石に天使様だからってそんなの分かるわけない。そのはずだ。


「ブラフ。なーんて思ってたりぃ?」


 ビ、ビクッッ。ほ、本当に心が読めてるというのか?ど、どうしよう。起きてたのがばれると、本格的に今後の学校生活がヤバくなるかもしれない。姫路さんにその気はなくても、この話がばれたら周りは黙ってないはずだ。

 少し困らせようなんて考えたのがダメだったのだろうか。こ、ここは土下座で許してもらうしか……。くっ、沈黙が怖いぜっ。……。こんな風にふざけてる場合じゃないな。と、とりあえず謝ろう。よし、行くぞ。


「ご、ごめんなさ……い。」

「なーんて……ねぇ。」

「……。」

「……。」


 ち、沈黙が痛いぜ。くっ。判断をミスったか。だが、俺にはまだ最終兵器が。そう、土下座という最終兵器があるんだっ!!


「本当に寝たふりしてたのぉ?」

「も、もも、ももも、申し訳ありませんでしたー。」

「うわぁ、すっごい土下座。初めて見たぁ。」


 ふっ。中々だろう。いざというときのために、土下座の練習をしていたのさ。ほら、よくあるだろ。学校が襲撃されたり、バスジャックなんて起きたり、銀行強盗に遭ったりとか。そういうときのために土下座を練習したのさ。

 えっ?そんなことは起きないだって?そんなわけないじゃん。アニメや漫画では当たり前なんだぜ。現実見ろって?うるっせぇな。そんなの分かってるよ。やれやれ。




「怒ってないから、土下座はやめてよぉ。」

「すみません。」

「うん。よろしい。」

「ははぁ。有難き幸せ。」

「うむうむ。苦しゅうない。」


 天使様はやはり天使様だったか。こんなくだらないモブ男のノリに付き合ってくれるとは。神様に初めて感謝した日記念日だな今日は。天使様をこの世に遣わせてくれてありがとうございます。と。


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